冬の、晴れの、立山連峰を見たくて

今年の正月明け、ふいに、強烈に、立山連峰を見たくなり。
この街なかから、どーんと見える山々の眺め。晴れた冬の日がとりわけ美しいらしい。しかし富山の冬はほとんど曇りか雨か雪で、晴れは少ないという……。これは前もって日程は決められない、直前に天気予報を見て突撃するしかない。で、毎日天気予報を眺めていた。そんななか、1月の第三週の週末がめちゃ晴れるらしいと予報が! おお! と荷造りしかけたけど、この週末はマンションの理事会と庭掃除ががっつり入っており、断念………。フォローし始めたばかりの富山関連のツイッターが、次々に「今日は素晴らしい眺めです!」と絶景写真を連投していて、地団駄を踏む週末。くやしかった…………。
で、当然そのままよい天気は続かず、曇りが続き、そのうち雪も降ってるし…とイライラしてたら、どうにか3日間晴れそうな日が出てきて、新幹線や宿を予約する。しかし、こういう天気勝負の旅行だと、早割とか全然使えないから非常に贅沢だなあ。
初めての北陸新幹線に乗って、いざ富山。
今回の旅のお供は藤子不二雄の『まんが道』。「富山に行きたいんだけど」というと、夫の第一声が「富山! じゃあ『まんが道』読み直さないとな!」。
そう、富山県高岡市は藤子不二雄A&F両者の故郷であり、彼らの自伝である『まんが道』の半分の舞台は富山県なのである。残り半分は、もちろん漫画家たちの館、トキワ荘のある東京。
私はまともにこれを読むのは初めてである。なかなか古い漫画で、さらに最初の舞台設定は戦後すぐなので、今の感覚とそぐわないところもある。
物語内のナレーターの多くに”!”がつくとか。
「満賀道雄は上京を明日にむかえててんてこまいの忙しさだった!」
すぐ慣れたんだけど、最初は違和感すごかったな…。あと、これを主に描いていた藤子・A・不二雄の人物画の特徴、登場人物が繁茂にウインクしてる、目を痙攣させる、とか。どういう感情なのかな? と最初はとまどった……。これはすぐには慣れなかった。

今描いてて思ったけど、2コマの背景、押入れがつながっててすごい
あと、子どもやおじさんおばさんの絵は達者なのに、女性だけ、アシスタントが描いてるのかな? というくらいいきなりドヘタになる(失礼!)なるのも衝撃的で、両目の高さが合ってない、とかそういうレベルである。実は主人公の満賀道雄(まがみちお=藤子・A・不二雄)は結構盛んに恋愛して、かつ、そのうちの一人が自殺するなど、生々しい事件も勃発するのだが、その女性たちの絵が下手すぎてまったく生気がないので、なんとも不思議な後味をもたらす。まあ、これだけ必死に漫画描いてたら女の人とじっくりつきあう暇なんてないよなあ。後のインタビューで、先生は「8割真実」と言っていたので、2割はこの恋愛パートなのか?
…とはいえ、それらの違和感など簡単にふっとぶほど、肝心の物語がおもしろくて、ものすごい勢いでページを繰ってしまった。さすがの「読ませ力」とでもいうか、巨匠、すごい。故郷高岡市、就職をする富山市の描写もめちゃ丁寧で、観光案内としてもいける(なので旅行時に読んで正解)。 歴史的資料としてもかなり有意義なのでは。満賀道雄が富山市の新聞社に就職し、高岡から富山まで毎日40分かけて通勤するくだりとか、要するにただの汽車通勤なのだが、ここがすごくよかった。見慣れた車窓から見える家々に、いろんな人の生活に思いをはせる、この時間がとても好きだ、などと書いてある。二十歳前後の、2つの仕事(新聞社のイラスト描きと漫画家)に追われた青年なのに、この心の余裕はなんなのだろう。

なので、わりとあっという間に着いた。

写真から人物を消したら心霊写真みたいになっちゃったけど…
そもそも数年前、ANAマイル修行で富山に来たときの印象が、ものすごくよかったのである。それでもう一度来てみたいと思っていた。まずこの駅前がよい。広々として見通しがよく、きれいで、路面電車が走ってる。空港からこの駅に向かう道もなんてことないけどよかったな。
日帰り旅行で3本記事書いてる………。
富山駅からはあちこちの方面に路面電車が出ていて、これはそのホーム。富山は電車が発達しているいわゆるコンパクトシティ。地方都市だけど必要なものは全部揃っている。


