そして毎日やったら!
そんなこんなで週1でだらだらやっていたパワーヨガを、毎日やることにした。問答無用でやることに決めた。
そしたら。
そしたら!
なんだか爆発的な爽快感がやってきたのである。
始めて2週間くらいが、すごかった。朝はすかっと眼が覚める。起きたときから、猫背気味の背筋がぐーんと伸びている。勝手に伸びている。それをさらに意識的に伸ばすと、うわー、と声を出すほど気持ちがいい。身長、伸びてるかもな、と本気で思った。階段がかるがるとあがれる。スキップしたいほど足腰が軽い。顔が上を向く。心が澄んでいる。頭が冴えている。本当に、すれ違うひと全てにこの快感を訴えたいほど気持ちよかった。
………が。
残念ながら、この衝撃は一時的なものだった。人はどんなことにでも慣れてしまうのである…。次第に、いつものように寝起きはつらく背中はまるまり、低気圧がくると気分が滅入った。寝覚めも、いつものようにだるい。
それでも、気のせいではない
それでも、ヨガの効果が幻だったわけではない。効果が消えたわけではない。効果に慣れてしまったのだ。しかし、あの一瞬のハイ状態のときに、毎日ヨガをすることが習慣にしてしまったおかげで、今ではほとんど苦もなく朝、マットを敷いている自分がいる。
鏡にうつった姿は、明らかにしまった。体重は変わらないけれど、前はきつかったセーターの袖も、普通に入るようになった。階段を上がるのも、もうつらくない。なにもかも面倒くさい、という気持ちにもほとんど襲われなくなった。効果が消えたわけではない。効果に慣れてしまっただけで、ちゃんと身体は以前より進歩しているのだ。誰かに言って回りたいほど元気ではなくなったけど、以前よりは確実に上向きではある。三歩進んで二歩下がる、である。
目に見える成果
うれしいのは、まったくできなかった開脚が少しずつできていること。開脚することは完全に諦めていたので、できる範囲でいいや、とそこになにも注力していなかったのだが、毎日ヨガを始めて半年後、お尻の下に敷く薄い座布団が不要になっていることに気づいた。以前は、あまりにも腰が反らなくて(私は後屈型体型なのです)、お尻の下になにかはさまないとほんのわずかな開脚もままならなかったのだ。だが、ある日、なくてもそれなりに開くことに気づいた。そしてゆっくりゆっくり、開脚し続けている。同時に確実に前屈できるようにもなっている。
さらに、昔は「完全にありえな」かった曲芸のようなレベル3にも手を出してみた。「できることだけやればいい」と、ブライアンの口癖を唱えながら。それでも、翌日全身が痛くなるほどハードだった。え?え? ええええ!?とあまりのハードさに驚いた。真夏に始めたのでとんでもなく汗をかいた。
しかしこれもなんどもやれば、少しずつできるようになる。本当に、ヒトって、なんにでも慣れる! ひーひー言いながら、5回に一回程度の頻度でやったのだが(ほかはレベル2)やはり10回程度やったら、驚くこともなく、ごく当たり前にできるようになった。毎回少しずつできるようになるので、やるのが楽しみなくらいである。
できて一番うれしかったのは、この「カラス」のポーズ。
最初は修行僧しかできないでしょ、これ、と思っていたのだが、「案外するっと、ある日突然できるようになる」というネットで探し当てた言葉を信じてトライしていたら、本当にある日突然できるようになった。いつも左ひじに先に脚をのせて失敗していたのだが、右ひじから最初にのせたら、すんなり乗ったのだ。なんでだろう? 右ききだからか? 不思議だな。こんなことで半日はうれしい。
しかし、まだ自分はひじに両脚をのせてつま先をくっつける、という段階まで。本当は、ここからさらに頭を浮かせてポーズは完成するのだが、これができるようになるのは少し先だろう。
いまでもレベル3のポーズでお手本通りできるのは半分くらいだ。一部は誰にも見せられないほどひどい姿でしかできないポーズもある。それでも、自分なりにポーズをとり、それが安定すると、快感はちゃんと訪れてくれるのである。できないことに引けめを感じることはないのだ。
まだよくなる、という希望
物事が前に進んでいる、という実感。45歳にもなると、これこそが一番大事かもと思う。だって、本来はもう人生後半をすぎていて、なにもかも下降していくことが当たり前なのだ。肉体は衰え、頭は悪くなり、終末にむかってゆっくりと進んでいっている。そういうことを日々思い知らされるなかで、まだちゃんと向上しているものがある、向上させることができる、ということ、これは大きな支えなのである。
だから私は、毎日ヨガをするのです。