芦屋へ
旅行2日めは兵庫の日。

私にとって芦屋とは。村上春樹が育った場所であり、『細雪』の舞台である。「芦屋」という単語を読むたびに勝手に情景を思い描いて数十年。ついに現場に来た。とうとう来た。こじんまりしたホームを降りると、そこから川が、振り返ると山が見えて、感動してしまった。素晴らしい…。なんてのどかな眺めなのだ。でもこんなにちっさい駅なの? あの芦屋が? と驚いたけれどこれは阪神の芦屋駅なのね。帰りに使ったJRの芦屋駅は普通のターミナル駅みたいにでっかかった。いや、阪神電車で来てよかった。
兵庫に行くなら同じく何十年も念願だった谷崎潤一郎記念館に行かねば。川沿いを20分くらい歩いていく。なにしろ天気が良い11月、最高に散歩日和である。


川の反対側はずーっと公園なのだが、これがまた、松がたくさん並んで日本庭園のような渋い公園。

このときはこの選挙があそこまですごいことになるとは想像していなかった
芦屋市谷崎潤一郎記念館

谷崎の足跡をたどる小さな記念館。彼がいかに女好きで、それを執筆の原動力にしたかがよくわかる内容だった(なかは撮影禁止)。自分は谷崎のエロ方面はあんまり興味なくて、下世話で鋭い観察眼と音楽のような文章が好きなので、「そうなのか…やっぱり女なのか」などと改めて納得したりしたが、「でもそれだけじゃないでしょ?」とも思ったり。『細雪』の幸子のモデルになった松子夫人のインタビュー映像もあり、これはかなりレア(私にとって)だった。
最近ご無沙汰だった谷崎読みをやりたくなってうずうずする。おもしろいんだよな…すべてを放棄して読み続けてしまうくらいおもしろいんだよ…。今読むなら『細雪』か『台所太平記』か。
ヨドコウ迎賓館

芦屋駅の山側にあるのが、ヨドコウ迎賓館。フランク・ロイド・ライトが設計した建物で、1947年に淀川製鋼所が社長宅として購入。現在は国指定重要文化財として一般公開されている。ライトの住宅にじかに入れる貴重な貴重な施設で、こちらも数年前から行きたいなあと思っていた場所。行きたいなあと思ってから実行するまでがほんと長い…。谷崎記念館とは駅の反対方向にあり、バスと徒歩でたどりつく(建物手前数百メートルはとんでもない坂なので注意)。

壁から柱から建具から…どこもかしこもひとつの美意識で貫かれていて圧巻。



夜の大阪が素晴らしかった

本当は夜に行くつもりではなかったが、いろいろしすぎて夜になってしまった、グラングリーン探訪。そしたら大阪駅周辺のビル群の照明がどこもかしこも美しくて、これはこれですごくよい体験だった。東京で見慣れているはずなのだが、「えーっ、すごい」と声をあげてしまうほどきれいなのだ。よーく見ると、ビルのテナントも無印とかユニクロで、全国どこでもある店ばかりなのだが、遠目で見るとなんかすごく素敵な店ばかり入ってるように思えてくる。


ビル群の合間に大きな公園(広場?)があるのがグラン・グリーン。夜もけっこう人がいる。

じゃあ駅の中も入ってみよう、と上がって行ったら、こちらもすごかった。広大なスペースがヨーロッパのよう。
ついでに部屋からの眺めも
ホテルの部屋からの眺めもよかったのだ、そういえば。

夜の闇と照明はいろいろ隠してくれるんだなあ…。
塩田千春展 つながる私(アイ)@中之島美術館
で、最終日はついに最大の目的である展覧会へ。

塩田さんのインタビュー映像を見たのだけど、失礼なのだが、雰囲気や話してることはごく普通なんだよな…。これを思いついて実行する狂気は、一見、全然ない。そこがまたすごい。若い頃の映像昨品も展示していたのだけど、バスタブのなかでひたすら泥を浴びるっていう…(「バスルーム」1999)。肉体的に相当苦しそうなこの作業をやるには、自分のなかでかなりの”やらねばならない”確信が必要で、こんなものを抱えている人なのか…と戦慄。ちなみにこれは”洗っても拭いきれない皮膚からの記憶”を表現しているのだそうな。
アートに触れるといつも思う、現実的なメリットから遠く離れた作業を、膨大な時間とお金と労力をかけてする、そしてそれを世に問う、ことのすごさを改めて実感する。タイパコスパどころの話じゃない。そんなことを「やらねばならぬ」と思いこむ確信はどうして、どこから生まれてくるのだろう



グッズもおもしろい

「人とつながる」というテーマがわたしには重すぎるので、ここに関してはあえて深く考えないようにしている……。
ついに食べた551

ついに買った。ついに食べた。551の豚まん。こちらも15年ごしの念願だった(まあ通販すればいいんだけど)。空港で保安検査を終えたあと、お土産屋にいくと蓬莱があるけど551はない。あれ? これじゃないよね? 両者は別者だとここで初めて知る。551のショップはゲート外にあると知って、まだあと40分ある! と駆けつけた。ガードマンのおじちゃんに「出れるけどまた保安検査せなあかんで」と言われるが、近道を教えてもらって走る。まあ余裕だろうと思ったらすごい行列で、「ここからだいたい20分待ち」の立て看板のところからスタートし、はらはらしながら買った。帰りは全力で走ってまた保安検査。ふー。
家に帰って漫画『きのう何食べた?』11巻においしい食べ方が載ってたことを思い出し、参考にして温めて食べる。(でもソースはつけなかった)
おいしかった。あんが全然ジャンクじゃないやさしい味付けで、こういうものって濃い味になりがちなのに偉いなあ、などと思いつつ、3日かけてふたりで5つ食べた。
やっぱり、うまいものは関西なのかな? 一度住まないといけないのかな? でも住んだら上手に関西弁がしゃべれなくていじけそう…など、いろいろ妄想して寝たら、数ヶ月ぶりに爆睡できて感動した。
そんなに疲れてたんだ、というほどの熟睡っぷりだったのだが、いつものように目が痛い肩が痛い首が痛い吐き気がしてきた……という一連の症状が出ず、1年以上やってる筋トレの成果を実感した次第。
「疲れている」ことと「疲労感がある」は、どうやら違うものらしい。
これはすごい発見である。