昭和そのもの、みたいな古い路面電車に乗り、


夕暮れの富山城のわきを通りつつ。
駅前だけでなく、どこもかしこも歩いていてなんとなく気分がいい街である。
初・ドーミーインの御宿 野乃シリーズ

最強ビジネスホテル、ドーミーインの和風旅館シリーズ、御宿 野乃。これも前回来たとき通りかかって、気になっていた。いつか泊まりたいなーと思っていて、今回ようやく。
御宿 野乃の特徴は全館畳敷きということ。部屋はもちろん、廊下なども全部畳なのだ。とくに和室、畳にこだわりない自分ですら、館内に入るとどこもかしこも靴なしで歩けることの快適さに驚く。気持ちがいいのだ。日本人ゆえなのか? さらに、この富山の御宿はドーミー唯一(!)の客室ヒノキ風呂である!
dormy-hotels.com
コンパクトな部屋に詰め込めるだけ機能を詰め込む

極狭な空間でもくつろぎと仕事エリア、両方叶えるためのソファセット。眼の前にはテレビが有り、冷蔵庫。よく考えられているなー。惜しむらくはソファがへたりすぎていた。腰に悪いほど、へたっていた………。
ベッドサイドには時計、調光スイッチ、コンセント、飲み物や文庫本を置けるスペースがある。ベッドサイドとして完璧。




かごがかわいいのもよかったが、靴下が! 靴下が入っているではないか! すごい。だって「全館畳ということは…」と思って、スリッパがわりの靴下、持参していたのだ。そしたら用意されていた。なんということだ。

ドーミーのいいところ、パジャマにもなる部屋着で館内がうろうろできること! そしてこの部屋着が機能的(着やすい、肌触りよし)なこと。

一番安い16平米でバスタブなし、の部屋にしなかったのは、すでに満室だったからである。くそー、まあ仕方ない、とこちらにしたのだが、大正解だった。大浴場まで行くのが面倒なとき、部屋で、ユニットではない温泉につかれることがこんなに快適だったとは。極狭なのに、めちゃくちゃいい体験だった。

たしかリファだったと思うのだが、ミストだのマッサージだのいろんなシャワーが出てくる。これが気持ちよくて朝も夜も入った。

というホテルあるあるの現象がここでは起こらない!
さらに感動的に便利だった。この押すだけで風呂が湧くボタン。
極狭な部屋なのに玄関と部屋が引き戸で仕切られている。

そういう防音ドアなんだそうだ。

前回もドーミーでナノイードライヤーを使って、「あれ? ほんとにいいのかな?」と思ったけど忘れてた。とにかく全く信じてなかったので。今回使ったら、髪が驚くほど落ち着いて、あ、これ、ほんとにいいんだ、と確信して、帰ったらすぐ買った。ずっと髪がまとまらない、でも毎日シャンプーしないから整髪料を使えない日がある、というのが軽い悩みだったのだ。お気に入りの整髪料が発売中止になって、それにかわるものが見つけられないというのもあった。これがあれば整髪料がいらない。
ま、それでナノイードライヤーについて初めて調べたら、今は最高級品が6万円、そうでなくても3万くらいする、と知って愕然としたのだが……。3万も高すぎる気がして、2万のやつを買った。海外でも使えるやつ。買った直後、「ドライヤーに6万円払う奴は云々」という論争もXで読んだ。まあ、驚くよね…。ドライヤーだよ? 2万数千円のやつはじゅうぶん働いてくれてます。
夕食は眼の前のデパート、ダイワの地下で買った寿司
御宿 野乃は、富山駅のショッピングエリア、総曲輪(そうがわ)にある。眼の前がダイワというデパートで、この地下に行ってみる。

さすが富山、寿司コーナー、魚コーナーがめちゃ充実していて、とても手ぶらじゃ帰れないとなったので、ここで夕食を買う。なにしろ閉店間際で半額だったのだ。最初見たとき30%割引だったのが、一周して帰ってきたら半額になっていたのだ……。寒ブリ握りも相当おいしかったが、左上、甘エビの昆布締めが出色。甘エビと昆布がシート状になっている…というなんとも説明したがたいもので、初めてなのでおそるおそる口に入れてみたが、「! おおお!」と声をあげてしまった。おいしくて。
そして朝食

とくにおいしかったのが左端、お盆の外にある(なぜこんなに切れているのだ…)たら汁。いわゆる漁師汁なのだが、よくある海の味、にさらになにか新しいうまみが加わっていた。なんだろう。すごくおいしい。
が、弱点もあった
そんな最強のドーミーインなのだが、つらいこともあった。なんと窓のすぐ外ににある信号が青になると、ピッポピッポとなる、あれがねえ……なかなかつらかった。とにかく数分おきになるので、長時間部屋にいたらかなりつらいと思う。あれだけ防音しているというのに、廊下や他の部屋の騒音は防いでも、外の信号音には太刀打ちできていないのだ。私の部屋は4階だかだったので、なおさらか。上階なら大丈夫かもしれない。ここだけ要注意です。
…というわけで、宿について書いてるだけでここまでの文字数に…。長々とありがとうございました。つづく。