独楽ログ〜こまログ〜

50代、女性、日本人、がひとりで毎日楽しくすごす方法を検証、実践、そして記録。

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スペイン旅行記 その22 サラゴサ、スペイン地方都市の底力を知る

やはりここでもシャッターが…

 

 ムデハル様式のアルハフェリア宮殿と聖母ピラール教会が名物の古都…というふれこみのサラゴサだけれど、近代的な駅に、その周囲はがらーん、となにもなく、バルに向かってタクシーに乗ってみると、スーパーや団地など、ごく普通の郊外都市という印象しかわかなかった。まあ、とにかく極寒&そぼふる雨という悪条件なので、景色も自然としけって見えてしまうのだけれど。

 それでもだんだん店や人が増えてくるエリアに入ってくると、なにやら楽しげな雰囲気に。「ここだよ」的な合図をされて降りて、ぐるりと見渡してみたら、目当ての店はシャッターが降りている………。

 ショック。大ショック。この寒さでこんなところで降ろされて(ていうか降ろして、と言ったのは私らだけど)、店がやってないなんてー。9時開店のはずなのにー(現在9時半)。簡単には諦めきれず、ドアの隣の小さな窓に顔をくっつけてのぞきこむ。すると、中ではおじさんやおばさんが働いている…。もう少ししたら開くということなのだろうか。

 ふたりで顔をガラスにくっつけていると、おじさんが気がついて何か言っている。私は「駄目?」の意味でバツ印を指で作って尋ねる。おじさんはバツとも丸とも言わず、他のスペイン人同様、とにかく叫び続けている。そのやりとりを続けたら、シャッターを開けてくれた。時計を指さしたり、バツ印や丸印を作ってコミュニケーションをはかると、どうやら店は11時オープンのよう、とわかる。オフシーズンだからなのかな? でも、おじさんはカウンターを指して座れ的なことを言う。

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⇧これはシャッター開いたあと。

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 私たちはぺこぺこしつつ、席に座る。メニューも水も出てこないけど、目の前のガラスケースなどにずらりとおいしそうなものが並んでいて、きっとこれを頼んでもいいのだろう、と判断。

 私たちのちょうど目の前にいたおばさんは、露骨に嫌そうな顔で、むっつりとしてひたすら作業しているが、オーナーらしいおじさんがいいと言ってるからいい、と心を強くして何を頼もうか考える。

 

 ちなみにこの店は「celvino」という店なのだけど、いくつかの記事で「間違いない」と書いてあり、しかも朝9時からやっている&このあと行くアルハフェリア宮殿に近いということで選んだ。記事にはこんな紹介文が。

 

場所は中心街から離れてはいますが、訪れるだけの価値はあるお店です。このバルはサラゴサのタパスのコンクールで賞を取ったこともあるお店なので、種類の豊富さだけでなくタパスのレベルも間違いありません!

オーナーはスペイン語がわからなくても、親切に対応してくれます。アルハフェリア宮殿を訪れるなら是非こちらのお店に立ち寄ることをオススメします。

 

ムイビエン、あるのみ

 とにかくおいしそうなものを指さして、次々頼む。

 

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 ツナのステーキ。こちらの人は魚介にすぐ芋を合わせる。そしてにんにくと唐辛子(たぶん)のソースを合わせる。それが最高だ。びっくりするほどおいしくて、どうしていいかわからなくなる。おじさんが、どうだ?というので、ムイビエン、ムイビエン、と繰り返して大きくうなずく。たぶん、気持ちは伝わっている。

 

 その後、なんだかわからない甘い味付けが絶妙のエビの串刺しとか…もうこの写真だけでも、うまさがしたたっているのだが…。

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 きのこマリネとか

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 結局最後までなんだかわからなかった、なにかをペースト状にして型抜きして焼いて、きのこクリームソースをかけたものとか、

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 あと、頼んでないけど、「これも食え」と出された、パンコントマテ(トマトを塗りたくったパン)に豚肉のソテー、さらにおそらくフォアグラ、うずらの目玉焼きとか、

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 もう、すごい。

 何を食べても悶絶するうまさ。こんなごく普通に愛されて、ごく普通に営業しているだろう小さな店で、こんなレベルのものが食べれるなんて。なんということだろう。オーナーなんてもう、エプロンすらしてないし、一見ごく普通の、ごく気のいいおじさんにしか見えないのに。我々はただ、うまい、すごい、ムイビエンとだけ唱えて、ひたすらに食べる。

 

お客さんからも目が離せない

 そのうち、常連さんたちがやってきて、立ち飲みし始めた。オーナーもワインがぶがぶ飲みながら、会話に加わる。まるでアフター5の光景だけど、実際はまだ午前中なのよね…。彼らのうちのひとりは、スペインで見たふたりめの背広姿の人ではあるのだが。みんな仕事は…??

 

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  さらにひとりで入ってきたおじいさん。食べてる姿がかわいらしくて、目が釘付け。なんだろう、仕事の途中なのよね…。なにかを配達してるのかしら…。なんの根拠もないけどなにかの配達人のような気がしてならない。

 クリームソース的なものがかかった芋に、パンをつけて食べている。 このとき糖質オフが私の気になっているタームだったため、「なんというハイカーボな食事なのだ」と心配だ。 ワインも飲むのがスペイン流。

 注文の仕方からして明らかに常連なのだが、オーナーとも、他の常連ともきやすく口をきいたりはしない。無口。心なしかさみしげに見えるのが、たまらない。

 

スペイン人のスケジュール

 

「スペイン人は9時に出社するとまず、みんなで朝食に行く。それから11時に軽食をとって休憩して、14時からランチ。たっぷり2時間くらい休むから、彼らにとって「午後イチ」は16時半をさす。仕事は6~7時くらいまでで、夕食は8時でもはやくて、10時からが普通。彼らは、“これ以上は働かない。だって働くために生まれてきたわけではないから”と言う」

 …というようなことを、スペイン在住の高城剛さんが書いていたなと思い出しつつ、彼らをしみじみと眺める。

 

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 おじさんをつまみに満腹になるまで食べて、「もういい」とオーナーに手のひらを広げて示して、終了。おじさんは、一皿ごとに「どうだ?」と聞きにきて、そのたびに私たちは、大きくうなずき「ムイビエン!」と言う。そうすると、オーナーはうれしそうに笑って、また向こうへ行く。これが楽しかった。

 

 会計を終えていよいよ帰ろうとすると、握手を求められた。私だけ…。なんだろう。なにかが認められたみたいだ。「俺たち、お互い言葉もわからないのにやったな!」みたいな感じだろうか。思い切り握って、感謝を伝えて店を出た。味からなにから、こんなにいい思いをする食事って、なかなかないものだ。外は相変わらず冷たい雨だけれど、もう全然気にもならない。

 

お茶を飲んで、今食べた素晴らしいものたちの反芻。かわいいカフェだった。

 

遺跡もちゃんとまわった

 おいしいものを食べて興奮状態になった私たちは、雨も寒さもものともせず、歩いてアルハフェリア宮殿へ向かう。ごく普通の郊外都市っぽいこの街にそんなものが?と不思議だったのだが、地図の通り壮麗な宮殿が見えてきた。圧巻の美しさ。

 

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レコンキスタ終了後の15世紀以降にも、スペインに残ったイスラム系の人々によって作れたものをムデハル様式というようです。

 美しくて、同時になんというか、牢獄のような息詰まる恐ろしさもあり、それは流れた血の量を想像するからだろうか? お城ってそういうものなのだろうか…、いや、そもそも古いものって、そういうもの?…などと思いながらなかを見物。

 

聖母ピラール教会へも

 宮殿を見終わっても、まだ昼すぎ。マドリードへ行く列車は3時すぎ発。夫は足の痛みと寒さでギブアップ、駅の待合室(さすがにここは暖かい)で待っているというので、私ひとりでタクシーに乗って聖母ピラール教会へ。タクシーに乗るたびに「謝謝」と言われるので、「ノー。ハポネス」といちいち訂正する。しかしみんな、こちらが言葉わからないとわかってるはずなのに、一生懸命しゃべってくれて、親切なのか、単なるおしゃべりなのか。楽しいからよいですが。

 

 聖母ピラール教会は撮影禁止。古くて暗くてもちろん美しい教会でありました。子供の頃から近所にこんなものがあって、そこに自動的に通わされて、説教を聞かされていたら、それはもう自動的に信じるしかないよなあ、と素直に思わせる、宗教のあらがえないパワーをしみじみと感じさせる教会だった。サグラダ・ファミリアとはまた全然違う…なんだろう、凄み?みたいなものが静かに充満していた。

 

  門前町(?)もぶらぶらして、駅に戻ると、電車の時間。

 さあ、ついにマドリードです!

