独楽ログ〜こまログ〜

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スペイン旅行記 その27 昼食の幸運とマリア事件

振り返ると(?)5月だった…

 いつのまにかGWになってしまった。とくにだらけた記憶もないのに、1月の旅行記を書いててほぼ5月になって、しかもまだ終わっていないというのはどういうことなのだろうか…。

 ともあれ、1年のうちで一番美しい季節がやってきた。桜もいいけど、そのあとの新緑はもっといい。新緑って、どれだけ見ていても飽きないから不思議。毎年、大型連休は家の周辺以外はどこもいかず(どこも混んでるから)、気持ちいいなあ~と5月の風に吹かれながら、みんなが一生懸命出歩いているさまを眺めているのが好きです。だからニュースで高速渋滞情報を見たり、新幹線の駅での街頭インタビューを見たりとか。「孫が遊びに来てくれたんですが、もう帰っちゃいます」とかいうおじいさんの話。「明日から仕事です」と子供を抱きかかえるお父さんの話。代々木公園ではこんなイベントが行われました、とか。「すごい人だねえ~大変だねえ~」と言いながらこういうニュースを見るの、かなり楽しい。

 自分では充実した連休のつもりなのだけど、誰かに「連休どうしてました?」と聞かれて(みんなこれ聞くよね。まあ便利な話題なんだろうが)これを答えると、「へえ……」と、返事のしようがねえなあ…みたいな顔をされることが多い。そんなに連休ってどこかに行かなければいけないのかしら? 逆に緑がきれいだから、近所を散歩するだけでもかなり充実するのだけれど…。今は新緑と、モッコウバラが猛烈に咲いてますね。ジャスミンは今、蕾を膨らませ中。

 

大事なランチを忘れていた 

 しかし心はまた1月に戻らなければ。

 あまりに昔すぎて、マドリード2日めのランチを書くのを忘れました。大事なランチでした。

 プラド美術館を出て、では近所でごはんを、ということになった。おいしそうなレストランがたくさんあって、Googleのレビューもみんな高評価で、かなり迷う。なかでも飛び抜けて高評価な店があってまずそこへ行くが、「3週間先まで予約いっぱい」などと東京みたいなことを言われてしまう。では、あそこかここか…と迷ったが、なぜか夫が「俺、ここがいいと思うんだけど」と言い出した店、「Restaurante Bistronomika」は、新しい店なのか、まるきりレビューが出てこない。

 


This photo of Restaurante Bistronomika is courtesy of TripAdvisor

 

 ものすごい賭けだけど、ネットの評価って実はそこまであてにならないし(高評価だとハードルあげちゃうからか?)、メニュー自体はおいしそうなので、よし、賭けてみよう、と入店。でも誰もいない…。

 

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なぜならばこの日も12時半とか1時とかいう、スペインではまだ誰も昼を食べない時間だったから。もちろん店も開けたばかり。時間外だから誰もいないなのか、あまりおいしくないから誰もいないのか、それはわからない……。

 


Deze foto van Restaurante Bistronomika is beschikbaar gesteld door TripAdvisor

⇧私たちが座った席。

 

「とりあえず1,2品頼んでみよう」と、いつもの作戦。

 まずはこのカニとポテトのサラダを…。

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 しかしここもサラゴサ同様、びっくりするほど大当たりだった。「あれ? なんかこれ…すっごくおいしくない?」とおどおどと夫の顔色を伺う私。まるでおいしいといけないかのようだ。だが、一緒にきたシード類たっぷりついた雑穀パンも、パンは普通のスペインにあって、噛めば噛むほど味が濃くておいしくなる、かなりのレベル。

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夫も、もぐもぐと口を動かして黙ったあと、「うん、これはかなり、おいしい」とうなずいた。だよね、おいしいよね!?と同意しあって、よし突撃だ、とがんがん頼む。相変わらずお客はちっとも入ってこないけど、やってくる皿はどれもこれもおいしいので、なにここも、大当たりなの? レビューもない店なのに? すごい、幸運すぎる!などとあれこれ言いながらどんどん食べる。

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⇧イカ。炭火焼き。めっちゃ香ばしくておいしい。

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レッドカレー。カレー、なのですね、これ。したにはじゃがいものピュレ。上にはシャンツァイ。

 

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⇧トリッパ。ホルモン好きの夫が、「なんでおいしいんだ」と最後の一滴まで飲み干した。

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⇧レモンタルト。楕円形にくり抜いたサブレ生地にレモンカード、ライム(かな?)ソルベのせ! 素晴らしいコンビネーション、抜群においしい。しかも普通のタルトより作るの簡単そうだ…。

 

 店内や食器類はモダンでおしゃれ、でも正直、高級感はあまりない…つまり、東京にあったら絶対あんまり美味しくない、「子供だまし」的なインテリアと言えなくもない(いや、素敵な店なんですけどね)。けれど味は間違いなかった。味もおいしいし、“え、これカレーなの?”“なるほど、これがタルトなのかあ”とか、皿にいちいち驚きがある。楽しいし、おいしい。なので、あれこれ興奮しているうちにあっというまに時間がすぎていく。

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⇧最後のお茶。あちこちで鉄瓶でお茶を出す店に遭遇した。流行ってるのかしら。

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⇧外に貼ってあったメニュー。夫に、なぜここに賭けてみたいのかと思ったのか、あとで聞いたら、「メニューの最後にシェフの名前が書いてあって、なんだかいけそうな気がした」とのことでした。

 

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⇧お会計のレシートは蒸篭に入ってでてきた!

