独楽ログ〜こまログ〜

50代、女性、日本人、がひとりで毎日楽しくすごす方法を検証、実践、そして記録。

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スペイン旅行記 その7〜AVE の切符を買ってみる

スペインの新幹線、AVE は快適らしい

 バルセロナマドリード間はどうやって行くのか。ぐぐってみると、ほとんど人はAVE を使っている。AVE とはスペインの新幹線。アヴェと読む。AVE だと2時間40時間くらい、飛行機だと1時間くらい、しかし空港への往復を考えるとたいして変わらないし、AVE は快適だから、こっちにした、というのがその理由。

 ではおもしろそうだし、AVE にしてみよう、そしてせっかく600kmもあるのだから、途中で降りて観光してみよう、ということで、朝早くバルセロナを出て、ちょうど真ん中のサラゴサで降りて街歩き、そして夕方にマドリード着、という予定を立てた。

 

 まず切符は事前に買うべきか、調べる。YES。2か月前から買えて、早いほど安いという。旅行代理店のHPで検索してみると、値段がみなまちまちだ。なかには1等(PREFERENTE)より2等(TOURISTA)のほうが高かったりしている。どういうこと? 問い合わせると、「AVEの座席は残り少なくなると値段があがります。なので、残席数によって、こういうことも起こりえます」とのこと。そして、当たり前だが途中下車はできないので、バルセロナサラゴササラゴサマドリードの切符をそれぞれ買う必要がある。

 

 座席は3種類。1等PREFERENTE、1等半?TOURISTA PLUS(ない列車もある) 2等TOURISTA。昔は1等の上にCLUBという特等(?)があったらしいが、廃止になったそう。1等は1列3席、そしてなんと食事がつく。新聞やイヤホン(車内にモニターがある)も配られる。1等半だと、席は1等と同じで、食事等のサービスはない。2等は1列4席。

 しかしこれが結構複雑で、ここからがいろいろ面倒になる…。同じ1等でも、食事が出る列車と出ない列車があるのだ。そしてそれはRENFE(スペイン国鉄)のオフィシャルサイトではわからない。列車によって値段がかなり違う(48ユーロ〜74ユーロ)のは、どうも残席数だけのせいではないよう。

しかも、格安チケットとフレキシーがあり、格安はキャンセル、変更、座席指定不可。フレキシーはすべて可。

 RENFEのホームページは英語を選択しても、途中からスペイン語のページオンリーになってしまったりして、かなりあせる。TODOS…全部、ね、などと辞書をひきつつ調べるが、またもだんだん疲れてくる。

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 ↑RENFEのオフィシャルサイト。

 

 途中でRAILEUROPE(レイルヨーロッパ)というヨーロッパ鉄道のチケットサイトのほうに行ってみる。日本語版があるので、調べるのも買うのも楽そうだから。確かにページも俄然見やすく、各列車の車内写真までついている! そう、同じ1等でも、列車によって機材(?)が違うので、車内も変わるのだ。古いほうだと華奢なグリーンの椅子で、新しいと黒の革張り(たぶん)、暖色照明と、見るからに居心地よさそうな内装。で、食事の有り無しもすぐわかる。

 

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↑RAIL EUROのサイト。とてもわかりやすい。各列車の車内写真と設備も書いてあって親切。動画では食事の様子まで見ることができる。クロスをしいて、陶器の食器がサーブされ…。これだけ見てるとおいしそうなんだよね…。

 

安いチケットは簡単には買えないのであった

 食事ねえ………とまた悩む。バルセロナを出発するのは7時前。朝が遅く、朝食文化もあまりないあの国ではきっと腹をすかして電車に乗るのであろう。では、食事が出てちょうどいいのかもしれない。しかし、電車で出て来る食事がうまいのか? 値段は結構する。20~30ユーロ違うのだ。サラゴサまで我慢して、おいしい店で食べるべきでは? でも新幹線でどんな食べ物が出て来るのか、たとえまずくても知りたくないか?…等々。そこで、個人ブログをあちこち訪ね歩いて、AVEで食事をした人を探す。何人か出てきたが、このなかで「おいしい」と言っている人は誰もいなかったので、断腸の思いで食事を切ることにした。でも座席はよいほうがいいし、「1等と2等であまり値段は変わらないからぜひ1等を」と言う人が断然多いので、1等にしてみる。サラゴサマドリード間は、最新機材の1等半があったので、こちらにしてみる。

 いざ購入、と思ったら手数料が1,500円とのこと。…そりゃそうか。ここで買えばずいぶん楽だもんなあ。しかしなあ…手間を惜しまなければ安くあげられるのだ…あれ? そもそもチケット代だって違うのでは?と思って、再びRENFEのサイトへ戻って、同じ列車の値段をじっくり比較する。すると、5~10ユーロ高かった。

    たとえ5ユーロでも、ふたり分買えば10ユーロ。10ユーロなら20ユーロ。さらに手数料1500円。……これはないな。これはないでしょう。ということで、RENFEに戻る。またも辞書と格闘し、親切なRENFE購入ガイドサイトもいくつか読みつつ、購入をがんばる。がんばるが、なかなか買えない。というのも、「日本のクレジットカードの多くははねられる」らしいのだ。誰もが言っていたので、事前に知っていた情報なのだが、私のカードは大丈夫では?と意味不明の確信を持って突き進んだ。だがだめだった。「3枚目のカードでようやく完了」という人もいたので、何枚か試すが、だめ。「VISA認証を受けたカードならよいらしい」という人もいたので、今度はVISA認証を受けて、トライし、そしてだめ。

 ああ~、誰か助けて。と半泣きでサイトを睨んでいたら、支払いオプションがクレジットカードのほか、ペイパルとなっている。そうか、ペイパルだっていいのだ…。今度はペイパルの会員登録をして(もう、こういうの、本当にめんどい)、どうにかこうにか支払い完了。ものすごい達成感でした。

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どうにかこうにか買えたチケット。バルセロナサラゴサ1等食事なし、34.15 ユーロ。

サラゴサマドリード1等半、45.85ユーロ。 

あーあ、疲れたよ。

 

 

 

スペイン旅行記 その6 仕込み篇2 旅のルート作成

行きたいところとQ&Aを書き出してみる 

バルセロナはそれほど広くない空間のなかに見どころがつまっているので、2日もあれば観光には十分です」という、旅行計画初期段階で見かけた某ブログの発言を鵜呑みにし、実質2日間にしたのだけれど、調べて見たら、行きたいところが予想以上にあり、なぜもう1泊増やさなかったのか…と後悔した。「予定をぎちぎちに詰め込むと、心身ともにぼろぼろになる」というこれまでの旅行の教訓が、またも生かせなかった。

 とはいえ、ブッキングしてしまったのだから、この2日でなんとか対応しなくては。

 

 まず、行きたいところをリストアップ。

 

サグラダ・ファミリア

カサ・ミラ(ガウディ設計の賃貸マンション)

カサ・バトリョ(ガウディ設計のバトリョさんのお屋敷)

グエル邸(ガウディ設計のグエルさんのお屋敷)

グエル公園(ガウディ設計の公園)

ピカソ美術館

ジョアン・ミロ美術館

casa gispert(ナッツ屋さん)

市場

 

以上が必須で、できれば

カタルーニャ美術館

カタルーニャ音楽堂

サンパウ病院

 なども観れたらみたい。どう考えても多すぎる。最短ルートを今から考えておかなければ。

カサ・バトリョ。真ん中の建物。両脇の建物と美しさ、派手さ、ゴージャスさなどを競っているのです。なんだかしっちゃかめっちゃかだけど、でも美しい…というのがすごい。

 

まずは、一番大事なサグラダ・ファミリアから考えよう、ということで、ここを起点に調べる。

 

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サグラダ・ファミリアのなか。すさまじいアナザーワールド感。誰かに“ある確かな世界の存在”を信じさせるのに十分な天井だ…。

 

おもな質疑応答。

サグラダ・ファミリアの一番すいてる時間は?→朝イチ、9時。

 