 

 

 

スペイン旅行記 その21 オンライン英会話の意外な効用とサラゴサの駅

サラゴサの日

 

 バルセロナ最後の夜。快適で安くてほくほくだったBホテルのお風呂をためようとしたら、赤い水が出てきた。がーん。建物古いってみんな書いてたから、こんなところでツケが…。しかし、色が消えるまでお湯を出して、あとはよしとする。アフリカで泥水のシャワーを喜々として浴びていたキョンキョンを思い出して、私も喜んで浴びる。

 フロントに電話して文句を言うような生活はもうしないのだ、うん。

 

たしかに英語は上達していた。と思う

 バスルームのライトが消えかかっていて、ちかちか点滅すること、赤水が出たことをチェックアウトのときにフロントに告げる。しかし「バスルームのライトが点滅する、たぶん切れかかっている」という簡単な英文が通じない。そのときフロントにいたのはふたりだったのだけど、ふたりともきょとんとしている。おかしいなあ、と思って、ゆっくり、はっきり、繰り返したら、わかってくれた。

 このとき私はオンライン英会話の威力を思い知った。通じなかったのに? いや、そこではなくて、通じなかったときに、私が全くパニックに陥らずに、「この人たちは英語があまりできないからわからないのだ。しょうがない。もっとはっきり発音しよう」と、ごく自然と上から目線が沸いてきたことである。そこには「この英文は絶対正しいのだ」という自信があったというわけである。だから言い回しを変えたりせず、同じ文章を繰り返した。

 誰とも会話せず、ただ長年英語の勉強をしてきたときには、これはなかった。実際現場で使って、少しでも意味不明な顔をされたら、もう冷や汗が出てパニックになり、あとはさらにしどろもどろになって会話崩壊、というのが常道だった。しかし毎日50分、フィリピン人と会話していたら、自然と今、自分の話している英語が、どのくらい正確なのかわかるようになったのだ。毎日、「これ、通じる? あってる? あ、この言い方はいいのね?」と確認しながら会話していたら、その感覚が自然とつかめるようになった。

 通じなくても全く動じない自分にかなり驚いた。こんな意外な場面で物事の成果というのは確認できるものなのだ。

 

バルセロナサンツ駅

 そんなこんなを経て、出発。バルセロナ・サンツ駅7時すぎ発のAVEに乗らなければならない。格安チケットだから変更不可。真っ暗な夜明け前の街にスーツケースをひきずって出る。サンツ駅はとてもでかくて、楽しそうな店がいろいろとやっていた。サンドイッチデリ、カフェ、マクドナルドに生ハム屋(ここはクローズしてたけど)まで。ちなみにこちらのマクドナルドにはクロワッサンがある。

 

 

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 ヨーロッパのサンドイッチというのはどうしてこんなにおいしそうなのだろうか。食べたくてたまらないが、サラゴサでの食事でがんばりたいので、ヨーグルトでこらえる。でもこのヨーグルトがめちゃめちゃおいしかったのだが。濃厚、まろやか。しみじみうまい。やっぱり乳製品はヨーロッパにはかなわないのかなあ。

 

 バルセロナからマドリッドまで600kmくらいあるので、じゃあせっかくだからどこかで降りてみようということになり、真ん中のサラゴサにしてみた。世界遺産の教会や宮殿がある古都。という情報しか得られず、まあ、ぶらつくかあ、と思っていたのだけど、これも突然出発直前に、「いや、もっとなんかあるだろう、見どころ、食べどころが!」と思い立って、しつこく検索したら、「サラゴサはおいしいバルで有名な街」だとのこと。ほらやっぱり! なぜ今までの検索(結構してたんだけど…)で出てこなかったのか。

 いくつかのブログやtrip adveiserを読み込んで、ここはうまいでしょ!という店をピックアップ、着いたらここへ行き、午後2時すぎにはあちら…と目星をつける。ランチの店は人気店らしく、予約を受け付けていたのでメールを書いてもみた。返事はこなかった…。一生懸命辞書をひきひき、スペイン語で書いたのに。やはりド頭の「Hola!」を「Holla!」と間違えたのが効いたのかな…。かなり長く書いたのに、無視されてとても哀しい。

 まあでも、おいしそうな店はいくつもあるので、代案はいくらでもあるので、あまり気にしていなかった。

 

AVEって快適なのだ!

 飛行機に乗るように荷物検査をしてAVEに乗り込む。思ったより快適で驚く。車内もそこそこ広いし、新幹線のようにすーっと走るし、なんというか、すごく乗り心地がいい。隣では背広姿のお兄さんがずっとPCを広げて仕事していて、スペインで背広姿の人って、初めて見たので新鮮。やっぱりいるのか、勤め人も。当たり前か。でもこの国には食べ物や飲み物を楽しげに出すおっさんしかいないのかと思っていた…。

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体感温度を下げまくる広大なサラゴサ

 サラゴサ駅に着いたら、ロシアのように寒かった。雨と雪がちらつく、今回の旅行で最も寒かった日。そういえば昨夜のテレビでも「ここにも雪が! あそこにも!」と非常事態っぽくニュースでレポートしていたっけ。いや、それにしても寒い! このもともとの寒さを、とてつもなくでかいサラゴサ駅構内が、体感温度5℃くらい下げていたと思う。

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 改札を出て、なにしろまずはスーツケースを預かってもらう荷物預かり所に行かなければいけないのだが、これが改札と真反対の端っこにある。⇧この写真の、一番はしまで歩くのだ…。

その距離が長いよ、とは事前リサーチですでにわかっていたのだが、それでも驚きを隠せないほどの距離だった。

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ドームスタジアム並にでかい天井。滑走路を思わせる延々と伸びる線路。こんな空間を暖房で暖められるはずもなく、もうひたすらに寒い。しかも広すぎて寒々しいのだ。大げさでなく、このまま凍って死んでしまうのかも、と思った。そこを、スーツケースをひきずり、黙々と歩く。目的の「改札反対側」は見えているのだが、歩いても歩いても歩いても着かない。砂漠のよう。氷の砂漠。

 建物のスケールの違いは欧米で感心することのひとつだけど、これもまたそうなのであった。

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⇧天井がこれまたかっこいい。

 

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⇧全景。この建物すべてが駅。奥の奥の奥まで続いている…。

 

 あとでタクシーの運転手に聞いたところによると(なぜ解読できたのは、今思うと不思議。こちらがエスタシオン(駅)…ムーチャス…グランデ…と呟いたら、いろいろ教えてくれた)、サラゴサは、マドリッドバルセロナなど、スペインの主要都市から等距離にあるという街で、ハブステーションらしいのである。だからRenfe(スペイン国鉄)も気合いを入れて駅を作ったらしい。だからといってこんなに大きくある必要があるかどうかはよくわからないのだが…。

