独楽ログ〜こまログ〜

50代、女性、日本人、がひとりで毎日楽しくすごす方法を検証、実践、そして記録。

MENU

こなログ 10月8日,2020

はじまりの記

 ブログを書かなくなってずいぶんたち、プロフィールにある年代も遠ざかりつつあります。最近「えっ、もう週末!?」と驚いて起きることが多い。毎日毎週毎年、すごい勢いで流れていく。それで、日々が気づかぬうちに消滅していくことが怖いので、記録をつけることにしました。

 なんでそう思ったのかというと、冷蔵庫に貼ってあるホップ酵母を作った日付メモを眺めると、いつも不思議な気持ちになるから。

f:id:camecon:20201011093134j:plain

ホップ酵母メモ。4日ごとに種継をします。

「こんなに作ってきたのか…」

「いつのまにか日々を積み重ねてるんだな」

 酵母を仕込んだ日を書いてきただけで、驚くほど感慨がわいてくるというのがおもしろかった。

 なので、今日から焼いたパンと、それで作る朝ごはんを記録することにしました。

 あとで見返して、「あーこんな日を過ごしてたのか」と感慨に耽るため、その日したことなども書いておきます。

 あくまで記録なので、以前考えていたような「公開するのだから毎日違うものにしなければ」「きれいにしなければ」「人と違うものにしなければ」という見栄もなるべく捨てて、4日間同じトーストを食べたならそのまま綴ろう、と思っています。それが自分以外の人間が見ておもしろいかどうかは難しいところですが、いや、これはそもそも「ログ」なのだ。大事なのは記録することなのだ。パン=小麦粉なので、ブログ内ブログのタイトルは「こなログ」です。「独楽(こま)ログ」と似ている。

 

前置き終わり。

 

2020年10月8日

 まずは焼いたパン。

f:id:camecon:20201011094850j:plain

本日のパン。全粒粉入りキタノカオリパン。ラ・トラを使うとクープがきれいに出る
配合

グリストミル 50g

キタノカオリ全粒粉 25g

ラ・トラディショナル・フランセーズ 75g

キタノカオリ 100g

 ホップ酵母 35g

エビアン 155g

塩 5g

 
焼成

230℃ グリル10分

230℃ コンベクション 16分

最近、コンベクション210℃、20分から、温度をあげて時間を減らしました。

 

f:id:camecon:20201011095231j:plain

なかなかいい感じ。二次発酵のとき「あ、やばい!」と

恐怖を感じるくらいまで膨らますと、焼成で底まできれいに膨らむ。

…ということに最近、ようやく気付きました

 パンはだいたい3〜4日に一度焼きます。夏がようやく終わって食欲が出てきたので、消費が進んで最近は3日で食べきることも。

 

ミートソーストースト

f:id:camecon:20201011095745j:plain

前の日に作ったミートソースの残り+チーズ、野菜が欲しいのでピーマン。

セロリのピクルスをつけた

昨日のごはん

f:id:camecon:20201011110400j:plain

れんこん入りのミートソース。焼き野菜のサラダとセロリのピクルス

ミートソースは、「きょうの料理」に載っていた大阪ポンテ・ベッキオの山根シェフのルールを守っている。トマト缶ではなくトマトペーストのみを使う、ベーコンと椎茸を入れる。肉だけを焦げ目がつくまでしっかり焼いておく、というのも大事なポイント。あと、今回は牛肉をクイジナートではなく包丁でミンチにしてみたので、「本日の丁寧」ポイント獲得。肉のごろごろ感があって、あきらかにこっちのほうがおいしい。れんこん入りも予想以上によい出来。

 

読んだ本

「DOPE SHICK〜アメリカを蝕むオピオイド危機」ベス・メイシー著

f:id:camecon:20201011112317j:plain

今年一番興奮した本かもしれない。


アメリカである意味コロナより深刻なオピオイド中毒のルポ。強欲の限りを尽くす製薬会社、職業倫理ゼロの医師たちという極悪人もいれば、全てを投げ打って街(街全体がオピオイド中毒だから)を救おうとする医師や猛烈な集中力でデータを集めて捜査をする検察やなにがあっても子供を見捨てない親、などもいて、映画のよう。すさまじくおもしろい。すさまじく胸塞ぐけれど。