●チケット予約はしたほうがいいのか?→いい。3ユーロ安くなるし、人数制限があるので、満杯になったら入れない。

 

オフィシャルサイトで予約するべき?→するべき。他は手数料をとられる可能性あり。

 

●チケットはどの種類を購入すべき?→TOP VIEW 入場券+塔へのエレベーター乗車券(?)+オーディオガイドつき、29ユーロ(高!)。

サグラダ・ファミリアに来て塔に昇らないはもったいなさすぎる、という理由。オーディオガイドは必ずつく。入場料はしょっちゅう値上がりしている。前は受難の塔から降りるときはエレベーター、生誕の塔から降りるときは螺旋階段、と決まっていたが、いまはどちらも螺旋階段…など、変更もたびたび。

 

●塔は2種類のうち、どっちを昇るべき?→もちろん好みだが、生誕の塔が人気。「バルセロナウォーカー」で詳細に徹底比較している。

 

 

 とまあ、サグラダ・ファミリアだけで事前情報がこれだけ。知らなければいけないことの多さに疲れながら、情報の海に溺れていく自分をしみじみ感じつつ、その時点で最良と思われたやり方で予約&計画していく。

同様に、

 

カサ・ミラカサ・バトリョサグラダ・ファミリアから近いのか?→街歩きを兼ねる程度には近い。30分程度。モデルニスモ建築の多いグラシア通りを歩きつつ、サグラダ・ファミリアカサ・バトリョカサ・ミラの順に行く。

 

●ガウディ関連の施設の入場料はどこも20ユーロ以上して、とても高い。

 

●近くでおいしいランチを食べれるか?→「バルセロナウォーカー」で絶賛している「Embat」や、星つきレストランのランチが45ユーロで食べれるという「Roca Moo」がある。

 

●行きたいところのラインナップのうち、場所が近いのは? 離れているのは?→

わりとかたまってるところ…サグラダ・ファミリアカサ・ミラカサ・バトリョピカソ美術館、casa zispert。

 

中途半端なところ…グエル邸。

 

遠いところ…グエル公園ジョアン・ミロ美術館とカタルーニャ美術館(このふたつは近い)。

 

グエル公園は、最近有料(8ユーロ)になったが、朝8時半までに入場すれば無料。8時半すぎたからといって追い出されない。だが、この時期のバルセロナの日の出は8時15分…。

 

…などの情報も得て、頭のなかではもう大雑把なバルセロナ地図ができていた。

⇧こんな感じ…だいたい…。

で、ルートも作ってみた 

1日め

 

7時45分、グエル公園→タクシーで9時にサグラダ・ファミリアカサ・ミラ→ランチ(時間によっては、カサ・バトリョの後にまわす)→カサ・バトリョ→夕方、ゴシック地区、ボルン地区散策&casa gispertとピカソ美術館

 

2日め

ジョアン・ミロ美術館→カタルーニャ美術館→(行けたら)カタルーニャ音楽堂 どこか、合間に市場、グエル邸。1日めに行くはずが行けなかった場所。

 

 ということになった。問題はグエル公園に8時前に行って、真っ暗ではないのか? 危ないし、なにも見えないのでは? そして9時に予約したサグラダファミリアに、10~15分程度でタクシーでつけるのか?(通常はつけるが、この時間はちょうどラッシュ)ということ。9時のチケットを買ってしまったので、時間がずらせないのだ。でも早く行き過ぎても真っ暗だろう。追い立てられるように公園をばたばたするのは嫌…。

 しかし、かといって、ただでさえ街外れにあるグエル公園は、翌日行くモンジュイックの丘にあるジョアン・ミロ美術館やカタルーニャ美術館とはものすごく離れていて、2日めに組み込むのもなんだか効率悪いし…。グエル公園どうする問題については、結局旅の当日まで悩み続ける。

 

そしてこの後、VELTRAでカサ・ミラカサ・バトリョは、オフィシャルサイトとほぼ同じ金額でチケットが予約でき、しかもファストレーンを使用できるから並ぶ必要もない、と知り、なぜ手数料がかからないのか…?といぶかりつつ、予約。

 

が、その後、「バルセロナカード」なるものを買えば、カサ・ミラは2割引とカサ・バトリョは3ユーロ引きになることも発覚。ファストレーンは使えないが、「バルセロナウォーカー」の「冬のオフシーズンならたいして並ばず、予約不要」との1行を信じて、VELTRAの予約をキャンセルする。そもそもこの予約が、日時指定方式なので、ここで確定してしまうと行動がかなり制限されるのだ。

バルセロナカード。2日間券と3〜4日間券は違う!

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↑右上のオレンジがバルセロナエクスプレスカードの電車&バス乗り放題パス。左の小冊子が、各施設割引ブック。両方持ち歩くことが肝心です。カサ・ミラでオレンジのカードを提示したら、これじゃあかん、と言われてしまい、あせりました。

 

バルセロナカード」とは、地下鉄、バス、フニクラ等が乗り放題+様々な施設の入場券が割引もしくは無料になるというもの。2日券は「バルセロナカードエクスプレス」と名前が変わり(これが曲者だった………)、正式版(?)は3日間券(45ユーロ)、4日間券(55ユーロ)、5日間券(60ユーロ)がある。

 これを買うことに決めた一番の決定打は、ジョアン・ミロ美術館とカタルーニャ美術館が無料になること。どちらもたしか10ユーロ以上したはずで、これに地下鉄バスが乗り放題で、カサ・ミラ&バトリョが割引なら、断然お得、と思ったのだ。……が、これが曲者だった………。

 私達は実質滞在2日なので、バルセロナカードではなく、バルセロナカードエクスプレスになる。これは20ユーロで、しかもオフィシャルサイトで事前購入すれば18ユーロになる(他の券も割引になる)。3日間券に比べたらかなり割安だ。だからそのぶん、サービスも割り引かれるのだが、私は3日間券〜のサービス項目を熟読していたのだった。しかしその過ちが発覚するのはバルセロナ当地にて。まあ、たいした過ちではなく、結局バスと地下鉄にかなり乗ったので、いちおう過ちではないことにしているのだが。

 何を誤ったのかというと、エクスプレスカードでは、ジョアン・ミロ美術館とカタルーニャ美術館は無料ではなく、20%引きなのでした…。ミロ美術館の入り口で、最初は「どうぞ」と通されたのに、次の入り口で「待って。これは駄目よ」と追い返されてあーだこーだモメて、お金を支払わされる…。この2つが無料というから買ったのに!

 とくに、カタルーニャ美術館は、「あまりにも広大だし、宗教がばかりでわりと退屈」だが「建物がとにかくすごい。建物だけでも一見の価値あり」ということで、じっくり見なくてもいいが、でもちょっと見てみたい、という感じだったので、無料ならぜひ!と張り切っていたのになあ。

 ガウディ関係の施設がどこも高いので、財布のひも、締め気味モードだったのです…。まあしょうがない。とにかく、2日間券は、他の券とは違う、ということは覚えていないといけないことです。しかし、3日〜間券はかなり高い。各施設の割引率と行きたい度をじっくりと検討して、「どう考えてもお得」と判断できなければ、やめたほうがよいです。というか、お得になるためにはかなり色々回る必要がある。

 ちなみに、サグラダ・ファミリアは1ユーロ(!)引きで、事前購入なら3ユーロ引きなので、なんと割高に。グエル公園は割引なし………。

 とはいえ、バス、地下鉄にいつでもふらりと乗り放題、というのは、街歩きをするにおいてかなりありがたいのもまた事実。ここはかなり悩むところでしょう。

 

  そんなこんなで、毎日毎日、調べては悩み、調べては予約し、さらに調べてはキャンセルし…の繰り返し。

 おかげで、各地区の特色、それらの位置関係、各施設の特徴、外観、内観、街の風景、もちろんバル&レストラン…などなど、熟知といっていいほど知り尽くしてしまった。なんというか、私はあまりにも知りすぎてしまった。これでは、街に初めて降りたときの「うわあ、こんな場所なのかあ」という感慨はまず訪れないであろう。なんかもう行かなくてもいい感じ…という気持ちすら、ときおりよぎってくる。タフな人の、気ままな旅行とはどんどんかけ離れていく。もともと目指していないけど…。