 

スーツケース預けるのも一苦労 

 ようやく着いて、この瞬間のために覚えてきたconsigna(荷物預かり所)という単語を呟いて探す。広いから簡単には見つからない。ついに見つけたら、そこは鍵のかかった小部屋だった。無人。ガラス張りのドアの向こうに、ずらりと並んだコインロッカーが見える。

 インターホンに、「荷物を預けたい人はこれを押して、誰か来るのを待ってください」的なことが英語で書いてある。

 押してみるが、なんの応答もない。寒いよ寒いよ、と言いながら、押し続ける。そのうち誰かが出て、まったくわからないスペイン語でなにか言って、がしゃりと通信終了。きっと来てくれるんだよね……と信じながら、またしばらく待つ。うー、なげえ。寒い。

 しかし、銃を持ったガードマンがついに現れ、小部屋に入れてくれ、なんとかスーツケースから解放された。ほんとよかった。

 

 身軽になった。では、朝ご飯を食べに行こう。ここは9時からやってるらしいよ。世界遺産のアルファフェリア宮殿の近くで、でも駅からは少しあるからタクシー。  と、活動開始。でも外に出たら氷のような雨がしとしと降っていて、やはり猛烈に寒くて、捻挫が日々ひどくなる(当たり前か。歩いてるんだから)夫とともに、散策どころじゃないなあと意気消沈…。まあとりあえずご飯だよね、とタクシーに乗って、一生懸命住所を伝えて走ってもらった。

 

 そしていよいよこのあと、この旅でもっともおいしい食事をすることになるのであった。 

スペイン旅行記 その20 〜バルセロナ3日め、 モンジュイックの丘とcal pep

モンジュイックの丘へ

 

 午後は再び夫と、モンジュイックの丘にあるジョアン・ミロ美術館へ。普通はこの丘へはフニクラ(ケーブルカー)で行くのだが、スペイン広場からバスが出ているというので、それに乗り、えっちらおっちら山を登る。

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 美術館に入場するとき、バルセロナカード(交通機関や美術館が無料になったり割引になったりする有料パス)で無料だと思っていたら、2日間パスでは2割引にしかならない、と知らされ、つまりこのあと行こうと思っていたカタルーニャ美術館も無料ではなく2割引なわけで、かなりショックを受けつつ入場。

 

 バルセロナカードとは、3,4、5日間のことをさすのであって、2日間券はバルセロナカードエクスプレスであって、別物である。

 

 という大事な認識を得る。

 

 丘の上にあるこの美術館は広々と、そして真っ白な、気持ちよい空間。かなりリゾート気分に浸れる。

 

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学校で見学に来ていたらしい子供たちと遭遇、日本人が珍しいのか、一斉に振り返ってざわざわしだし、「コンニチハ」「コニチハ」と誰もかれもが言い始めて、頭を下げたり両手を合わせたりする。子供たちがとてもうれしそうなので、なぜ?と思いつつ、こっちもうれしくなり、こんにちは! さようなら!と挨拶。

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⇧でか……。原画を描いたミロよりも、これを編んだタペストリー作家(名前失念)の作業時間を思って目の前が…。

 

 その後寒風に吹かれまくりながら(結構つらい)、丘を徒歩で降り、カタルーニャ美術館のとんでもなく大きな外観を眺めたりしながら、ホテルへ。

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名物バル、cal pepへいざ

 「観光客だらけの、いわゆる有名店だが、しかし味も素晴らしい」とバルセロナウォーカーで断言していたので、ぜひ行こうと決めていたバルが、cal pep。夜は7時からだが、開店前に並んで必ず最初の回で入店できるようにしなければ、あとはその最初の客たちが食べ終わるのを外で待ち続けなければならないという。バスに乗って、ずいぶん早く出る。夜はなおさら寒い。1分だって外で待つなんてしたくない、という真冬の夜である。そして夫は負傷している…。

 用心しすぎて開店30分前についてしまった。シャッターは降りて、周囲には誰もおらず、「休み!」と狼狽。がーん。こんなとこまで来たのに…。名物のトルティーヤ、食べたかったのに…。と思っていたが、「いや、店のなか、灯りついてるよ?」と夫。「これから開くんじゃないの?」 そうか…そうかもしれない。だけど店の周りには人っ子ひとりいないけどなあ…。「開店前から行列」なんて嘘じゃないか…。ほぼ諦めつつ、周囲のスニーカー屋や洋服屋などに出たり入ったり眺めたりして、時間をつぶす。ここも旧市街でとても雰囲気のよいところだけど、いかんせん寒すぎる。

 開店10分前。もし店がこれから営業するのなら、並んだほうがいいということで、誰もいなくて恥ずかしいけど、並んでみる。そしたら、それを合図にしたかのように、人がどこからともなく集まってきた! なんだこれは。

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⇧並んでたら、おっさんが出てきて開店しはじめた。

 

 

  来るのがあと数分遅れたら、列の後ろになってた。ひゃあ~、危ない危ない。ほどなくして店のシャッターがあいた。中ではたくさんのおっさんたちが、がしがしと料理をしたり支度をしていた。休みではなかったのだ。

 無事、カウンターの一番はじに座れる。「とにかく黙ってこれを頼んでいればいい」とバルセロナウォーカーに書いてあった、ししとうの素揚げ、あさりの蒸し煮(かな?)、トルティーヤを頼む。カウンターは開店直後にもうぎっしり、で人気店ならではの活気。ああよかった。無事来れて。無事座れて。

 

 で、料理が来た。写真と同じ。おいしい。おいしいけど、普通においしいというか……。衝撃がなかったというか…。つまりいうと、「まあまあ」だったというか…。バルセロナウォーカーの、見事な説得力の文章で、この店のこのメニューがいかにおいしいか、二度三度と繰り返し読んできただけにちょっと拍子抜け。これが、疲れ切って、どこに入っていいかわからず、もうはずしてもいいよ、とにかく座ろうよおなかすいたよ、なんて状況でのことだったら、たぶん「うわあ、おいしい」とかなり満足したのだと思うけど、とにかくハードル上げて来てしまったもので、「……あれ?」感が強かった。

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 しかも4皿目、おすすめされて頼んだカルパッチョが全然やってこず、なのに、それらしい皿がずっとおっさんたちの後ろに放置されていて、「あれは私たちのではないのか?」「なぜ出さないのか?」「なにを待っているのだ?」「我々はすでとうにすべての皿を片付け終えているのに?」と疑心暗鬼でぱんぱんになり、結局、とくになんのきっかけもなく、ふとおっさんがその放置された皿を私たちに差し出してきて終了したのだが……なぜあんなにためていたのかいまもってまったく不明。

 

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⇧やっときたカルパッチョ。まあ、おいしい。普通に…。

 これが、食事よりも酒を重んじるカップルだったら問題なかったのだと思う。逆に「あんまりさっさと料理を出されると、追い立てられているようで嫌」とすら、思うかもしれない。けれど、私たちは、「料理はできたてを、すぐに食べなければいけない」という価値観で一致した夫婦であり、どんな食事でも、皿が来たらヨーイドンでとりかかり、だいたい20分で食べ終わってしまうスピードカップルだったのだ。おしゃべりに夢中で来た皿が半分しか食べられずにそのまま放置、などという状況が許せないカップル。ディナータイムに2時間用意されても、40分ですべてを終えて、時間をもてあましてしまうカップル。くつろぐのは、完全に食べ終えてからでいい、まずは食べ終えなければ、と信じているカップル。