その戦いもおもしろいけれど、やっぱり、どうしてここまで普通の人たちが薬物中毒になってしまったのか、という社会背景をひとつひとつ解明していくところがなによりすごい迫力。小さな街の新聞社のジャーナリスト(2014年に辞めている)が、自分の街を様変わりさせてしまった原因はなんなのか、街だけでなくアメリカ全体になにが起きているのか、粘り強く歩き回り文献を読みまくり人に会いに行き話を集めていく。

しかし、高校の同級生のほとんどが過剰摂取で死んでしまった、まるで戦争中の軍隊の仲間のよう、とか、ついこないだまで車にも家にも誰も鍵をかけないようなのんびりした街だったのに、あっという間に薬代を得るための強盗だらけになり、誰もが銃を持つようになってしまったとか…にわかには信じられないことが起きています。今。

 

一言だけ感想を書くつもりが、こんなに書いてしまった。

ものすごく遅読みなので、読んでも読んでも全然終わらない。この日でもう5日めくらい経ってるのに、半分もいってない。図書館の期限めいっぱい使ってしまいそう…。

 

観たドラマ

MAD MEN」シーズン4 エピソード12(amazon prime

毎日1本、海外ドラマを観るのが楽しみです。今は「MAD MEN」。自分のベストドラマ5本に入る作品です。8年前にシーズン5まで観て、それから観る手段がなくなり。どうしても、もう一度最初から最後まで観たいと思い続けてこんなに日が経ってしまった。

Netflixにはなくアマゾンプライムは有料で、いつも「TSUTAYAで借りるしかないのか…」と思っていたけれど、ついに、本当についに!この秋、アマゾンプライムに無料で登場した。そういうわけで現在、毎日大事に大事に1本ずつ観ている。毎日夕方になると「夜は「MAD MENだ!」とわくわくしてしまうほどで、いつかくる最終回が今から怖い。

しかし、アマゾンのものすごく適当な仕事ぶりはどういうことなんだろう。例えばシーズン1のエピソード9と10が入れ替わってたりする。ご注意。内容紹介もAI翻訳?のものすごく変な日本語で、何が書いてあるかわからないし、インディアンサマーをインドの春、とか訳してる。オープニング曲は冒頭2秒、欠けている。はっきりいってひどい。

まあでもセリフの字幕は変じゃないし、無料で(でもないんだけど)観れるだけでありがたくてたまらないので、クレームつけたりはしない。自ら気づいてほしい。

それにしても、たった8年しか経ってないけど、前は気づかなかったところばかり気づいて、感慨深い(感慨が多い)なあ。成長の証だと思いたい。

 

f:id:camecon:20201011105905p:plain

1950〜60年代のニューヨーク、広告代理店のお話。2007~2015年、全7シーズン。

したこと

エディ・ヴァン・ヘイレンの追悼記事をあれこれ読む。英語の勉強もかねて、NYタイムズや Rolling Stoneなどの英文記事多め。彼のギターがいかに革新的だったか、はなかなか理解が難しいので日本語の記事も読んで確認。

ヴァン・ヘイレンは高校生のときめちゃくちゃ聴いたけど、精神的な思い入れはあんまりなく、ただただ「気持ちよすぎる」とリピートし続けていただけなので、エディの人生、バンドの変遷などを読んで今更驚くことが多い。オランダ人だったということすら知らなかった。そうか、VANだものね。

十代のとき脳に刻み込んだので本当に一音一音くっきり覚えているけど、「この曲の肝でしょ」というところはほぼ全部ギターだった、というところにも今気づいて、そして驚く。エディの笑顔とともに自分の十代も思い出す。

いくつもがんにかかって、アルコールも薬物とも格闘していて、つらかっただろうなあ。ステージ後に思う存分弾くギターが最高、とかいう天然の天才だったから誰もが持てるわけではない喜びを知ってる人だったと思うけれど、それでも後半生の大変さは読んでいてせつなかった。

ご冥福をお祈りします。

 


 初回なので長く書きすぎましたが、ログなので次からは短くしたいです。

 

 

CITI BIKE ニューヨークは自転車天国②

 

5月のマンハッタン〜橋を渡ってブルックリン〜クィーンズコース

 