 

 だが最終的には、調べ尽くしてよかったなと思っている。運も手伝って、食べたものはどれも驚くほど大当たりだったし(行き当たりばっかりの店も多かったが)、観たいものほぼ全部、ちゃんと観ることができ、「大きな後悔」をほとんど味わずにすんだからだ。なによりスペインの歴史もがっつり学んだので、「これがあの…」と、なにを観てもなにかしら思うところがあり、とてもおもしろかった。

 フレッシュな衝撃と人間的な成長は見込めないけれど、まあ、今回はこっちの「準備万端」をとったわけです。準備万端のもうひとつのいいことは、準備してる段階からもうほぼ旅行してるようなものなので、旅行期間が8日から2か月へと、一気に伸びること。ながーく楽しめるのです。

スペイン旅行記〜その5 仕込み篇1 旅の激しい予習、そして激しすぎるバルセロナサイト

旅行の準備。予習をする人としない人

 

 エアと宿泊先がようやく確定したので、あとは仕込みをしながら出発日を待つだけになりました。約2か月後。この間にどれだけスペインに関して予習ができるか、が勝負です。

 

 旅行の予習は、はたしてどこまでするべきなのか。これが今日の議題です。

 

 私のタフな友人(数少ない友人…)は、最低限の資金で、どこへでも出かけてしまいます。アイルランドでひとりヒッチハイクし、中国新幹線がクラッシュした大事故のちょうどそのさなかにも、その新幹線に乗って上海~北京旅行をしていたし、その数ヶ月後にはチベット、モンゴルに現れていた。ライブイベントのためにロンドン~オランダなんてツアーもやってたし、ニューヨークに行ったときはあの宿代の高い町で、3千円のドミトリーに泊まっていたっけ…。

 要するにタフで、状況や他人にほとんど文句をつけない(いや、口は悪いので文句はつけるけど、それに左右されない)人。憧れるけど、ちょっとすごすぎて憧れようもない、という感じ。

 

 私がパリ旅行をしたとき。インストールしていたフランス語無料辞書がまったく使えずメニューがさっぱりわからず、wifiもなく、下調べもいまいち浅かったので、料理に結構後悔がありました。「あれ、豚のことだったのか…あっちにすればよかった」的な。

市場の、いかにもおいしそうなパエリアも、食べてみたらいまいちだった。あとで調べたら、その市場は、パリにいくつもある市場のなかでも、もっとも特徴のない、あまりいけてない市場だった。

「次はちゃんとした辞書をインストールして、もっとフランス語を勉強して行かないと。メニューも面倒がらずいちいち調べよう。適当に店のおすすめをオーダーするのではなく」と後悔を語る私に、その友人は言いました。

「えー? あたしなんて英語の通じない外国のレストランなんて、目つぶってメニューを指さして、“これで”だよ。当たったらよかったな、はずしたら“ま、こんなもんか”って感じ」

 私は、そうかあ、と深く感心しました。こういう感覚で旅行すると、ストレスのない旅になるのだわ、と。

「もう二度と来ないかもしれないから、絶対おいしいもの食べたい」とか「せっかく街歩きしても、言葉がわからないからなにも(例えば素敵なポスターとかも、なにを告知してるのかわからない)わからなくて、なんかいろいろ取りこぼしている気がする」「フランス人はフランス語のできない観光客に全く優しくないので、いちいち店などで悲しい思いをする」…といったことは、彼女のようなメンタリティだと経験しないのでしょう。

「行った先で最大限のものを得たい」という強欲さと、「どれ、知らない町を歩いてみるか」という無欲さの違いなのだろうなあとも思う。「旅行ってひどいめに遭うのも楽しい」というキョンキョンと同じ感覚。こういう感覚…言葉がわからなくて、周囲がわからなくて当たり前、まずいものに当たるのも当たり前、だって初めて来た場所なんだから…で旅すると、「なにか起きても、起きなくてもどちらもいとおかし」と、すべてがおもしろく感じるのだろう。期待が裏切られてがっかり、ということもあまりないのだろう。

 

 それで、「予習はどこまでするべきか」という問題が出て来るわけです。店や場所など、調べれば調べるほど、いろいろなことがスムーズに行く。「なーんだ、あの美術館とこのレストランってすぐ近くだったんだ。ここに来てれば時間がずいぶん節約できたのに…」とか「そうだ、途中下車して観光するなら、スーツケース預ける場所いるよね? この駅、特大コインロッカーあるの? それはどこ? ていうか荷物って、スペイン語でなんて言うの?」とか「このツアー会社でカサミラの入場券買うと、手数料なし&ファストレーン使用可、だったんだ…えー、なぜ? あっちのツアー会社だと手数料いるよね?」とか「うわ、マテ貝って、この店では絶対頼んじゃいけないメニューだったんだ。どうりで砂だらけだったはずだ」…等々の後悔に遭う確率が低くなります。

でも、そこまでぎちぎちに管理、準備された旅行って、疲れない?と……せめぎあいが出てくるのですが。

 ↑街のいたるところにガウディの作ったベンチ&街灯が。ベンチと街灯って、こんなに美しくなれるのだなあ、としみじみ。(…と、どこかで読んで書いたのですが、どうも違うらしいです。これはペラ・ファルケスという建築家の作、だそうです。失礼しました!)

 

でも私は、徹底的に予習した

  ガイドブックとインターネットには、一個人では扱いきれないほど情報が載っています。そしてそれは玉石混交で、そのネタがどれだけ信頼できるのか、も判断しなければいけない。「バルセロナでのランチは何を食べよう」というテーマで探すのにも、本当に膨大な量の記事を熟読しなければいけないのだ。

 私は今回は時間もあったので、かなり念入りに下調べした。友人のように鷹揚に構えなければ楽しく旅できない、とわかってはいたけど、「失敗(とくにレストランで)したくない」という気持ちに抗えなかった。

 例によってtrip adviserと4travelと個人のブログと、さらにバルセロナに関しては、日本人旅行者のための在バルセロナ邦人による、強力なサイト「バルセロナウォーカー」があったので、読んで読んで読み込んだ。このサイトの管理人・カミムラさんの文章(レストランと他のページが別々の人なのか、それとも別人を装っているけど実は同一人物なのかは不明)は、芯があっておためごかしを言わず、なおかつ食い道楽&サービス精神旺盛。それが力強く明確な文章で表現されていて、「この人はすごい」と全幅の信頼をおかずにおれないような稀有な人だったのだ。

「これだけはおさえたいパエリア10か条」

「スタッフ厳選土産」

「これで安心!日曜日のレストラン」

バルセロナ地元ビール特集」

「日本人がよく失敗する店」

バルセロナを楽しみきる! 最終日の過ごし方」

……等々、微に入り細に渡る記事が、これでもかと詰め込まれています。読み始めると、ほんとに止まらない。なにせ、レストラン記事だけでも761軒! レストランだけでなく、空港から市内への交通手段からスリの典型的な仕事パターン、主な観光施設のスムースなチケットの取り方&見学案内……等々。バルセロナのほとんどすべてを網羅している。午後の時間ほとんど、このサイトを読んで終わってしまった、などという日も多かった。

 

 さらに、いつかのスペイン旅行のために、ととっておいた雑誌「TRANSIT 22号 美しきスペイン」と「Pen 2008年10/15 号 ピカソをめぐる旅へ」、「CASA BRUTUS 2014年8月号 井上雄彦とガウディ巡礼」も夜のお茶時間に読み進める。さらに並行して、大学時代に買って内容は忘れたのだが、「めっちゃくちゃおもしろかった」という感想だけ覚えていた、清水幾太郎の「昨日への旅~ラテンアメリカからスペインへ~」という本も引っ張り出してみた。分厚い文庫の前半は中南米旅行記なのだけど、どうもそれが後半のスペイン旅行につながっているらしく、妙におもしろそうだったため。(これらの資料の話は別ページで紹介)。もちろん、中野京子さんの著書は再読しなければ。