 そんな私たちに、あの謎のアイドルタイムはなかなかの衝撃だった。足の痛みと、思ったほど味に満足できなかったことで軽く不機嫌になり始めた夫に、けれど隣のイギリス人夫婦が話しかけてきて、「夫はオックスフォードの数学の教授で、しょっちゅう研究会でここに来るのよ、私は子供が3人いてね…」などの話を聞いて、ちょっとなごんだのはありがたかったが。人なつっこくてかわいいおばさまだった。「とってもいい街なの」と何度も語っていたオックスフォードの街を想像したりした。

 

まあだからとにかく、

 

 料理のハードルを上げすぎると不幸

 

 というのが、cal pepで学んだことなのでした。

 

スペイン旅行記 その19 〜バルセロナ3日め、グエル公園とニノ市場

バルセロナ3日め

 

 バルセロナ最後の日(正確には出発は明日早朝だけれど)。グエル公園、ニノ市場、グエル邸、ジョアン・ミロ美術館、カタルーニャ美術館カタルーニャ音楽堂と、観てないものがまだまだあるのだが、捻挫した連れ合いがいては、とても無理。しかも「少し仕事がしたい」などとも言う。

 思い切って少数に絞り込む。とにもかくにもグエル公園ジョアン・ミロ美術館、ニノ市場だけは行きたい。あとは時間があれば…で諦めよう。うーん。くやしい。はがゆい。なぜもう1日増やさなかったのか…。もう二度と来ない可能性が高いだけに、簡単には諦めきれない。次こそ、旅行の日程は「多すぎない?」くらいで組もう、と固く誓う。

 

 バルセロナの観光施設の入場料はやたら高いので、朝8時半までに入場すれば無料というグエル公園はぜひこの時間に行きたい。タクシーで20~30分かけて夜明けのほのぐらい街を、8時到着目指して向かう。日の出は8時15分だから、まあ8時ならそれなりには明るいだろう、という計算。

 グエル公園→ニノ市場(mecado del Ninot)で朝ごはん→一旦ホテルへ戻る→夫は仕事→午後、ジョアン・ミロ美術館→カタルーニャ美術館(ミロのすぐ近くなので時間あれば)という行程を組む。朝ごはんは、市場まで我慢。夫が近くの乙なカフェで搾りたてのオレンジジュースとバナナ、コーヒーを買ってきたので、あとは荷物にまぎれていたスナックなどでしのぐ。ホテルのビュッフェ以外、手近な朝ごはんスポットというものがないんだよねえ、ほんとに…。そもそもほとんど店が開いてないし。

 

 しかし唯一開いていたこの地元民専用的なカフェはしぶかった。たむろが目的で、味は二の次的な雰囲気なのに、ジュースはその場で絞るというのがさすがスペイン、なのだろうか。タイルの美しさ、おっさんたちがかもす魅力もさすがスペイン。

 

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まずは早朝グエル公園

 夜明けのグエル公園。この日も気温2℃とかで猛烈に寒かったけれど、やはり天気はよくて、実に美しい! アジア人観光客がけっこういたのは、どういうことなのか。アジア人は無料にとびつくということか。アジア人は早起きなのか。それとも単にアジア人観光客の数が多いのか。

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 バルセロナを一望する高台で美しい眺めを堪能して、やみくもに山の上のほうにあがって散策。あとでこれが大きな失敗だったと気づくけれど、これはこれで楽しかったので、まあいいか。

 失敗というのはつまり、グエル公園の目玉、トカゲのベンチなどはすべて有料ゾーンにあって、無料で入った我々はまずここを観て、そこからゾーンを出て山を散策するべきだったのに、なんとなく足が赴くままに山へ行ってしまったのだ。気づいたら八時半をすぎていて、有料ゾーンにはもう戻れなくなっていた。まあ遠くから眺めたけど…。しかし、さしてくやしくもならなかったのは、この場所がなかなかよかったからである。街の眺め、美しい日の出、山歩き。ガウディの作ったダリいわく「砂糖菓子のような」建物たちもある程度は見れたし、まあ、いいでしょう。とするしかないでしょう。

 

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⇧素晴らしいミモザも見れたし。

 

 よくなかったのは、「じゃあバスを乗り継いで市場へ行ってご飯を食べよう」というときになって、私がバス乗り放題パスを忘れたこと。それでなくても空腹なので、夫は怒った。そして私が、毎回旅行で「乗り物パス」とか切符をなくすことまで思い出して、私を責める。えーん。そう、毎回、便利だから財布ではなくて服のポケットに入れて、そのまま翌日別の服を着てしまうんだよね…。

 しかも、厳しい寒空の下。もうしかたない、タクシーで行こうぜ、となったはいいものの、肝心のタクシーが全く見当たらない。グエル公園は町外れの山の入り口のようなところにあるので、こういうことが起きるのだ。かなりの時間、大通りとタクシーを求めて、気まずい雰囲気で歩き続けるふたり。寒いしおなかすいたし、ホテルにもパスがなかったらどうしよう、という不安もあり、なかなかきつかった。

 

 しかしようやく1~2km歩いてタクシーをつかまえてニノ市場へ着いたら、運がまわってきた。

 バルセロナでどこか市場に行きたい。でも有名どころは賛否両論で「観光客目当ての適当な食べ物を高く売る」「人がすごくて疲れる」的な意見も多く、まあ、それはそれでいいか、期待もせずに…と思いつつ、ではどこに行けばいいのかと迷い続けていたのだが、出発2日前、最後にもう一度情報を洗おう、と書店で立ち読みしたガイドブックで、ニノ市場のことを知ったのだ。

「新しくて、地元民ばかりがいて、すいていて、穴場」ということで、ここだ、ここしかない! トリップアドバイザーで調べても、酷評している人は0だったし!

 

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⇧すみません、この写真はここからお借りしました…。

 

 着いてみたら、めっちゃきれいで、すいていて、素晴らしい市場でありました。

 

 何度かぐるぐる歩き回って、どこで食べればいいのか考える。どこもおいしそうで、まったく決められない。最終的にただ直観で選んだのは、タラ(バカリャウ)が売りの店「Penello 1898」。お姉ちゃんがかわいいし、親切。英語もしゃべれる。ここでまず1~2品食べてみて、だめなら次行こう、となったのだが、むちゃくちゃおいしかったので、本腰入れて食べることにする。

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 この店のサイト、動画つきで素敵です。俺たちがどれだけ鱈を愛しているか、を思う存分見させられて、すごくいい。

 

下戸の私は、紅茶を飲む。なにしろ寒くて寒くて、お姉ちゃんに「あのー、なんかあったかいもの飲みたいんだけど…紅茶とか…。ないか。ないよね」と尋ねると、「OK」と言って、どこかへ消えて、しばらくしたら⇧の紅茶を持って帰ってきた。どうやら別の店に買いに行ってくれたらしい…。やさしいなあ。おかわりまで買いに行ってくれたものなあ。おまけにすごくかわいかったし…。イレギュラーなサービスをしてくれるのは、外国ならではだと思う。日本だと「上に聞いてから」が絶対だから。

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 お通し?的なタラの皮の揚げ物が勝手に出てきた。

 

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特製ペーパーマットも鱈。 

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⇧サンドイッチはもちろん、このポテトチップスはお手製?だよね。この厚さ。うまい〜。

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タラのコロッケ(添えられたアイオリソースがうまいのなんの)

サーディンのサンドイッチ

ピンチョスあれこれ

  どれもこれも、予想を超えるおいしさ。おいしそうで、実際すごくおいしい、というのもなかなかないものだ。

 

 そのうち、いつのまにかお姉ちゃんといれかわっていたお兄さんが、

「今日、すごくおいしいタコが入ってるけど、食べる? グリルするんだよ」と

 いうので、うんうんうん、とオーダー。

 出てきたのが、これ。

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 「うおおおお…」ふたりして地鳴りのような声をあげてしまうほど、激うまだった。まるでいつも食べてるように馴染みのある味。それでいて、食べたことない味。そういうものにこんなに遠いスペインで出会えるとは。これはもっともっと食べなくては、と食べ終わるとすぐ惣菜皿の前まで行って、あれもこれもと注文し、満足するまで食べる。