 それではこのCITY BIKEに乗って出かけたコースです。

drive.google.com

 がこの日の二大目的で、土曜日だからついでにスモーガスバーグにも寄りたいな、という目論見もあった。泊まっていたのはチェルシーなので、ここからダウンタウンへまず南下し、マンハッタンブリッジを渡り、ブルックリンへ。そのあと北上してクィーンズへ、途中、スモーガスバーグで小腹を満たす、というコースを作った。この日は摂氏32℃の真夏日。水をたっぷり用意して(←すごく大事だった)いざ出陣。

 

 チェルシーからぐっと東に向かい、イーストヴィレッジやチャイナタウンを抜けて、マンハッタンブリッジを目指す。橋のたもとまでは土曜の朝だからか、どこもスカスカ、陽射しはまだ上がりきっておらず、めちゃくちゃ気持ちよく走れる。自転車ってこんなに楽しいのかあ、と感動。

f:id:camecon:20191208141452p:plain

マンハッタン橋入り口。ここから試練が始まる

 ただひとつの難関はマンハッタンブリッジ越えだ。橋のふもとに行けばわかるが、まあこれは……そう簡単ではない。まず橋に上がるまでが結構な坂と距離だし、やっと橋に出ても半分まではゆるやかな上り坂なので、かなりきつい。そして橋全体は全長2089m、想像以上に長い。

f:id:camecon:20191208142135j:plain

やっと橋のはしっこにたどりついた。ここから反対側まで2km

 

私は日頃鍛えているし、このとき予想外に自転車乗りが楽しくてテンション最高潮だったので、うおおおおー、と力を出し切って漕ぐ楽しさを味わったが、日頃いっさい鍛えていない夫は「あのときは本当に死ぬかと思った」と後々まで言い続けた。本当にしんどかったらしい。ここまで読んで、じゃあやめよう、と思う方がほとんどかもしれないが…いやでも、それでもやる価値はあるのです。あまりにも疲れたら途中で降りて休み休み行けばよいし、とにかく橋の真ん中までくればあとは下り坂で、それまでがんばったご褒美のようにスライダー体験が味わえる。なにより橋から眺めるマンハッタンとイーストリバーとブルックリンは他では見られない眺めである。ふんばる価値はおおいにある。

f:id:camecon:20191208142557j:plain

ぜいぜい言って漕ぎながら、横目で絶景を堪能

 どうにかこうにか川向うにたどりつくと、そこはブルックリン。目指すのはsahadi’sのあるアトランティックアベニューである。その前にあまりにも喉が渇いたので、眼の前にあったTRADER JOE'Sに立ち寄ってカットパイナップルを購入。入り口のそこいらに腰掛けて食べる。………うまかった。汗をかいたあとのパイナップル。うまくないわけがない。果物は、物価高のニューヨークにあっても高くない。そしておいしい。

f:id:camecon:20191208143619j:plain

元銀行だったという巨大なTrador Joe’s

 

f:id:camecon:20191208142832j:plain

最近、街案内を置くようになったらしい。便利だし、道に迷ったときだけでなく、行くところを探すのにもよいと思う

f:id:camecon:20191208144700j:plain

老舗食材店、Sahadi's。昔ながらの店構えも素敵

  その昔はマンハッタンのシリア人街にあったというこのお店、ブルックリンに移転してからも新鮮なナッツが買える場所として有名。

店に入ると銀行のように番号をもらって、自分の番が来ると店員さんがつきっきりで応対してくれて、好きなものを好きな量だけ袋につめてくれる。

f:id:camecon:20191209105832j:plain

 ピーカンナッツ、ピスタチオ、各種レーズン、クランベリーなどを大量購入。さらにエシレバターが250g $8という安さだったので、真夏にもかかわらず購入。お店の人に頼んだらたっぷりの氷をくれてありがたかったのだけど、荷物がなかなか大変なことに。同じく、ここで買ったショッピングバッグにぎゅうぎゅうに詰め込み、自転車のフロントにセット。これ、かごではなくてただ荷物をおさえるだけのものなのだけど、使いやすいし安定感抜群でまたCiti Bikeに感心してしまった。

 ちなみにこのショッピングバッグがめちゃくちゃ優秀で、あとで別記事にあげたいと思っております。

 最近はインダストリアルシティという新エリアにも店舗を出し、ここでは中東メニューが食べられるカフェ&レストランもついているとかで、次回必ず行きたい場所になった。

 …というわけで、目的、ひとつは達成です。つづく。

 