 

 …というわけで、そんなことをしていたら、行く前からもうバルセロナが旧知の街になってしまった。(マドリードについてはそれほど調べていない。とにかくプラド美術館に行ければよかったし、やはりあの強力サイト「バルセロナウォーカー」の存在が大きいのだろう)。実質2日間で、観たいものを全部、疲れずにスムーズに観たいと思うあまり、地図や旅行者の感想も熟読し、詳細な予定表も作ったからだ。

その内容は次回。

スペイン旅行記その4〜宿は決めたけれど、そして、エクスペディアは大企業

やはりしていた、痛恨のミス

嫌な予感はあたりました。私はやはり予約時にミスを犯していました。

バルセロナは3泊のはずなのに、全旅行日程ぶん、予約していた…。つまり6泊分。言い訳をすると、私は何度も確認したのだ。3泊だけ、と。でもページを更新したのだろう、たぶん。航空券と同じ日程をブッキングされてしまった。数時間後にその過ちが発覚、予約完了画面には、太字で「キャンセル不可」。あああー私は何をーと嘆いたあとがわりと大変だった。

 過ちに気づいたのは土曜の朝。すぐさまエクスペディアに電話。なんとここの問い合わせ電話は24時間応答可なのだ。すごいな、エクスペディア。

ちなみに通常のサイトページだと問い合わせはメールオンリーで電話番号などは書いてありませんが、航空券を買ったりホテルを予約すると、チケットに問い合わせ先が書いてあります。

 でもこれが、なんというか変な電話です。すごく変わったつなぎ方で、「これ、普通の電話じゃないなあ」という信号音やガイダンスがが鳴り、いろいろボタンを押したあと、ようやく片言の日本語の人が出る。たぶん、外国につながってるのだろう。日本語ネイティブじゃないという以上に、受け答えが全く社会人ぽくなく、なんだか姪っ子の家に電話したような気にさせる女の子が応対。さらに不安になりながら事情を説明し、日程を減らしたいと伝える。「えーと……ではホテルに電話してみます」と言って、かなーり長いあいだ、待たされる。ようやく戻ってくると、「今日は週末でホテルの、決定権がある人が出勤しないから月曜にまた電話をかけてくれ、とのことです」。えーん。そして「また電話してください」。

 失望しつつ電話を切る。なんて頼りにならない子なのだろう。自分の過ちへの怒りも一緒に、オペレーターに向かう。ああ、この宙ぶらりんの状態で数日待つのかあ。格安だから融通はきかないのだろうか。せっかく安い宿を見つけたのに、倍払わなければいけないのだろうか。

 じりじりとしながら、エクスペディア ホテル キャンセルなどでググり、本当にキャンセル不可なのか調べてみる。見つけた情報は、「たとえキャンセル不可でも、予約して1日以内ならキャンセルできる」という情報と、「以前のエクスペディアは仲介的なことは一切せず、予約変更などの連絡は各自でしてください、というシステムだった。今は変わったらしい」というもの。

 1日以内………。月曜になったら3日め。ここで私は、あの頼りない女の名前すら聞かなかったことに気づき、また後悔の嵐。通話は録音されている、とか言ってたから、「土曜の朝6時に電話した者です」と日交渉するしかないのだろうか。ああ、自分のばかばかばか。なんて無駄な仕事をしているのだ。

 

ようやく週があけてまた電話

 月曜、さっそく電話。早朝だからあんなに仕事のできなさそうな女が電話に出るのだ、と、なんとなく解釈して、10時頃かける。そしたら、また私は誤っていたらしい。コンピュータガインダンスの声で、「コノデンワヲ オツナギデキルノハ

キュウジュップンゴ デス」(大意)と応答。そうかー! 世界中からとんでもない数の人間がエクスペディアに問い合わせているのだー。ああ、朝5時にかけとくんだった。また後悔。そして、自分の携帯番号を入力させられ、自分の名前を発音し、それも録音される。なんだろう、すごいシステムだな、と思いつつ。電話を切る。なんでも90分後に向こうからかかってくるのだそうだ。ありがたいんだけど、ややこしい…と思いつつ、イライラしながら待つ。

 

 で、ほぼ時間通りにかかってくる。電話の向こうは生身の人間ではなく、またもコンピュータボイス。「アナタハ ●●●●(←録音した私の声による、自分の名前)デスカ?」と確認があり、「正しければ●番を、別の方なら●番を押してください」「今、お話できますか? できるなら○番を、あとでかけなおしてほしい場合は○番を押してください」とか、様々な難しい作業をあれこれさせられ、言われるままでに押していたあげく、電話は勝手に切れた……………。あー、まじで!?

 そして、留守電が入っている。エクスペディアからだが、伝言はない。それを聞いていると、電話着信のSMS。もちろん、エクスペディアから。これもキャッチしそこねる。あー。なんてこと。このときお昼くらいの時間で、再度エクスペディアに電話をかけると、今度は待ち時間3時間になっている…………。そしてようやくかかってきた電話に応対していると、必ず切れてしまう。地獄のような堂々巡り。なんとこれを、合計3回やったのだ。

 

 エクスペディアの電話受付システムは、たぶんすごく新しいのだろうけど、事態を余計ややこしくしているような気がする。その日の夕方近く、ようやく生身のオペレーターにつながると、今度はおそらく中国人だが、めっちゃよく教育された、そして日本語堪能な男の子だった。土曜の朝とはまったく違う応対をされ、気持ちよくホテルにも電話してくれる。が、やはりまだホテルの責任者は出勤していない…………が、「あとで私が電話して、ご連絡差し上げます」

 うわ、すごい。ありがたい! お願いしますー、と言ってようやく電話を切った。それから待つこと2日。かなりいらいらしながら、待つこと2日。翌々日の水曜、「キャンセルできました!」との電話をもらって、「変更した詳細をメールでお送りしました」。

 これにて第一のトラブル、一件落着。ほんと、手に汗握る数日でした…。

つまり、ここで得た教訓は、「キャンセル不可の格安ホテルでも、ある程度の融通はきかせてくれる」というものでありました。そして「エクスペディアは巨大すぎてなんだか怖い会社」。

 さらにこの数日後、ダメ押しメールも来る。「お問い合わせはいかがでしたか」というもの。

「あなたは何月何日の何時頃、問い合わせ電話をしましたね? その対応はいかがでしたか? なにかあったら教えてください」という内容。

 …うーん、なんかすごい。ネットでのサービス業はカスタマーの気持ちを知るためにここまでしないといけないんだなあ。トリップアドバイザーのきめ細かさも同じものを感じるけど、とにかく大企業のやる気を見せつけられました。

 もちろん、今も、ほぼ毎日のようにDMは来ます。

スペイン旅行記その3 〜今度こそ宿を決めよう、そして泥水を浴びることについて

Airbnbでの基本フィルター

 

 贅沢は求めないのですが、どんな家でもいいわけではもちろんなく、いつもAirbnbで部屋を探すときはフィルターをかけます。私の第一条件は、まず、スーパーホストであること。

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Airbnbの宿泊先検索画面。場所と日時を指定すると、この画面が現れます。いろいろな条件を指定することができますが、なにはともあれスーパーホストにチェック。安心安全なんてくそくらえ、おもしろい人に出会いたい、という人はもちろんチェックをはずします。

 

 

 スーパーホストがいいのは、とにかく客を迎え入れ慣れていてほしい、という意味からです。世界中のあらゆるところから、常識の違う見知らぬ人を自宅に笑顔で招きいれることに慣れている人。つまり、懐の広い人をぜひ、という、なんか勝手なリクエストです。同じ意味で、レビューの数は最低20くらいは欲しい。これくらい経験していれば、そうそうささいなことで驚いたり怒ったりはしないよね、と…。

 