 

 うーん、すごかったねえ~と言いながら食事を終え、我々は自由行動に散ったのでした。

 

 ちなみにググっても出てこなかったのは、夫が単に店名の入力ミスしていたから、でした。調べなおしたら高評価でした。ちゃんちゃん。

 

マリア洗濯事件

 このランチのあと、私はひとりでマドリードをさまよい、腰を痛め、祭りにもまれて夕方、ようやくマリアの家に帰るのですが、帰る10分くらい前、なんとか命を保っていたiPhoneで「家帰ってる? 帰ってたらマリアに頼んで洗濯機を貸してもらって。そして洗濯して」とメッセージを送ると、「なんか洗濯してあるよ?」と不思議な返事が。 なにを言ってるんだろう、この男は…と思いながら、帰宅すると、本当に洗濯がしてあった。

 

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↑こんなふうに!!

 

 ロープにぶら下がっているのは、間違いなく我々の衣類である…。激しく動揺する私。しかしバスルームの、洗面器につけおいた下着も、スーパーの袋にぎっしり詰め込んだ洗濯待ちの衣類も、全部消えている。えー!? あの汚れ物を全部マリアが洗ってくれたってこと!? えー? そんなことあるの!?

 しかも、部屋も完璧にきれいになっている。部屋に入ってはこないのだろうと油断して結構好き放題にしていたのだが、部屋のすみに放置しておいたスーツケースは奥のクローゼットにしまわれているし、テーブルセッティングも昨日の到着時と同じようにまた全てがきれいに元通りになっている………。棚に適当に突っ込んだ化粧道具類、きれいな下着靴下類も並びなおされている。うわー、恥ずかしい! とてつもなく恥ずかしい! こんなことならもっときれいにしておくんだった! ていうか洗面器から汚れ物を出してまで洗うとはどういうことだろう!? あのビニール袋の中身が汚れ物だとなぜきっぱり判断できたのだろう!? しばらくうろたえ続ける私。

 うろたえているとマリアがどこかから帰ってきたので、とにかく強烈に謝ってお礼を言う。恐縮している、ということを全面的にアピールする。しかしマリアはにこにこして「いいのよー」と笑っている。「いやでもこんなにまでしてもらって…申し訳なさすぎるんですけど…」的なことをいつまでも言い続けていると、マリアは「That's the way of my life」とまたにっこりした。

 英文はうろ覚えなのだが、とにかく「いいの。これが私の生き方なのよ」と私の頭には入ってきた。それを聞いた瞬間に、「あ、いいのか」と、すーっと納得してしまった。こんなにしてもらうのは申し訳ないとか、ここまでするのはプライバシーの侵害ではないだろうか、とか、とにかく様々な感情が入り乱れていたのだが、この一言と笑顔ですべてが消滅してしまい、「これでいいのだ」と思ってしまった。すごい威力のある言葉だった。

 ここはマリアの家だし、マリアはうれしそうだから、これでいいのだ。そしたら、すっかり気が楽になってしまった。  

 私がお土産の日本手ぬぐいを渡すと、ものすごく感激してくれ、すぐさま首に巻いて(スカーフにもなる素敵な柄だったのだ)、しかも「ぜひ写真を撮りましょう、ね?」と言ってカメラを持ってきた。そしてそのスカーフをしたまま妹さんとの食事にでかけていった。とにかくまあ、本当に心底かわいらしい人だと昨日に続き、今日もつくづく思った。

 居間の大きな絵は両親から受け継いだもので、お母さんはファッションジャーナリストで、お兄さんは有名な造園家で、ほかにふたり妹がいて…等々、彼らのことをたくさん話してくれた。家族のことをこんなふうにうれしそうに話す人って、日本ではあまり会えないなあ、と話ながら私はしみじみ考える。

 この素敵なアパートを見回しても、彼女が裕福で幸福な人生を歩んできたのだということは想像つく。恵まれた環境で、愛されて育って、そこから愛することを学んだ人なのだろう。家族から友人から、数日間だけつきあう東洋人まで、「関わった人をしっかり愛する」ということが、彼女の「the way of life」なのだ。

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⇧ご両親から受け継いだ絵。

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⇧造園家のお兄さん(作風はZENの影響を受けている!)の作品。 

素敵な人に出会えてよかったなあ、とほのぼのした気持ちで眠りについた。