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グエル公園での冷えた関係も即修復。素晴らしいブランチでありました。

 

 

 それにしても、お姉ちゃんもお兄ちゃんも、まあ親切だった。職業として訓練されたホスピタリティとかではなくて、ごく普通の、親切。まさに「気がいい」という言葉がふさわしい。スペインではみんなこんな感じだった。だからこの旅は楽しかった。

 タクシーでもレストランでもカフェでも、決して向こうから話しかけてくるわけではなく、やたらに笑顔をふりまくこともない。けれど、なにかのきっかけで話すようになると、すごく一生懸命教え、案内してくれる。スペイン語、わからない、と言っても、無視してなおいっそう一生懸命話す。このタラの店ではふたりとも英語が上手だったのでそんなことはなかったけど、「ノーイスパニョール…」とつぶやいて首を振る私たちに、よりいっそう激しく、前のめりになって喋り続ける人たち。しかたないから最終的には、すべての問いかけにうなずくしかない私たち。おもしろかったな…。フランスではこんなこと、なかったものな…。

 

 昼前にホテルに戻り、夫は仕事すると言ってどこぞへ消えたので、私はひとりで電車に乗って、グエル邸へ。

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途中、バルセロナ一の名物通り、ランブラス通りにも立ち寄り、ここで革命のあれこれが…と本で得た知識とてらしあわせようとしてみるけど、いまいちうまくいかない。観光客でごった返した、普通の大通りだった。そりゃそうか。

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 途中、リセウ劇場などを眺めつつ、

 

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 グエル邸に辿りついたら、なんと工事中………。先に来ていた中国人の女の子が「ああああーあああー」と、半泣きで落胆。その嘆きがあまりにも激しくて、遅れた私は悲しみそびれ、「あらあ…」とだけ言った。素敵な門構えだっただけに、くやしいが、仕方ない。今歩いて来たランブラス通りを、来たのとは反対方向に散策し、カタルーニャ広場駅→ホテルへ。

 

 

スペイン旅行記 その18

今回は捻挫だった

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 ⇧旧市街、ゴシック地区。

 

「俺、足くじいたみたい」

 と夫が言い出したのは夕方近く。17時に予約したピカソ美術館を目指しつつ、その周辺の旧市街をぶらつこうというとき、ぽつりと夫が爆弾発言。

「…………」

 またか……絶望する私。これまでの経験から、なにが起きてもすぐ対処できるよう、バンドエイド、腰痛コルセット、湿布、痛み止め、下痢止めは持参してきている。が、どうも彼は毎回旅行のたびにどこか故障するだけでなく、“新しい故障”を起こすらしくて、捻挫ではコルセットもバンドエイドも役に立たない。せいぜい夜、湿布を張るくらいか。

 それにしても、バンドエイドだの湿布だのの類は、やはり日本製が使い勝手もわかるし、よくできてるしで、持参していくのがよい気がする。現地の薬局に飛び込んで、片言言葉で訴えつつ、あれこれ探すのも楽しいのだけど、だいたいこういう故障は重篤ではないけど、いますぐ手当したいものが多くて、例えば夜中に痛みが出たりすると楽しんでる余裕もなくなる。最低限の量だけ持っていってそれで応急処置しつつ、足りなくなったら現地であれこれ見ながら探すのがいい、のかな?

 

 こんなに故障ばかり起こすのは、私が歩かせすぎだからなのだ、という結論になりかけていて、たしかにそうなのかもしれないが、要は普段から体を動かしていないからこうなるのだよな、と、普段から体を動かしすぎている私は思う。彼は私と違ってまっとうな、よく働く勤め人なので、常日頃なにも運動していなくて、かつ軽い腰痛持ち。そしていざ休みをとると、まずバスなども含め二十時間近く乗り物に乗って外国にやってきて、その翌日から17km歩いたら、故障出て当然なのかもしれない。

 この日の終わり、足に私のあげた湿布を貼りながら、夫はiPhoneの万歩計を見て私に文句を言った。

「あれだけ、詰め込まない旅行を、といったのに、俺たち今日17km歩いてるぞ! なんでだ!」

 ということで、普段全く運動しない人は、旅行での突然の歩きすぎにはくれぐれも御注意されたし。

 

旧市街、ゴシック地区でヨーロッパ気分満喫

 それにしても旅の2日めから捻挫かあ…。かわいそうに。しょうがないので、いつものように彼の体をいたわりつつ、ごまかしごまかし、旅を続けるしかない。

 

 しかし美術館のあるゴシック地区あたりにやってくると、景色はまさに旧市街。靴音も快い石畳、重厚な石造りの壁、細い路地、そのなかに押し込められた店々…いわゆるヨーロッパな風景で、こここそ、歩きまわってなんぼ、な地区である。相変わらず寒いし、夕暮れも近づいてどんより暗くなってきているが、それが逆にこういうヨーロッパの町並みにはぴったりだ。ハモンの店や雑貨店、カフェ、教会…

観光客だらけだなあ、とは思いつつも、まあ自分も観光客だからしゃあないと納得し、できるだけのんびり、てくてく歩く。

 

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 なぜかオーナーが日本語ぺらぺらのナッツ屋さん、CASA GISPERTで今回ほぼ唯一の買い物らしい買い物をし、

 

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⇧日本人観光客には超有名なお店のようです。ナッツ&ドライフルーツ好きにはたまらない。高価なマルコナ種アーモンドをここぞとばかりに買う。

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ピカソ美術館ピカソの「ラス・メニーナス」への異様な執着に感動を通り越して笑ってしまったり、

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「ラスメニーナス」の模写、58点(!)の一部。

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 ⇧wikipediaより。

本物と見比べ、「ああ、あの黒い男が今度はここに」「犬はいつもでかいな」などと言いながら58点それぞれ詳細に見ていくと、ものすごくおもしろい。「あと2日後にはプラド美術館で本物の「ラス メニーナス」が観れるのだ、と思うとさらに興奮が高まる。

 なにしろピカソは本物のほうが写真などより圧倒的に見応えがあるので(なぜ? ポストカードとかになるととたんに色褪せるような…)、かなり充実した時間が過ごせます。

 

ピカソバルセロナで十代を過ごしたそうで、若き時代の作品がここではたっぷり鑑賞できる。さる13世紀あたりに作られたお金持ちの邸宅を5軒ぶん、改装したそうな。撮影禁止なので写真はろくに撮れなかったけれど、1時間半くらいで回れるちょうどいいサイズの館内に、作品がほどよくぎっしり、で見やすく気持ちのいい美術館。カフェがなくなっちゃったらしいのが残念でした。

 

ショッピングモールで鬱っぽくなる人はいますか?

 最後はホテルの近くの元闘牛場、現ショッピングモールというなんだかちょっと哀しい感じ(たぶんみんなはそう思っていない)の巨大モールをぶらついて疲れてしまい、夕食もろくにとらずに寝てしまった。そもそも普段から夜はほとんど食べないので、別にふつうのことなのだが、ただ、スープが飲みたかった。

 なぜならばスペインではスープというものにほとんどお目にかかれないのだ。日本やアメリカなどだと、カフェやデリ的なところに必ずスープはあって、小腹がすいたとき、さっと食べてあったまるということができるけど、なぜかスペインではこの「街角で簡単なスープ」をまったく見つけられない。ピンチョスはいっぱいあるのだけど…。ショッピングモールの地下フードコートには、もちろん多少あった。けれど、見つけたときにはもう疲れきっていて、そしてはやくこのショッピングモールという、得体の知れない、妙に力を吸い取られる場所(きっとみんなは違うのだろう…)から逃げたくて、素通りしてしまったのだ。

 タワーマンション、ショッピングモール、地方都市の国道沿いのチェーン店、などが私を暗くするものたちなのですが、これらに共通しているのはなんだろう? そしてこんな気持ちになる人、ほかにもいるのでしょうか?