CITI BIKE ニューヨークは自転車天国①

Citi Bike ニューヨークは自転車天国

街を存分に味わうための自転車

 ニューヨークの何が好きって、街全体が好き、いるだけで楽しい。だから散歩してお茶するだけで満足、…という人がNYファンの何割いるかは不明なのだが、私はそういうタイプである。だから「あの舞台が見たい」「あの靴が欲しい」とかいうのは後づけで、「もう何度も行ったけれど、やはり行かなければいけない理由」をいつも強制的に探している感じだ。

 そのような「何よりも歩くのが楽しい、街にいることがうれしい」という人に是非おすすめなのが、Citi Bike,レンタサイクルである。2013年にスタートしたというこの制度は日々改善されて2018年、ものすごく使いやすくなっていた。いやもうほんとに、すみずみまで行き届いたよくできたシステムなんである。(使い方は最後に)

f:id:camecon:20191113145757j:plain

イーストヴィレッジのステーション。土曜の朝なのでたくさんある



ニューヨークは自転車と相性がよいと思う

 まずニューヨークという街が、東京に比べて格段に自転車乗りに優しい。ほとんどが一方通行だし、自転車レーンがあるところが多く、あってもほとんど誰も守っていない日本と違ってちゃんと機能しているから安心して走れる。たとえ車道や歩道を走っていても、道幅が広いから、細い路地からいきなりなにかが飛び出してきて焦るということや、前を歩く歩行者に鈴を鳴らしてどいていただく、ことも必要のない造りなのである。もちろん人でごった返したタイムズスクエアなど、そうはいかないところもあるのだが、全体として東京よりは格段に走りやすい。

 いたるところにステーションがあるので、すぐに乗れて、すぐに乗り捨てられる。その数、800箇所以上。バイクの数は16000。このシステムだと「どこに停めるのか悩む」「停めておいたら盗まれるか心配」という自転車乗りにおける二大ストレスから解放されるのである! 自転車に乗っていて、あ、このカフェ入りたい、と思ってぐるりと見渡すと(またはスマホを見ると)、即発見できて即乗り捨てられる。店を出たら同じステーションでまた借りればいいし、“ちょっと歩こうか”ということで散歩がてら5分10分歩いて別のステーションで借りてもいい。

f:id:camecon:20191113150819j:plain

見通しの良い道。広々とした道路幅。たっぷりとした自転車レーン。

 どこにでも乗り捨てられる、すぐに次が見つけられるこの便利さ! 気になるものがあれば躊躇なく立ち寄れる。歩くより何倍も遠くへ行ける。乗っている間ずっと気持ちがいい。…というのが自転車の魅力だ。というか、もう魅力しかない。

 シングルライド=30分が$3。1日$12、3日で$24、1年で$163ということなので、1日だけだと別に格別安くはないのだが、3日フルに使えばずいぶんお得だし、なんなら1年乗り倒して$163はこの物価の高いニューヨークにおいて激安のような気さえしてきて、旅行者だけど1年にしようか…とは思わないが。

f:id:camecon:20191113152704p:plain

CITI BIKEオフィシャルサイトより。“お近くの800ステーションに13000の自転車“!

↓オフィシャルサイト

https://www.citibikenyc.com/ 

 

 基本ルールは借りてから30分以内にステーションに戻すこと。もっと乗りたければその場で借り直す。え、30分? 短くない?と思ったが、使っていてあせることはほとんどなかった。人はそんなに我を忘れて自転車に乗らないものだ。30分すぎると、以降は15分につき$4が請求されてしまうので注意。

 

詳しい乗り方については、こちらなどを参照してください。

www.mashupreporter.com

 

 さらに、近年自転車レーンの整備とレンタルバイクの普及によって急激にバイクシティになったとかで、危なっかしいバイカーもいるのも事実で、注意は必要。超繁華街や、朝のラッシュアワーなどは当然走りにくい。おすすめは、やはり土日の朝です。上記のサイトにはバイクマップへのリンクもあり。これを見ると、どこが走りやすいのか、どこが危険なのか一目瞭然!