 そして、さらに勝手な希望は、レビューの星評価がパーフェクトな人。連絡の確実さ、清潔さ、ロケーション等、4~5くらいの項目に分かれていて、それぞれ5段階評価なのだけど、この星もすべてパーフェクトな人を求めます。とくに清潔さとか、日本人の清潔さとその他外国人の清潔さって、レベルが違うなあ…とよく外国で思うので、どれだけレビューに「very clean」と書いてあっても、鵜呑みにしちゃいかん。ほぼすべてのレビュアーが、「absolutely clean !!」とうなっている家主さんを探し、とくに清潔さの項目で少しでも星が欠けている家は、残念ながら除外します。やはり宿は豪華でなくても清潔ではあってほしい………。

 

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↑このお宅はすごいレビュー数ですね。そしてすべて5つ星。145組のお客さんみんながパーフェクトと評価しているというのはちょっと驚異的。

 

キョンキョンは言う 

…と一生懸命書きながら、こういうところがだめなのね、と思ったりしたりして。昔、キョンキョン小泉今日子)がアフリカ旅行したときの話。「テントのホテルで、シャワーが泥水で、もう笑っちゃってがんがん浴びて真っ黒になった」(大意)とか言っていて、キョンキョンはいつも常人離れした発言をするけど、このときも深く深く感心したのを覚えてる。もう20年くらい前だけど。「こういう心持ちで生きてると、楽しいだろうなあ。かっこいいなあ」。

 

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⇧中学生のとき買って、死ぬほど見返し、読み倒した革命的写真集『小泉記念館』。人間魚拓だの、力士に抱っこされてるだのの写真も強烈にかわいかったけど、インタビューが正直で冴えてて、本当にかっこよかった。右は、その数年後に買った『人生らしいね』。なんとオリーブの本、だった、今見たら。その文字も経年劣化で消えかけてるけど…。うう、歴史…。

 

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⇧当時二十代はじめだと思うが(いや19とかか?)、その言葉ひとつひとつが、すごくフツーで深かった『人生らしいね』。当時の私は、「なんかかっこいいことを言っている」と思うだけで、共感はできなかった。よくわかんなくて。でも今読んだら、見事にすんなり入ってきた。キョンキョン、すごいね。達観しているというか別次元というか。この本でも、旅行に出て、がんがんトラブルに遭いたいとつぶやいています。

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⇧ふふふ。ついでに自慢。キョンキョンは、20年以上やっていたライター人生で、自分でブツを持参してサインをお願いした、唯一の人です。サインって、なに?と今まで意義を感じたことなかったけど、今こうしてみると、恥をしのんでお願いしてよかったなあ、としみじみ。

 

また激しく脱線してしまった。

 

 吟味に吟味を重ねた結果…

 …とはいえ、泥水を浴びるわけにもいかんでしょう。

 再び、我に返って宿探し続行。レビューもじっくり読み込みます。とはいえ、英語と日本語しか読めないけど…。ああらゆる口コミ情報の基本は、レビューをじっくり読むこと。だと私は思う。

  同じ星5つでも、レビューを読み込まなければ、その商品が本当によいのかはわからない。気の抜けたビールのような薄いお世辞を書いて5つ星つけている人もいれば、どれだけその商品を使い倒しているか、熱く語って星5つつけている人もいる。競合品をいくつも試した末にこのレビューを書いているのか、はたまた初めて買ったものなのか。さらに、レビュアーの目的が自分とかけ離れていたら、星5つでも私には無意味だし。なので何本も熟読しなければいけない。何本も読むと、その商品の全体像も見えてくる。英語だとニュアンスがいまひとつ伝わらなくて、“アツさ”を判断するのも難しいのだが。

  滞在者がほぼ100%満足していることのほかには、プライベートバス、できればバスタブつき、キッチン使用可能、洗濯機あり、などが条件としてあげられる。使用言語はもちろん英語。それでも、部屋の説明をスペイン語で書いている方などは、たとえ「使用言語 スペイン語 英語」とあっても、「これが読めない人は来ないでね」という意味なのだと判断して、パス。

  キッチン使用可と言うのは、別に料理がしたいわけではなく、夜中にお茶飲みたい、と思ったらお湯わかしにいきたいな、という意味です。で、出先で買った冷蔵もの…チーズとかヨーグルトとか惣菜とか…を冷蔵庫に気軽に入れたいなとか。あと、バターやチーズをお土産に買う可能性が高いので持参した保冷剤を冷凍庫で凍らさせてほしい。

 さらに言うと、キッチン&冷蔵庫まで旅人に開放するような人は、まごうかたなきオープンマインドの持ち主だろう、という期待も含まれています。「この部屋使ってね。でもこことこことことは立入禁止ね。あ、ここもね」と言われてしまうと、なかなかくつろげないですよね…。もちろん宿主さんの部屋を見せてくれ、とは言いませんが…。わがまますぎ?

 

 そしてさらに重要なのは、水回り。バス・トイレが専用であると、たとえ見知らぬ人の家でも、気楽さ居心地のよさは格段にあがると思う。そしてこれが難しいのだが…できればバスタブが……欲しい…。10km20km平気で歩く旅行中の私(なぜ?)。必ずやぼろぼろになる。そして季節は冬。シャワーオンリーは寒い! お湯ためて浸かりたい! しかし欧米の家でバスタブついている家って……すごく少ないのですよね。いざとなったら妥協しよう、前回同様、アウトドア保冷バッグに何重かにしたビニール袋をいれ、そこにお湯をそそいで足湯をすればいい(←すっごく効果的でよかったです。シャワー後で足は清潔だし、ビニール3枚くらい重ねてるから汚くない、と思っているのですが…)と思いつつ、ひたすらに浴槽のある部屋を探し続けること数時間×数日。数日やってると、本当にうんざりしてくる。ここを問わなければもっと全然早く見つけられるのだが…。

 

 最後に、わくわくする部屋、というのもはずせない。豪華さや贅沢さは求めないけれど、「なんか居心地よさそう」という感覚は欲しい。自分の直感が信用できないと前回書いたけれども、私はこと部屋および住居に関してだけは、わりと勘が働く。家を借りるときも買うときも、部屋を借りるときも、決めるべき部屋が現れると「ここだ!」とひらめき、そしていままで、だいたいそれは実際、良い部屋だった。なので、ここだけは迷いはない。

 

 以上の条件をもとに、バルセロナで1部屋、マドリッドで1部屋、「これは」という部屋を見つけた。ほんとにこんな素敵な部屋と条件で、1泊1万円以下なのかな? と半信半疑で、メールでコンタクト。そしたら。

 

 断られてしまった!! 

  注文つけすぎ? いや、それは伝わってないはず…。でも、どちらも1月中旬のスケジュールは空いていた。だが、バルセロナの男性は「その時期、ロンドンに行ってしまうんだ。ごめんね」と書いてきて、マドリッドの女性は「そんなに先のことはわからない」と……。そうね、そうだよね。これはまさに個人宿ならではの断り方、と妙に納得してしまった。今までのAirbub体験はたった2回。でもどちらも、瞬速で「大歓迎だよ!」と返事をくれていたから、うっかりそういうものかと思っていたのでした。  

 なのでまた検討再開。うー、なんかもう、目と頭が痛んできて、どうでもよくなってきた…。もう部屋見るの、嫌。ていうか、2人に断られるなんて、悲しすぎる。やっぱりこの旅、不吉なのかなあ……?