 

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⇧ホテル近くの巨大モール。昼間撮影。最上階はシネコン、地下はフードコート、その間には無数の洋服と雑貨、というお決まりの構造。左はじにあるのはなんというか、アミューズメントエレベーター? 透けてるエレベーターに乗って上まで行って、屋上のレストラン街へ…。いくらか知らないが、有料ということに驚く

 

勝負に勝って眠りにつく

 そういうわけで、なんか疲れてなにも買わずホテルに帰る。昼にたくさん食べたからそんなにおなかはすいていない。でもなんか物足りない。仕方ないから寝てしまい、明日たくさん食べようか…そんなふうに思いながら風呂に入ったあと、思い出した。

「わかめスープがある!」

 私が大きな声で言うと、

「わかめスープか。飲もう!」

 と夫も湿布を張っていた手を止めて呼応する。

 ふたりで飛びついて湯を沸かして飲んだら、これがえらいおいしかった。抜群においしかった。なんなんのだろう。5袋149円、ゴミのような乾燥わかめしか入っていないのだが、うまかった。「これこそがいま、自分が心底飲みたかったものなのだ」としみじみ思いながら飲んだ。わかめスープ。持ってきてよかった。いつも文句ばかり言う夫も、湯気のたつなかふうふう言って飲み続け、「うん。うまい。すごくうまい」と言っている。

 なんだか勝負に勝ったような気分で眠りについた。

 

 

 

スペイン旅行記 その17〜ガウディの人生と建物、そして社交好きな「肘ゾーン」の人々

ガウディを訪ねてバルセロナ散策

 カタルーニャ広場まで歩いてバルセロナカードを受取り、カサ・バトリョへ。そこそこ並んでいる…。うーん。15分だか20分だか…いやもっとか? という程度なのだけど、寒いから結構つらい。数ユーロ値引きのためにVELTRAで買ったファストパスつきのチケットをキャンセルしたことをやや後悔しつつ、じーっと待つ。ちなみにこれはカサ・ミラも同様。オフシーズンでも、それなりに混むのだね…。

 

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⇧カサバトリョ。人が並んでいる…。

 

 ランチは1時すぎに。しかし。

 ランチはレストラン「Embat」で。1時くらいだったけど、店はがらがらで誰もいない。でもバルセロナ強力サイト「バルセロナウォーカー」の管理人が、18回も通ってる安心の店らしいので、飛び込む。

 

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 ラビオリ、たら、スパニッシュライス(ていうかリゾット)。どれも抜群においしい。お姉さんも英語全くできないけど、一生懸命説明してくれる。

  

  2時すぎると、ぞくぞくとお客さんがやってくる。両隣の人たちが、アーティチョークのスープだの、ステーキだの頼んでいて、ああ、あんなだったのか…あれでもよかったなあ、としてもしょうがない後悔が。店もとたんに活気づき、地元の人たちが次々とやってくるこの店が、とても愛されていることを知る。デザイン会社勤務風のトラッドでおしゃれなおじさん。秘書と部長?風の上品な初老のおじさんと、やや若いおばさんふたりの3人組…などなど、みんないかにも近所から来た感じ。さっきの不安になるほどの閑古鳥ムードは完全に消えた。

 

 そう、スペインのランチタイムは2時から。お楽しみはこれから、なのだ。この決定的な時間のずれが、哀しい。食べ物や人々や景色、スペイン語の響きにデザイン感覚など、どれもとても気に入ったスペインだが、朝はほとんど食べない、10時に軽食、2時からランチ、ディナーは8時から…という生活サイクルが、4時半に起きて9時前に寝る、朝ごはんこそがっつり食べたいという私のリズムと、どうにもまったく噛み合わない! そもそも朝っぱらからやってる店、というのがすごく少ない。哀しい。まあ、日本でだって噛み合ってないでしょ?と言われそうだけど…。起床消灯時間を言うと、半分の人は呆れたように感心し、半分の人はひく。

 

夜こそが楽しい、のか?

 でもこんな私も、生来、ものすごい低血圧で血圧が三桁いったことはなく、子供の頃は1分でも寝ていたくて、布団にしがみついていた。大人になってからもフリーランス稼業のせいもあって、平気で午前中寝ていました。早起きできる人ってすごい…と尊敬していたものです。せめて10時には起きたい、とか。しかし、変わったのです。私は本当に、よく変わる人間なのだ。「変節」と罵られてもおかしくないほど、20代の自分と今の自分は違う。それがいいことなのかどうかはわからない。でも友達は減ります。確実に。話が合わなくなっちゃうから………。

 

 早起きは楽しいので気に入っているのだけど、旅行すると不利な点を痛感します。「こんな時間に寝て起きていたら、なにも楽しめない」。

 だいたい朝は全然夜明けが来ないし、みんな夜に命かけてる。

 ニューヨークもパリもバルセロナも(ま、これくらいですけど…世界中まわってるわけではないので…)、どこでもすべて感じたのは、夜明けの遅さと、人々の社交好きっぷり。夜のレストランやバーの盛り上がりは、本当に楽しそうでうらやましい。夕暮れになると、薄暗い店内にキャンドルやらなんやらがほんのり灯りが灯り(あっちのレストランって、闇鍋!?というほどの暗さ。それがすごくいい)、夜になるとそれらの店はほぼすべてぎゅうぎゅうに満席になり、ものすごい喧騒におおわれる。笑い声がさざめき、しゃべり声がうずまき、グラスの音、食器の音、BGM(とも思えないほど音量大の店も多い)…まあそれはにぎやかで、それは楽しそうなのだ。

 

ここで鹿島先生登場

「ヨーロッパ人でも地中海系の人たちはパーソナルスペースが近い」というのはどこに書いてあったのかな? 鹿島茂さんの著書かな?

 

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↑そうだった。「パリ五段活用」鹿島茂 中公文庫 パリを熱狂的に愛する鹿島さんの愛と知識が怒涛のようになだれこんでくる、快感の一冊。

 

 ヨーロッパと一口にいっても、フランス、スペイン、イタリア、ギリシャといった地中海沿岸のカトリック・ラテンの国々と、イギリス、ドイツ、オランダなどのプロテスタント・ゲルマンの国々では、さまざまな面で、その行動様式がまったくといっていいほど異なっていることは、ピーター・コレットが「ヨーロッパ人の奇妙なしぐさ」(草思社)で指摘したとおりだが、酒を飲むということについても、この二つのグループは際立った対照を示している。

 まず、前者がワイン文化圏であるのに対して、後者はビール文化圏である。

 また、前者がレストランないしは家庭で料理と一緒にワインを飲むのに対して、後者は、ビヤホールやパブといったビール専門の酒場で、軽いおつまみだけを助けにビールを飲む。

 さらに、だれとどうやって飲むかというと、前者はごく親しい人(あるいは親しくなりたい人)と一緒にテーブルを囲んで同じビンのワインをみんなで飲むが、後者はあくまで個人の資格で、バーテンダーにビールを一杯ずつ注文し、それから、常連の不特定多数の人たちと雑談を交わしながら飲むのが普通である。

 

 これにはあくまで例外もあるし、ひとりの人間が、2つの飲み方をすることもある、と断った上で、話をすすめ、ピーター・コレットならプロクセミクス・ゾーン(対人関係の距離の取り方)の違いから、これを説明するだろう、と仮定する。