 次は我々のバイクルートを紹介します。

 

NYのごはんはファストフードがいい⑥ ハラルガイズ〜それでもNYを楽しむために

NY一有名なベンダーは驚くほど基礎がしっかりしていた

Halal Guys ハラルガイズ

https://thehalalguys.com/

f:id:camecon:20191025133034p:plain

遠くからでもわかる、黄色と赤のパラソルが目印

 

 誰もが知ってるミッドタウン、MOMAの前6Ave ・53st、ヒルトンホテルの真向かいに出ている超有名ベンダー。ベンダー飯流行のきっかけを作った店である。スパイシーなピラフの上にレタス、チキンかラム(ダブルでも頼める。通はこれ)がどん。そこにヨーグルトホワイトソースと激辛のレッドチリソースをかける。さらになぜかピタパンもついている…というかなりのボリュームで、$9。昼どきになるとずらーりと行列ができるのも納得の味と価格だ。ベンダーなので席はなく、そこいらで食べなければならないのだけど、ミッドタウンのビルにはいたるところに腰を下ろせる場所がある(植え込みだったり、椅子&テーブルだったり)ので、食べる場所も簡単に探せる。そしてたとえ行列していても、異様に仕事が早いのでさほど待たずにありつける、といろいろとありがたい。なによりも、うまい。初めて食べても、「まるでいつも食べてたみたい」な味がする。

 もともとは深夜におなかをすかせるオーナーの仲間である、イスラム系のタクシードライバーのために開業したのだとか。アイナ・イエロフ著『NYの「食べる」を支える人々』には、オーナーがこのビジネスをどうやって始めたのか、どんなふうに経営しているかが明かされていておもしろい。

 

どんな日でも店を出す、それが大事

 オーナーはドクターの資格を持つエジプト人で、スタッフもみなエンジニアや博士号持ちなど、インテリであること。商品はすべてきちんとした手続きを行ったハラル料理であり、マンハッタンでは破格の価格で提供していること。ベンダーだけれど、製造は高額の家賃を払ったキッチンで行っていて、必ずその日作ったものだけを提供すること。(同業者たちは昨日の残り物を出すことも少なくないのだという)。

 そして、とくに大事にしていることは、どんな日でも店を開けることなのだという。それこそがお客さんの信頼を得る方法だから、と。とある大吹雪の日、ジュリアーニ市長(当時)が市内への自動車の乗り入れを禁止し、全ての店がクローズし人々が家にこもっていた真っ白い雪の日にも、この店だけはオープンしていた。CBSがニュースに取り上げたほど珍しい光景だったという。ハリケーン「サンディー」が来た日も営業していたが、数時間後に強制退去させられた…。

 というわけで、明快で厳格なポリシーのもと、小さな屋台はニューヨーク1と謳われるまでになった。今ではウエストサイドやダウンタウンニュージャージーにまで支店ができていて、見事なサクセスストーリーだ。ちなみに「残り物を出すこともある」同業他社、ウォール街で食べた緑色のベンダーも結構おいしかったのだが…。私の舌はテキトーなので。

 

 無事ランチパックを手に入れたので、我々もとあるビルの植え込みのようなベンチに座って食べる。

f:id:camecon:20191025140141j:plain

ビルのパブリックスペースはランチに最適な場所がたくさん

後ろでは初老の男性と中年の手前の女性がやはりランチを食べながら弾丸トーク(おもに女性が)している。こっちの人は本当によくしゃべるなあ…ランチタイムでこんなに夢中でしゃべったら午後は仕事にならないのでは…と心配になりつつも、こんなところでランチを食べるとオフィスワーカー気分が味わえてとても楽しい。

 ちなみに、上の写真のように、ニューヨークでは、オフィスワーカーらしき男たちがランチやディナーにサラダを食べる、というシーンをよく目撃した。サラダ+ポテトチップス(小)とか。これで仕事になるのだろうか…と、また余計な心配を。

ドラマ『ビリオンズ』(Netflix)でも、マンハッタンの若き検事がディナーにサラダを食べていて、年上の検事長に「最近の若いやつらは野菜ばっかり食べやがって。肉を食べろ肉を」と怒られていたが、そういう風潮なのだろうか。

 

f:id:camecon:20191025141200j:plain

食べ物が遮られていてすみません。真ん中のカップがフムス。ピタパンがたくさんついてくる。

 

 我々はサイドにフムスもオーダー。こちらはかなり酸味のきいた味付けで、これは人を選ぶかも。ほかにもファラフェル(ひよこ豆コロッケ)や同じ具をピタパンで巻いたラップサンドもあり。

プラッター(ライス&ミート+ピタパン) レギュラー $8,99 スモール $7,99

フムス $2,99(HPのメニューには価格がないため、今は変わっている可能性あり)