  だが結局、粘ったおかげで、マドリッドでは前以上に素晴らしい部屋にめぐりあえました。「アートに囲まれた部屋」と銘打つだけあって、アンティークな雰囲気のこれぞヨーロッパ、なアパートメントに、趣味のよい絵画や調度品が点在し、もうめっちゃくちゃ素敵。プライベートバスもバスタブもある! 心配なのは、2人まで滞在OKなのだけど、ゲストルームと称して写っている部屋のベッドが、どう見てもシングルなこと。もうひとつ部屋があるのかなあ? でもどう探してもそれはなさそうな…。

 ともかく、レビューにあった「私たち夫婦はここで快適な日々を過ごし…」という一文を信じて、大丈夫なのだろう、とここに申し込んだ。あともうひとつの心配事は、あまりにも家全体の趣味がよすぎて、この初老のやせた宿主の女性=マリアが、ちょっと怖く見えるというか…。私たち、この方のおメガネに叶うのかな?と。

 

 しかし、マリアは速攻で返事をくれた。「楽しみにしてるわ!」。ああ良かった、今度は大丈夫だ。どんなことでも、「拒否される」って、けっこうこたえるものですね。ああ、マリア、ありがとう。

 

エクスペディアに負けて

 そしてバルセロナはホテルにしてみました。航空券を買ったエクスペディアの連日のDM攻撃がすごくて、「航空券を買ったあなたには、ホテルも格安で提供!」という言葉につられてしまったのです。まあちょっと見てみようかなあ、という程度だったのですが、オフシーズンのバルセロナのホテルは、どこもかしこも割引だらけ。まあホテルの価格なんてあってないようなもので、元値としている価格もどこまで真実なのかはわからないのだけど、それにしても30~40%引きは当たり前、70%とか、あげくの果てはただ、とか。ただ、フリー。無料。これはよくある、航空券だけよりも、航空券+ホテルのほうが返って安いというわけのわからないシステムの一環なのでしょう。

 

 ホテル探しでも同じような基準で口コミを読みまくります。しかし価格は節約モードなので13000円以下。1万円以下でみつけられたらうれしいなあ。さすがにそれは無理?

 まずは「評価の高い順」に並べ替え、上から順に攻める。エクスペディアのレビューはすくないので、リンクしているTrip Adviserの膨大なレビューも読む。みんなが撮った膨大な写真もいちいちチェック。素人の、素人が散らかし、かつ笑顔で写ってるホテルの部屋の写真って、あまりにも現実的で夢がないけど、そのぶん真実がわかる。

 

 レビューを読み込んでみんな満足してるみたい、と思ったら、今度は部屋のディティールチェック。部屋の広さは25㎡以上。バスタブつき。交通至便。なにしろ言葉のわからない国なので、「どこいくにも便利」とみんなが言ってる場所がいい。できればティー&コーヒーセットつき(つまり電気ポットということ)。

 

 ここでもやはりバスタブ付き、をクリアするのに難儀するが、しばらくモニターを睨んでいたら、掘り出し物のようなホテルを発見。上記の条件をクリアして、でも「すごくおしゃれ」で「この値段でこれだけついてるのはすごい」とみんな絶賛している。「また泊まってもいい」。へー。難点は「おしゃれだけど、けっこうボロいのが目立つ」。「おしゃれだけど、いわゆる豪華ホテルではないので、フロントのあっさり感など、新婚旅行には不向きかも」。

 私は建物の古さは全く気にならないし、新婚でもないので、このデメリットは完全クリア。しかも価格は1泊7千円。うわー安い! すごい! air B&Bより安いかも価格だ。スペイン広場目の前で、万が一迷ってもすぐ帰れる。よし、バルセロナはこの「Bホテル」に決定。

⇧Bホテルのバスルーム。浴槽つきってだけで感激なのに、なんとシャワーはハンドシャワーだった! 変におしゃれなデザインだったけど。ありがたかった。

 

 それにしても、本当にホテルの価格ってわからない。バスタブつきのほか、25㎡以上という条件もなかなか難しかったのだが、1泊3万するようなホテルでも、部屋は20㎡とか、ざらにあるのだ。まあ、ゴージャスなロビーやレストランがついてるとか、なにかしら豪華なのだろうが、肝心の部屋が20㎡以下ではお話にならない。…と思うのは居住空間に妙にこだわる少数派の意見なのか? ホテルは寝に帰るだけなのだから、狭くてもいい、それよりもホテル全体が素敵かどうかが肝心、ということなのだろうか。でもさ、20㎡って、クィーンサイズのベッド1台だとしても、あとはスーツケース広げる場所にも困るような広さだよねえ…。一等地だから狭いのは我慢して、ってことだろうか。

 

 しかし、疲れきり、不安にさいなまされたまま予約ボタンをクリックした私は、やはり過ちを犯していたのでした。つづく。

スペイン旅行記その2 宿を決めよう〜1、そして人間の決断について

嫌な予感だらけの旅行計画って…

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バルセロナの宿、Bホテル。広い、快適、便利、安い、おまけにバスタブつき、と超おすすめです。

 

 手元が狂って夫婦ふたり旅行なのに、私だけビジネスクラス、という妙なことになってしまったが、とにかくこのキャンセル不可の格安航空券を買ってしまったのだから、なにがなんでも2か月後には旅立たなければならない。ふたりで20数万の航空券がキャンセル不可って、かなりのプレッシャーです。みなさん、絶対、旅行行ってるんでしょうか? いけなくなったー、って泣きながらキャンセルしたりしてるんでしょうか? それとも格安航空券を数ヶ月前には買わないのかな?

 

 ずいぶん早く決めた感がありますが、私はいつも10か月前とかに航空券買ったりするので、「突然、すごく遠いところへ行くことにした」感じで、もろもろ不安でした。1月って、なにかなかったっけ?とか、ほんとに行けるのかな?とか。クリックするとき、ほんとはやめといたほうがいいのに、無理やり押した感じです。そして予定外の大出費。はっきりいうと、「嫌な予感」しかなく、そんな旅行やめれば?という声も聞こえてきます。

 

日々衰える決断力

 最近つくづく思うのは「決める」ことの難しさ。

 40代に入ったら、急になにも決められなくなりました。それは「今日は休み。散歩に出かけて本屋とカフェに行こうか。いや、丸の内まで行って映画を観ようか。いや、上野であの展覧会か? 違う、家でたまっているスカパーの映画録画を観るほうが先?」とかいう、日常の決断が、全然できなくなってしまいました。どれも一長一短なのです。

 考えすぎてうんざりし、せっかくの休みの午前中がどんどん消費され、あげく「どこにも行かない」という結論。ほかにもランチにサンドイッチを食べるのかカレーを食べるのかとか、お菓子を作るのか保存料理を作るのかそれともヨガをするのか、とか。「なに? なんでなにも決められないの?」とぞっとしつつ、解決策はないまま40代も半分以上すぎている…。

  

 大きな決断についてもそう。つまり、これからどうやって生きていこうか、という決断も、全然できないのです。長年生きてきてようやく、「人生の正解はとくにない。自分で決めればいい」ということが骨身にしみてわかってきました。いろんな人が、それぞれの自説を唱えるけど、全部正解なんだなと。ぼろぼろになるまで働いたっていいし、のんびり暮らすことを優先したっていいし、他人とのつきあいを避けてひとり遊びに明け暮れてもいいし、大勢の人間と楽しくつきあうことを生きがいにしたっていい。周囲の反対を押し切って無理めのやりたいことを貫くもよし。己の領分をわきまえて、分相応に慎ましく生きるのも美しい。自分の心が定まっていれば、別に理屈はあとでついてくるし、覚悟のある人=定まってる人は、なにをやっても(と言い切ると語弊がありますが)それなりに正しい。

 それはようくわかったけれど、私にはいまいち覚悟というものがないらしく、それであの道もいいけど、この道も悪くない…とランチを選べないのと同様、ふらふらふらふらしてしまうのです。

 …なんか話がどんどん大きくなっていますが、このふらふら感はあらゆるところに作用していて、こんななので、直感も信用できないのです。ときどき訪れるこの「嫌な予感」も、従うべき正しい直観なのか、それとも単なるへたれ精神による無用の不安なのか、判断つかない。

 とくに、ここ十数年で、「感情に従うとだいたい間違う」という鉄則を発見してからは、とくに。「こんなにやりたいのだからやっていいのだろう」「こんなに食べたいのだから体が欲しているのだろう」「こんなにうんざりするのだからやめていいはず」…とかいう、“自分の強い感情”を信頼して決断すると、結果、だいたい間違っていた。あとでたいてい、後悔した。「あれはただあのとき、感情が暴走していただけだった。正しいことではなかった」と何度も痛感したものです。なので、「感情で動くな」というのも、近頃の鉄の掟のひとつです。

 

 でも、「感情で動かない」なら、いったい何を基準に動けばいいのか?

