独楽ログ〜こまログ〜

50代、女性、日本人、がひとりで毎日楽しくすごす方法を検証、実践、そして記録。

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スペイン旅行記 その18

今回は捻挫だった

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 ⇧旧市街、ゴシック地区。

 

「俺、足くじいたみたい」

 と夫が言い出したのは夕方近く。17時に予約したピカソ美術館を目指しつつ、その周辺の旧市街をぶらつこうというとき、ぽつりと夫が爆弾発言。

「…………」

 またか……絶望する私。これまでの経験から、なにが起きてもすぐ対処できるよう、バンドエイド、腰痛コルセット、湿布、痛み止め、下痢止めは持参してきている。が、どうも彼は毎回旅行のたびにどこか故障するだけでなく、“新しい故障”を起こすらしくて、捻挫ではコルセットもバンドエイドも役に立たない。せいぜい夜、湿布を張るくらいか。

 それにしても、バンドエイドだの湿布だのの類は、やはり日本製が使い勝手もわかるし、よくできてるしで、持参していくのがよい気がする。現地の薬局に飛び込んで、片言言葉で訴えつつ、あれこれ探すのも楽しいのだけど、だいたいこういう故障は重篤ではないけど、いますぐ手当したいものが多くて、例えば夜中に痛みが出たりすると楽しんでる余裕もなくなる。最低限の量だけ持っていってそれで応急処置しつつ、足りなくなったら現地であれこれ見ながら探すのがいい、のかな?

 

 こんなに故障ばかり起こすのは、私が歩かせすぎだからなのだ、という結論になりかけていて、たしかにそうなのかもしれないが、要は普段から体を動かしていないからこうなるのだよな、と、普段から体を動かしすぎている私は思う。彼は私と違ってまっとうな、よく働く勤め人なので、常日頃なにも運動していなくて、かつ軽い腰痛持ち。そしていざ休みをとると、まずバスなども含め二十時間近く乗り物に乗って外国にやってきて、その翌日から17km歩いたら、故障出て当然なのかもしれない。

 この日の終わり、足に私のあげた湿布を貼りながら、夫はiPhoneの万歩計を見て私に文句を言った。

「あれだけ、詰め込まない旅行を、といったのに、俺たち今日17km歩いてるぞ! なんでだ!」

 ということで、普段全く運動しない人は、旅行での突然の歩きすぎにはくれぐれも御注意されたし。

 

旧市街、ゴシック地区でヨーロッパ気分満喫

 それにしても旅の2日めから捻挫かあ…。かわいそうに。しょうがないので、いつものように彼の体をいたわりつつ、ごまかしごまかし、旅を続けるしかない。

 

 しかし美術館のあるゴシック地区あたりにやってくると、景色はまさに旧市街。靴音も快い石畳、重厚な石造りの壁、細い路地、そのなかに押し込められた店々…いわゆるヨーロッパな風景で、こここそ、歩きまわってなんぼ、な地区である。相変わらず寒いし、夕暮れも近づいてどんより暗くなってきているが、それが逆にこういうヨーロッパの町並みにはぴったりだ。ハモンの店や雑貨店、カフェ、教会…

観光客だらけだなあ、とは思いつつも、まあ自分も観光客だからしゃあないと納得し、できるだけのんびり、てくてく歩く。

 

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 なぜかオーナーが日本語ぺらぺらのナッツ屋さん、CASA GISPERTで今回ほぼ唯一の買い物らしい買い物をし、

 

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⇧日本人観光客には超有名なお店のようです。ナッツ&ドライフルーツ好きにはたまらない。高価なマルコナ種アーモンドをここぞとばかりに買う。

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ピカソ美術館ピカソの「ラス・メニーナス」への異様な執着に感動を通り越して笑ってしまったり、

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「ラスメニーナス」の模写、58点(!)の一部。

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 ⇧wikipediaより。

本物と見比べ、「ああ、あの黒い男が今度はここに」「犬はいつもでかいな」などと言いながら58点それぞれ詳細に見ていくと、ものすごくおもしろい。「あと2日後にはプラド美術館で本物の「ラス メニーナス」が観れるのだ、と思うとさらに興奮が高まる。

 なにしろピカソは本物のほうが写真などより圧倒的に見応えがあるので(なぜ? ポストカードとかになるととたんに色褪せるような…)、かなり充実した時間が過ごせます。

 

ピカソバルセロナで十代を過ごしたそうで、若き時代の作品がここではたっぷり鑑賞できる。さる13世紀あたりに作られたお金持ちの邸宅を5軒ぶん、改装したそうな。撮影禁止なので写真はろくに撮れなかったけれど、1時間半くらいで回れるちょうどいいサイズの館内に、作品がほどよくぎっしり、で見やすく気持ちのいい美術館。カフェがなくなっちゃったらしいのが残念でした。

 

ショッピングモールで鬱っぽくなる人はいますか?

 最後はホテルの近くの元闘牛場、現ショッピングモールというなんだかちょっと哀しい感じ(たぶんみんなはそう思っていない)の巨大モールをぶらついて疲れてしまい、夕食もろくにとらずに寝てしまった。そもそも普段から夜はほとんど食べないので、別にふつうのことなのだが、ただ、スープが飲みたかった。

 なぜならばスペインではスープというものにほとんどお目にかかれないのだ。日本やアメリカなどだと、カフェやデリ的なところに必ずスープはあって、小腹がすいたとき、さっと食べてあったまるということができるけど、なぜかスペインではこの「街角で簡単なスープ」をまったく見つけられない。ピンチョスはいっぱいあるのだけど…。ショッピングモールの地下フードコートには、もちろん多少あった。けれど、見つけたときにはもう疲れきっていて、そしてはやくこのショッピングモールという、得体の知れない、妙に力を吸い取られる場所(きっとみんなは違うのだろう…)から逃げたくて、素通りしてしまったのだ。

 タワーマンション、ショッピングモール、地方都市の国道沿いのチェーン店、などが私を暗くするものたちなのですが、これらに共通しているのはなんだろう? そしてこんな気持ちになる人、ほかにもいるのでしょうか?

 

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⇧ホテル近くの巨大モール。昼間撮影。最上階はシネコン、地下はフードコート、その間には無数の洋服と雑貨、というお決まりの構造。左はじにあるのはなんというか、アミューズメントエレベーター? 透けてるエレベーターに乗って上まで行って、屋上のレストラン街へ…。いくらか知らないが、有料ということに驚く

 

勝負に勝って眠りにつく

 そういうわけで、なんか疲れてなにも買わずホテルに帰る。昼にたくさん食べたからそんなにおなかはすいていない。でもなんか物足りない。仕方ないから寝てしまい、明日たくさん食べようか…そんなふうに思いながら風呂に入ったあと、思い出した。

「わかめスープがある!」

 私が大きな声で言うと、

「わかめスープか。飲もう!」

 と夫も湿布を張っていた手を止めて呼応する。

 ふたりで飛びついて湯を沸かして飲んだら、これがえらいおいしかった。抜群においしかった。なんなんのだろう。5袋149円、ゴミのような乾燥わかめしか入っていないのだが、うまかった。「これこそがいま、自分が心底飲みたかったものなのだ」としみじみ思いながら飲んだ。わかめスープ。持ってきてよかった。いつも文句ばかり言う夫も、湯気のたつなかふうふう言って飲み続け、「うん。うまい。すごくうまい」と言っている。

 なんだか勝負に勝ったような気分で眠りについた。