 

 プロクセミス・ゾーンの南北的な相違とは、たとえば次のようなものである。

 人と人が立ったり座ったりして話をするとき、地中海沿岸の人々は肘と肘で触れ合えるほどの距離すなわち「肘ゾーン」で相手に接するのを好み、視線も相手の目をまともに凝視する「多視ゾーン」に属する。身振り手振りもおおげさで、おしゃべり好きである。いっぽう、北ヨーロッパ人は腕をいっぱいに伸ばしたとき、指先でかろうじて触れ合える程の「少視ゾーン」の文化圏に入る。身振り手振りは少なく、儀礼的な無関心を装う。ワインの飲み方とビールの飲み方のちがいもここからある程度は演繹できる。

 すなわち、「肘ゾーン」で相手に接し、相手の目をまともに凝視して、身振り手振りを交えて何時間もおしゃべりしなければ気が済まない地中海沿岸の人たちが、一緒に酒を飲むとしたら、それは必然的に「一つ」のテーブルを四、五人で囲んで「一本」のビンの酒をわかちあって飲む形態を取らざるをえないが、この場合、ビールはいかにもふさわしくない。なぜかといえば、十九世の後半にビン・ビールが登場する以前には、ビールはすべて樽詰めであり、樽をテーブルの真ん中に置くわけにはいかなかったからだ。第一、ビールでは消化が早すぎて、何時間ものおしゃべりにはむかない。

 これに対し、コルク栓の発見によってビン詰めが早くから可能になったワインは、パンやチーズ、肉との相性の良さから食中酒としての地位を確保したことで、「一つ」のテーブルの真ん中に置かれる「一本」のビンという主役を演ずることができるようになった。パンはキリストの肉であり、ワインはその血であるとしたカトリックの教養も味方した。

 だが、他人とは「指先ゾーン」でしか接しようとせず、寡黙を好む北ヨーロッパの人たちにとって、樽からジョッキにわけたビールというのは、相手との距離を保つにはなかなかピッタリとした飲み物だった。というのは、ビールジョッキは、レストランのテーブルで人と肘を突き合わせて飲むには、そのサイズからしていかにも不向きなものだが、パブのカウンターや立ち飲みテーブルで、当たりさわりのない日常会話を交わすためのバリアーとしてはちょうどよい大きさである。また、ビールの消化に要する時間も短くて、濃密な人間関係を生むには至らない。それにジョッキを持っていれば、おおげさな身振り手振りも必然的にできなくなる。視線の直接の交錯も、ジョッキのビールを眺めていれば避けられる。要するに、ジョッキのビールは、彼らの望む淡い人間関係に最適な飲み物だったのである。(ところどころ中略あり)

 

  いや、長い引用ですね。これでもあちこち省略したのです。ブログに、いわゆる「本」の文章を引用しようとすると、そのまだるっこしさに驚く。コンパクトに書けば、この本1/3になるのでは?と思いながら引用していた。しかし、私は決して「本」の文章が嫌いではない、というか好きなので、あえて引用した。そして今後も時勢に逆らって、まだるっこしく、美しく楽しい文章をどんどん読み続けたいと思う。ちなみにこの「パリ五段活用」では、「ヨーロッパ人の飲み方」論が、さらに深く掘り下げられています。おもしろいです。

 

  えーとなんだっけ。それで、とにかくパリやニューヨーク(あれ?これアメリカだけど…)やバルセロナでの社交好きっぷりと夜の賑わいは、孤独な日本人女性の胸をうつほどのインパクトを持っているのです。 

 とにかくどこのビストロ、レストランも本当にテーブルが小さい。「こんなにいいものを出して結構な値段をとるのに、どうしてこんなゲーム盤のようなテーブルなのか? ひどい」と、とあるNYのフレンチビストロでぷりぷりしたこともあったけれど、その後パリに行ったら、どこもそんな店ばかりで、そうか、あの店がごうつくばりだったのではなく、そういうものなのだ、と知った。高い店(もちろん超高級レストランはのぞく)でも安い店でも、ぎっしりテーブルを入れて、ぎっしり人を入れて、わいわいやるものなのだ。

 そんな小さなテーブルを囲んで、人々は猛烈にしゃべりまくっている。身振り手振りも大きく、声も大きい。とにかく喋り続けている。なにをそんなに話すことがあるのだろう…?と思うほど、熱く語り続けている。しかも、これが夜に限ったことではなく、朝もそうだった。朝は寝ているスペイン人はおいといても、たとえば早起きのニューヨークでは朝食の場所が充実していて、カフェだのデリだので平日の朝7時とかに熱く語っている人々、というのもよく見た。社交が好きなんだなあ~というのを、本当に実感する。人付き合いしない、しかも酒飲めないって、彼らには人生を捨てているも同然なのかもしれない、と、賑わう夜のレストランを外から眺めながら思う。

 人付き合いがあんまりおもしろくないから、そしてお金もないから、自分のなかから楽しいことを生み出して回転させなければいけない、とここ数年強く思っている私ですが、こんな風景をみるとやっぱり寂しい。「社交が楽しい! 人間大好き! おしゃべりしてこそエネルギーがわく」という人になれるならばなりたかったなあ。

 

 が、ここで友人の「フランス人の20代なかばの知り合い」、の話を思い出す(ちっとも旅行に話が戻らない!)。

「彼女の日常は、平日は絶対残業せず、6時すぎに帰宅してシャワーを浴びて着替えて化粧して、3軒、ときには4軒のバーをはしごすること、だったよ。どの店も1時間くらいいて、知り合いに声かけて、飲んで、すぐ次の店に行くの。それを毎日やってるの。20代とはいえ、すごいエネルギーよね」

 こんな話を聞くと、まあ、そんなにいいもんではないのかなあ、蚊帳の外から眺めるからよく見えるだけなのかなあ、とも思ったりしますが。

 

午後も散策は続く

 そんなことを考えながらランチを終え、カサ・ミラも見学し、バスに乗ってみたりもしながら、夕方に予約したピカソ美術館を目指して旧市街に向かいます。

 

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↑「カサ・バトリョ」はランチ前。

 

というか、写真を選んでいたら、どちらがカサバトリョでどちらがカサミラなのか、わからなくなってしまいました…。居間や寝室などすべて当時のままにしつらえてあり、一昔まえのバルセロナのお金持ちの生活がまざまざと想像できてとても楽しい、のはたぶんカサミラ。

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↑この居間で家族で夕食とか…いいなあ、と妄想。

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⇧でもこの暖炉はカサバトリョだったような…。

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⇧これはどっちかなあ。 

 

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⇧なにをみてもおもしろい…。

 

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↑ランチ後、カサ・ミラへ。人の並び具合はこんな感じです。

 

ここに住んでたら気持ちや性格にもなにかしら影響するんだろうなあ。オーディオガイドで「ガウディの家に住むことは深海に住む感覚に似ています」と言ってたような、ないような。本当にそんな感じ。

 

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↑日本で雑誌の写真を見ていたときは、「どうしても本物が観たい。でも数々の建物を見てまわったら、たぶんおなかいっぱいになりそう」とも思っていたけれど、実物は写真よりもアクがすくなかった。胃もたれしなかった。「簡素」とはかけ離れた装飾の数々だったのに、トゥーマッチには決してならない。

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 ⇧バスにも乗り…。おじいちゃん、かわいい。

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↑お茶飲んだり。

「ガウディって市電にはねられて死んだんだね」などと話し合いながら散策は続く。「サグラダ・ファミリアが資金調達できなくなってきて、途中から私財を投げ打って建築を続けたって。だからはねられたときは当初、ホームレスだと思われるほどみすぼらしい身なりだったんだって」。