 

 若いときは、怖いものしらずだったから、いろんなことがびしっと明確に定まっていた。今思うと、“怖いものしらず”、ではなく、単なる“物知らず”だっただけなんだけど、そのぶん迷いはほとんどなかった。

 

 今回はとくにこの「嫌な予感」が強くて、航空券と宿を探し続けている数日間、ずっと重くのしかかっていました。「今は行くべきではないのかも?」と。感情的にも「すっごく行きたい」「今はやめとけ」がせめぎ合っていて、まるで判断つかない。

 ですが、結局決行することにしました。「これは単なるびびりであって、第六感ではない」と無理やり決断したのです。根拠はないです。「こんな不安に負けていてはどこにも行けないではないか」という理屈1本。気分としては目をつぶって飛び降りるような感じです。

 こんな無駄な格闘をしていたりするので、楽しいはずの旅行計画が、どんどん修行めいてくるのですよね…。あほか。まあ、こういう気分の上下も旅行の醍醐味の一部。と、無事旅行記を書いている今は、思えます。よかった。間違ってなかった。

 

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 ↑マドリッド、マヨール広場付近。ヨーロッパに来たなあ、という街角。通りに必ずこんなかわいいプレートがついている。だいたいは人の名前なんだけど、この二人組は…兄弟? …と思いつつ調べたら、bordadoresとは針仕事をする人、だそうで、絵のまんま…。そういう仕事の人がたくさんいる通りなの(だった)のね。

 

ようやく宿探し開始

 ようやく心を決めたので、宿を探します。航空券で贅沢したので、宿は節約しないと。というか、不思議なのは、昔は飛行機はビジネス、宿もできるだけ非日常的な豪華ホテル。全泊でなくてもいい。せめて1、2泊は、などと思っていたのですが、今は豪華ホテルに対する憧れが皆無になりました。リゾート地の「なにもしないバカンス」もほぼ興味なし。なので、宿は最低条件を叶えてもらえれば、あとは普通で…という穏やかな希望です。Airb&b大歓迎。ふだん、他人となるべく関わらないよう生きていて、ホテルのほうが全然気楽なのですが、「え、誰かの家のほうがおもしろいだろ?」という夫の発言に、そりゃまったくその通り、ということで、民泊の、しかも家主と同居で個室を借りるタイプに的を絞りました。

 知らない外人の家に泊まる。これもなかなか命がけで、いつも行く前に「殺されるかもなあ」と覚悟していきます。これは不安ではなく、気合いのようなもの。「そうなったらそれが私の運命なのね」と、心を決めます。また、個人の家にお邪魔するのだから、相手の気持ちを考えすぎて疲れきる可能性もあります(←人の顔色を伺う性格)。これならホテルのほうがよほど気楽だった、と後悔する可能性も高い。しかし、これもあえて決行です。

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↑このメーカーのヨーグルト、激うまでした。マドリッドの観光市場、サンミゲル市場にもあって、いろんなトッピングを用意していたけれど、プレーンでいい。プレーンがいい、という感じ。左のマンゴーソースが上に、ベリーソースが下に、というのもおいしかったけど、ちょっと甘いかな。無糖のナチュラルが真価を発揮するような気がする。

 

次回こそ、ほんとに宿探し篇。

 

スペイン旅行記〜その1 航空券を探す、そして人間の習性について

オフシーズンの激安チケットは、11月が買い…なのか?

 

 航空券と宿の手配が確定すると、旅行が始まります。これを確定しないことには、いつもの旅妄想と変わらない。今回は、わりと予定外に決まりました。なぜならば、あまりにも航空券が安かったからです。

 

 最初は、ANAバンクーバー、ホテルつき、3泊5日 5万円(←価格かなり曖昧。ただ、見たことない価格だったのは間違いない)とかいうのを見つけて、えー、となり、しかし、バンクーバーに全く興味がないんだよね…と夫に話したところ、「なにその値段。俺は知らない場所はどこでも歓迎だ。行こうぜ」と、話が急に現実化してきました。彼はどうも働き詰めでストレスがたまっていたようです。

 それで一度行く気になったのですが、バンクーバーというのがひっかかり…。かの地に罪はないのですが、(当時の私にとって)食べたいもの、見たいものが全然ない。しかも、調べてみると、旅行予定の1月は雨ばかり、との情報。在住者でさえ「とくに行くとこないんですよね」などと書いているし…。どんなに安くたって行けばお金は使うわけで、それならあれほど行きたいと願っていたスペイン、イタリア、モロッコになぜ行かない? となって、心機一転、航空券を真剣に探してみました。すると、

 
 アエロフロート 東京⇔バルセロナ 45,000円

 

 という衝撃価格発見。これが11月はじめ。その数日前まで、カタール空港で22時間かけていくスペイン、58,000円などという数字に驚いていたので、目を疑いました。しかもこちらはトランジット含めて17時間。どんどん底が下がっていく…。国内旅行より全然安い…。格安航空券業界というものを、それまであまり知らなかったので、こんなこと起こりうるのか…と認識を新たにしました。今、世界情勢…とくにヨーロッパが不安定というのも大きいのでしょう。もう海外旅行、とくに観光名所に行くのは、命がけの時代です。しかし、子供のいない私はなにも守るべきものがないので、こういう人間こそどんどん行くべきだろう、行きたい場所があるのなら、という感じです。

 

 スペインに行くときは初夏かな、だって地中海のある国だもんね、太陽がさぞ美しいだろう…などと考えていたのですが、それはみんなも同じことで、真冬には誰も行きたがらない。でも、だからこそ安い。エアも安ければ、宿も安い。観光名所もがらがら(のはず)。

 素晴らしい気候のなか、高いお金を出して、観光客にまみれて旅するのか、
 真冬、街歩きにも苦労するような寒さのなか、どこへ行ってもすいている、そして経費が格段に安くなる真冬に旅するのか。

 

 ここが悩みどころです。何を優先したいのかってことですが。私は、スペインだけでなく、しょっちゅう旅行したいので、かつ、人混みが大の苦手なので、後者を選びました。実際、旅行中(だけ)、スペイン人もびっくりの寒さに襲われたりもしたのですが、それでも、この値段で、この人混みのなさであちこち回れるなら、真冬で全然いいんじゃないか…と思っています。荷物は夏の倍になりますけどね…。

 

 ちなみに、格安じゃない、ANAだって、しょっちゅうバンクーバーのような掟破り価格を出しているのですね。ベトナム、ホテルつき、ビジネスクラス、3泊(約)10万円とか、どういうからくりか全くわからないけど、同条件でシンガポール86,000円とか。ビジネスクラスのホテルつきツアーがプレミアムエコノミーより安い、ってなんて逆転現象も日常茶飯事のようです。ニューヨーク ホテルつき 3泊5日(あれ?5泊だったかも?)ビジネスクラス198,000円とか。これは今でも行きたかったなあ…とため息が出ます。3泊だろうが5泊だろうが、まったくもってありえない価格だったから。延泊可だったしなあ…。

 そういう拾い物を見つけるために、航空券およびツアー情報というのは、1年中こまめに見てないとだめなのね、というのが今回の学習事項。エクスペディアやHISがやっている航空券サイト、SURPRISE、ANAJALから来るツアー紹介メルマガ、そして海外旅行マニアや陸マイラーブログ。このへんが主な情報源になりそうです。

そして、どうやら程度の考察ですが、11月というのは底値のようです。このあとは航空券は上がることはあっても下がることはありませんでした。※ 

 