NYのごはんはファストフードがいい⑤〜それでもNYを楽しむために

繊細な味付けのソースがとろとろの肉に絡む

Mighty Quinn (マイティクィン) バーベキュー

 

https://www.mightyquinnsbbq.com/menu.html

 

  ブルックリンのスモーガスバーグ(週末に行われる屋台飯イベント)で大人気になり、マンハッタンに実店舗を出店、あっという間に支店もたくさんできたMighty Quinn。ニューヨークでは異国のファストフードがうまいと書いたけれど、ここは例外でアメリカ料理である。アメリカが誇るバーベキュー料理。売りはブリスケという牛の肩バラで、初めて食べたときはほろっ、とろっとした食感と濃いい味にうなった。

f:id:camecon:20191022092720j:plain

↑2014年のスモーガスバーグで食べたブリスケサンド(右)。どれも食べたい店ばかりで選べず、一番人が並んでる店にしてみたら正解だった。20分くらい並んだ記憶がある。左はDOUGHのドーナツ。ここもおいしい。たしかパッションフルーツ?のグレーズだったと思う。レモネードの店名は失念。

 

 スモーガスバーグはただの屋台飯イベントではなく、出店するにあたり厳しい審査があるので、ここで出しているというだけで味はお墨付き、さらにこのなかで大人気なのだから、と期待して食べたのだが、そのハードルも軽々超えてくれた。

「あれ、もう一回食べたいなあ…」と思いつつ、2年後に来てみたら、マンハッタンに立派な店舗がいくつもできていて驚いた。現在、マンハッタン内ではイースト・ヴィレッジ、ウエスト・ヴィレッジ、アッパーイーストサイド、ミッドタウン・ウエスト、そしてバッテリーパークにある。ブルックリンでも3店舗、ブロンクスにも1店舗。

 やっぱりおいしかったんだ…とスピード出世ぶりに納得しつつ、今回はグリニッジ・ヴィレッジ店を訪れる。

f:id:camecon:20191024130250j:plain

グリニッジ・ヴィレッジ店。

 

f:id:camecon:20191022091848j:plain

  ブリスケバーガーが、なにしろうまい。このプレートにパンがついてきて、はさんでもいいし、そのまま食べてもいいし、というスタイル。柔らかい甘めのバンズに、甘すぎない味付けのブリスケ、そしてアジアンな風味のきゅうりピクルス。だからちょっとベトナムバインミーサンドイッチに似ていなくもない。この味のコンビネーションが素晴らしい。ソースやピクルスが決して甘すぎない味付けは、アジア的でとてもこちらの舌になじむ。

 ファーストフードとはいえ薄暗くてシックな店内は広々として妙に落ち着くし、ブロッコリーなどの野菜類も豊富。お店の人が目の前で肉を切ってくれ、ときには「脂身多いとこがいい?」などと部位の好みまで聞いてくれる。ちなみにこのきゅうりとペッパーのピクルスは無料で、好きなだけ盛ってくれる。

 

f:id:camecon:20191024130526j:plain

↑NY最後の食事はどうしよう、となったとき、夫が「もう一度Mighty Quinnに行って別の肉を食べてみたい」と言うので、イーストヴィレッジ店へ。左がチキン、右が(見えないですが)ポーク。どちらも美味でしたが、思い出すのはやはりブリスケだなあ…。

一滞在で同じ店に二度行ったのはここだけである。

f:id:camecon:20191025133404p:plain

 

こちらはイーストヴィレッジ店。

次に行ったら、ジャスミンライスを頼んで丼にして食べたいと思う。

 

 

 

NYのごはんはファストフードがいい④〜それでもNYを楽しむために

豆と野菜とスパイスと…ハイクォリティなイスラエル料理

 Taim(ファラフェル)

http://taimfalafel.com/

 

 

 ファーストフードのほうがおいしいのかも、と思い至って、最初に見つけたのがこのイスラエル料理、Taim(タイーム)。タイームとはヘブライ語で「おいしい」の意。シェフのEinat(エイナと読むのか?)が故郷のテルアビブのファラフェルが恋しいあまり、思考錯誤して独自のファラフェルレシピを完成させた。それをこのNYでわかちあうため、2005年ヴィレッジに小さな店をオープン。それが今ではマンハッタン内に5店(ヴィレッジ、ミッドタウン、ノリータ、フラットアイアン、ウォール街)、ワシントンにも1店、他に本格的なイスラエル料理レストランもオープンして…とこちらも立派なサクセスストーリーである。