「うーむ」

スペイン旅行 その16〜サグラダ・ファミリアの苦難

 出発、さっそく試練

 ともかく、まだ開けたばかりの薄暗い8時半、ホテルの目の前からタクシーに乗る。陽気なお兄さんが「サグラダ・ファミリアいいね、きれいネ」的なことを(たぶん)言いながら、連れてってくれる。ここでもやはり狭い空間に押し込められ、「このドア、どうやって開けるんだろう? もしかして運転手がロックしてるのか?ラッシュだから道は混んでいるのか?」などとざわざわと不安が始まり、「タクシーひとつ乗るにもこんなんだから、私の旅は試練なわけだわ」と改めて痛感。乗り物に乗らない旅なんて、徒歩旅行以外ないのだから。しかし誰もわかってくれないので、口には出せない。初めて見るバルセロナの街に一生懸命意識を集中させる。

 道は運よく空いていて、15分もしないうちに到着した。バルセロナのタクシーはボラれることもなく、安いしよいらしい。ただ、運ちゃんはほぼ全員、スペイン語しか話してくれない。10ユーロ払う。

 

なにはともあれサグラダ・ファミリア

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⇧すっごく寒かったが、天気はよかった。空が驚くほど美しい。朝の光のなかで見るのが最も美しいと言われてるらしい。

 

 タクシーの窓から初めて見たサグラダ・ファミリアは、やはり「おおお!」と思うものがあった。これを観にあんなにたくさん準備をしてたくさん飛行機を乗り継いでやってきたのだ、という感慨も合わさって、「ついに」感がすごかった。

 9時になったらすぐ入れる。ハイシーズンだと朝いちの9時でも行列がすごいらしいので、よかった…。

 

 外から観ても、中から観ても、人間が宇宙を作ろうとした気持ち(?)がひしひしと伝わってくる。確かな、ひとつの世界を提示してあげなければ、多くの人の心は路頭に迷う。こここそが、あなたが目指すべき場所なのです、と言われている気がした。有機的なガウディのデザインは、動き出しそうななまめかしさ。

 

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 聖堂内は宇宙なのだから広大な空間で、そのスペーシーな美しさに圧倒されるが、それにしても寒かった。最高気温5℃とか7℃という予報だから、朝のこの時間はたぶん3℃とかだろう。聖堂内はさらに3℃くらい低い気がする。なぜ? でも人もけっこういるのに、寒くて寒くてたまらないのだ。歩いても寒い。止まったらもっと寒い。これがオフシーズン観光の醍醐味だね…と思いつつ、地下のミュージアムを発見。なんと、実際作業をしている工房なんかがあったりする。ここは寒くない。あったかいわけではないが、寒くない。建設当初の絵なんかも見れて、かなりおもしろい。

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⇧地下工房。模型がいっぱい。

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 ⇧どんな物事にも始まりがある…ということを教える写真。1904年の建築当初。なんというか、衝撃。

小さな小さなエレベーターで生誕の塔を昇る

  9時半になると、エレベーター(これも苦手…超狭い5人乗っていっぱい)を使って、生誕の塔へ(受難の塔でもよいけれど、ガウディが生きてるときにできたということで、こちらが人気)。地上メートルの戸外に出る。わかってはいたのだが、実は私は高いところも苦手。下半身がびりびりしびれてくるのを感じながら、なんとか写真を撮り、写真におさまる。たるんだ顔を残さないため、ひたすら口角をあげて笑う。

 でもたしかに、ここから眺めるバルセロナは素晴らしい。高いところが苦手でも、やはり来るべきだろう。

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 ⇧ほら! 

 

 高いところも大好きな夫は、自殺行為(と、私には思える)のような場所にまで降りていって、自撮りをしている。私からすると、そこはもうほぼ空、だった。おまけのような手すりのある、外に張り出した小さなスペース。ミニミニバルコニーといった風情で、人ひとり入れるかどうか、という空間だ。その手すりは低く、足元ががらんどうに透けて、真下が見える。

 

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「ここからの眺めはすごいから、ぜひ来てみなよ」と散々誘われるが、どうしても足が動かなかった。というか、今立っている場所だって、なかなか限界なのだ。

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⇧こんなものも観れる。果物、かなあ。

 

 塔から塔へ、絶景を眺めながら渡り廊下的な細い通路を渡る。

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⇧もうひとつの塔へ向かっている。 

降りるのも美しくて、苦痛

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 もうひとつの塔につくと、そこから帰りは螺旋階段を使って降りる。この螺旋階段もほれぼれするほど美しいのだが、踊り場は一切なく…ないよね、螺旋階段だもの…自分がどのあたりを降りているのか、この階段はいつになったら地上に着くのか、まったくわからないまま、ひたすら円を描いて降り続けなければならない。しかも、途中で何度も枝分かれ(螺旋階段が枝分かれ? でも実際そうだったのだ)して、道がひとつではなく、本当にここでいいのか、激しく不安になる。そのうち目が周り、気持ち悪くなってくる。しかし止まれない。止まるところがないから。ひたすらに回転していなければいけない。下をのぞいても、カタツムリのような美しい形状があるだけで、ゴールの気配すらない。

 たぶん、これも異世界へのトリップ等に必要な修行の一環なのだろう。螺旋階段はすみからすみまで美しかったけれど、でも苦痛! 名所旧跡っていうのは本当に苦痛だ!

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 ⇧完成予想図。なんと、真ん中の一番太く大きな塔がまだ手付かずなのだ!ということを知る。完成予定は2026年。観たいけれど、どれだけ混むのかと思うと…。

 

 

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⇧現代美術風、古典風、地獄風、天国風…いろんなテイストといろんな世界が面ごとに存在している。世界そのもの、ということなのかしら?

ミュージアムショップで旅の命題をみつける 

 見れば見るほど発見があるので、どれだけいてもたりないようなサグラダ・ファミリアだが、塔を降りたあと、周囲を何周かしてようやく一区切り、ミュージアムショップをのぞいて去ることにする。

 ミュージアムショップというのはたいていどこもおもしろいが、買おうと思うものには出会えない、というが定説(私のなかの)だ。ここも同じ。「私がデザイン担当だったら何を作るだろう?」と想像しながら、デザイン担当者の苦悩や喜びなどもイメージしつつ、名作にからめた日常グッズを丹念に見る。でも苦悩というか、名作にあぐらをかいて適当に作っただろう?というものが多いのも事実。ただ写真をプリントしただけの、元値は安そうなマグカップとか……ひどいなあ。そろそろ新しいマグカップが欲しいので、一生懸命見るけど、どれもひどい。この旅では、「ミュージアムショップで素敵なマグは見つかるのか?」を裏テーマにしよう、と決めた。そしてここにはなかった

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⇧各国語のガイドも。中国語だとアントニオ・ガウディとはこう書くのか…。

散策。いちばん好きなもの。

 地図を見ながら(いやこの⇧の地図では歩けないけど…)、散歩して街を眺めながらカサ・バトリョカサ・ミラへ。やっと落ち着く。太陽はぐんぐん昇り、寒いけど青空はますますきれい。これだよ。知らない街をきょろきょろしながら歩く。これが一番楽しいよ! ようやく、心からリラックスしてきた。気になるところは写真を撮る。気が向いたらカフェにも入る。

 

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⇧スペインの街はタイルがきれい! とか。

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⇧天気がよくてよかったねえ、とか。

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⇧スペインの愛らしいおじいさんたちだよ!とか。

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⇧中国からの団体客の記念撮影も微笑ましく…などと言い合う。ここは教会のすぐ隣の公園。松が多くて、どことなく日本風。

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⇧ガウディ作、ベンチつき街頭。すごいよね…。こんなに美しくて2つの用途がある。

散策は続く。