アエロフロートアリタリアは、とにかく安い

 その後アリタリア航空 39,000円というのも見つけたのですが、正直、どちらの航空会社の印象も全然よくない。機内でしんどい思いしそうだなあ、いつもANAに乗ってる自分にはつらいだろうなあと懸念しつつ、今度は航空会社の口コミをチェック。エクスペディアや4トラベル、そして個人のブログ、と3重に調べます。そしたら、

 近頃のアエロフロートは抜群に評判がいい。

 という、また発見がありました。

「数十年前はアエロフロートといえば笑えるほどボロい機体、安い価格、共産圏ならではのサービス皆無の航空会社でしたが、今はまるで違うのです」

 という口コミをいくつも見ました。実際の搭乗記を読んでも、ぴかぴかのエアバスで、みんなご機嫌に旅行している。「この値段なら全く問題ない。全然いい」。

 しかも、ビジネスクラスだとフルコースの食事がついて、なかには機内食としては珍しい「陶器に入った温かいスープ」が出てくるという。個室感覚のスタッガードではないにせよ、スペースは十分だし、CAさんたちも完璧に近いサービスだとか。

 難点は、法律によりビールが出ないこと(私は下戸なので関係ない…)。そして、エコノミーは食事が終わるまで飲み物が出ない。荷物チェックのあと水を買って持ち込むか、食事前に一度だけ配られる飲み物を飲みきらずにとっておくこと、が大事なようです。食事中に水分が摂れなくて、みなさん結構苦労しています。

  あと、日本語対応の映画はごくわずからしいので、なにかしら暇つぶし対策も必要のよう。

 それでもおおむね口コミ評価は高く、それでこの価格はすごい。

 アリタリア航空の口コミも調べましたが、こちらは反対に一様にみんながっかりしていました。とくにビジネスに格安で乗ったある人は、「いくら安いからといって、ここの会社のビジネスに乗るのはまったく無意味」

と怒り心頭でした。サービスに怒っているのか、機材・設備もしくは食事に怒っているのか、いまいち文面からは判断できなかったのですが…。たぶん全部なのでしょうが。

 

 でも、アエロフロートはかなりいい。よし、これを予約して1月にスペイン行くか!と心を決めた(航空券を買わなければいつでもすぐ妄想で終えられる)。

 日にちは、出国、帰国はどちらも平日(週末は高くなる)で、美術館が休みの月曜は避けたくて、バルセロナの店のほとんどは日曜休みだが、マドリッドはそうでもない…などの条件を考慮し、1月のある火曜に出発し、火曜の夜遅くに到着、水、木とバルセロナで過ごし、金曜は移動日兼サラゴサ観光、土曜日曜でマドリッド観光、月曜の朝に帰る。という、今考えてもなかなか美しいスケジューリングができました。

 宿を先に決めるのか航空券が先なのか、というのも悩んだのですが、上記のスケジュールだと自然と日にちも限られ、かつ、宿やホテルは豊富にありそうな感じだったので、飛行機優先に。

 それで、いざ航空券をクリックしようとしたのですが、なかなか指が動かない。高評価の口コミを何度も見直していると、ときどき「すごくいい。でも席は狭い」というコメントがいくつか見られるからです。そりゃそうだろう。この値段なのだし。広いわけがない。エコノミーなのだし。でもこんな価格で地の果て、スペインに行けるのだから、御の字だよね。…と何度も自分に言い聞かせていたのですが、いざ購入ボタンをクリックする段階になって、まざまざと狭い機内に人がぎっしり、の光景が浮かんできて、思わず決心を翻してしまいました。

 

二人旅行なのに、ひとりだけビジネスクラス

 つまり、航空券は、エコノミーを1枚(←夫用)、ビジネスを1枚(←私用)というわけのわからない買い方をしてしまったのです。なぜならばビジネスクラスもエコノミー同様、激安だったから。といっても18万円ですが…。そして、夫は「たった10数時間いる場所のために、高いお金を出すのはばかばかしい。僕はエコノミーでいい。むしろエコノミーがいい」とかいう、快楽をいっさい求めない強靭な人なので、彼もビジネスにする、という案はありえなかった。

 こんな旅行、どう考えても変、と思いつつも、あー、もう私、あのエコノミーの狭い空間で、トランジットしながら17時間は無理…と、はっきり思ったのです。数時間前まで、これも修行の一貫。耐えればまた新しい自分に出会える、などと思っていたのですが、購入段階になって、すーっとその意欲が消えました。

 私は今後も、自分のいろいろな弱点を克服したい。進化をあきらめたくない。苦手なことにも挑戦しよう。…でも、飛行機の座席に関しては、もういい。ここはもう我慢したくない。楽な方に喜んで流れよう。

 もうなんともあっさりきっぱり、白旗を揚げてしまいました。別にお金に余裕があるわけではありません。資金は、「いつかまたニューヨークに行くために(←ニューヨーク好き)」と、長年紅茶の缶に貯め続けている500円玉貯金を使うことにしました。

 …なんなんでしょう。だめな人間ですね。本当、ビジネスクラスは私の最大の弱点です。高い洋服や高いソファへの欲望には打ち勝てても、ビジネスクラスは拒否できませんでした。狭くて恐ろしい飛行機という空間を、楽しい時間(…っつっても、閉所恐怖、不安症には変わらないわけで、いろいろとつらいのだけど)に変えてくれるビジネスクラス

「たった10数時間のためにこんなに払うなんてばかみたい」という意見はまったくもって正論だと思うのですが、もう戻れないです。今まで3度、ビジネスには乗りましたが、本当、一度乗ってしまうともう無理だ、と思います。このとき、始めて45歳という自分の年齢を前向きに使用しました。

「あたし、もういい歳だしさあ。そんなにこらえてエコノミーに乗らなくてもいんじゃね?」

 あのときは、この独り言が異様な説得力を持ってしまいました。「そうだ。そうだよね!もういい、もう我慢しなくていいよ!」。

 

人は生活レベルを下げることはできない

 しかし、後日夫に「一度くらいはビジネスに乗ってもいいのでは?」と詰問していたら、「一度乗ったら、もうエコノミーに戻れないと思うから嫌だ」と言われてしまいました。

 がーん。またも激しい正論!

 実際私、そのまんまだし!

「俺は快楽が嫌いなわけではない。ただ、一度快楽を味わってしまい、そこに執着するようになるのが嫌なのだ。だったら最初から知らないほうがよほどいい。実際、上司と新幹線のグリーン車に乗ると、次の出張でひとりで普通車に乗るとき、必ず“グリーン車がいいな”と思ってしまう」

 なんと……。私は、彼はてっきり、「快楽が楽しくない」特殊な人間だと思っていたのです。違いました。先々の不愉快を避けるため、律していただけだったのです。もう24年くらいつきあっているのですが、勘違いをしていました。

 衝撃を受ける私に、夫は追い討ちをかけるように以下のエピソードをたたみかけます。

 2ちゃんねるひろゆき氏は、莫大な富を得つつも、今もすごく質素に暮らしている。なぜならば「人は生活レベルを落とすということは、決してできないから」

…………。

  これは重大な問題になってきました。これは、「もう歳だからビジネスでいい」というのとは、なんか違う次元の話みたいです。でも問題が大きすぎて、どう整理していいのか、今の私にはわかりません。

 一生懸命懺悔を書いて、頭を使ったらとても疲れたので、宿決め篇はまた次回…。

 

↓ビジネスだと飲み物は陶器なんだよね…。しかもこんなかわいいチョコレートつき。味もかなりよかった。  

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※付記…ていうかいや、それは嘘です。すべてをブッキングした数日後、SURPRISE限定、カタール空港 スペイン行き ビジネスクラス158,000円 エコノミー49,000円とかいうのが出たんです、突然(いつでも突然なわけだけど)。結構身悶えして苦しんだのですが、そのニュースを聞いた数時間後に検索しても、もうそのチケットはどこにもなかった…。

瞬間完売ということ? 夢だったのかな? 今もよくわからないのですが、あれはくやしかったなあ…。しかしカタール空港だと飛行時間22時間。そんなに乗れないだろう? 自分? アエロフロートでよかったのだ、と何度も自分を説得しました。