 ひよこ豆のコロッケ、ファラフェルプレートは、ファラフェルにイスラエルサラダ、オリーブや野菜のピクルス、フムス、タヒニ(ごまペースト)が並ぶ。これらをピタパンのなかに詰め込んで食べる。ピタパンは半分に割ったもので十分おなかが膨れるから、一人前でふたりいけてしまう。これで8.95$。リーズナブルだ。「そのきゅうりサラダ、もう少し多めに」とか、好みで量の加減ができてありがたい。フライドポテトなどの充実したサイドを1,2品追加すればもう満腹である。ちなみにこのポテト、ハリッサ(中東の唐辛子ソース)かアイオリソース(にんにくマヨネーズ)のどちらかが選べる。

 

小さいけれどハイセンスな店内

 基本、ファーストフードなのでテーブルというよりはカウンター、いやむしろ荷物台、といったせせこましい場所で食べるのだけど、インテリアも並んでいる食材もぴかぴかで抜群に清潔感あり。ビルが工事中でよくわからない写真になってしまったが、センス抜群なのだ。

↑工事中でよく見えないのが残念ですが…、とてもおしゃれな外観&内観。

 

↑コンパクトな店内にたくさん人がいる。

 

美味しいものを、最も効率的に提供 

 HPを読むとこだわりはレストラン並みだとわかる。ファラフェルはオーダー後に揚げるし、ピタパンは毎日焼く。ハーブや野菜はその都度刻む。ベーキングソーダ等は使わない。さらに、ファラレフェルを大きく見せるためのパンくずを入れることもしません、とまで宣言している(!)。

 調理や素材に妥協しない、でもファストフードスタイルで提供する。そうすれば限りなくリーズナブルに美味しいものが食べられる、ということなのかもしれない。

NYのごはんはファーストフードがいい③〜それでもNYを楽しむために

クリスピーな食感の秘密は…

jian-bin company(ジェンビン)上海クレープ

https://www.eatjianbing.com/#home-section

 春〜秋の毎週日曜、ブルックリン橋のたもとで行われるブルクリン・フリーという蚤の市に出店していた屋台である。他店をおしのけて人がいっぱい並んでいたので、「おいしいのかも」と並んでみる。

f:id:camecon:20191021151829j:plain

 ジェンビンというのは煎餅と書くらしく、しかし日本の煎餅とは全然違って、簡単に言うと上海風クレープである。HPによるとジェンビンにもいろいろあって、もとは中国北部で生まれたもので北京で食べられていたものだが、これとは別に上海の屋台飯として人気のものもあり、この店のジェンビンは後者になる。

 屋台なので作っている様子が目の前で見ることができる。生地をクレープ鉄板にひどくランダムになすりつけ、その上に卵を直接割り、ヘラでなすりつけて生地のない空間を埋めて円形にしていく。卵をほぐしもせず、きちんと生地に混ぜこまないというのが新鮮だった。

f:id:camecon:20191021151910j:plain

 

見るからにぱりっぱりに焼き上がってくると、野菜や肉ペースト(見るからに辛そう!)、甜麺醤などをぼんぼん乗っけていき、最後、揚げ煎餅的なもの…クイビンというらしい。英語ではcrackerと書いてある…をばりばりっと割って載せて、巻き上げて出来上がり。クイビンのカリカリがここのジェンビンの決め手なのだという。

f:id:camecon:20191021151749p:plain

「当店のジェンビンは甘みと塩味のコンビネーションと、辛いけど軽く、さらにクランチーな食感が自慢です」と書いてある通り、生地もほんのり甘みがついていて、調味料も甘い甜麺醤使用、しかし肉味噌はびしっと辛くしょっぱい、と確かに甘辛のバランスが絶妙だ。ああ辛い。ああうまい。やっぱり食い物はアジアだなあとしみじみ。

しかし、値段を確認してみると、これが$13(2019年8月現在)だった。

日本感覚だと高いじゃないか。こんなにしてたのかあ…気づかなかった。でもふたつに割ったサイズが文庫本程度とかなり大きく、食べごたえあり。格安とはいえないけど、この味でこの値段ならまた食べたいと思う。