中年女性は批判に弱い
「こうして読むと、マリア、気持ち悪いね」
と、前回の記事を読んだ夫が言った。
「俺はマリアに会ってるから、いい人だってわかるけど、ああして文章になって読んでみると、ただの気持ち悪くて怖い人にも思えなくもないね」。
………。
「それはつまり、私の文章力がマリアを表現しきれていない、ということですか?」 と丁寧語で聞いてみると、「まあ、そういうことかなあ」。
それで批判に弱い中年女性は無性に頭に来て、昨日は終日、書こうと思っていた旅行記の続きも書かずにドラマ「LOST」(今更!)と「ハウス・オブ・カード」をだら見して終わってました…。
しかし今日は、そんなことではいかん、と思って立ち直りました。というわけでもう夕方だけれど書いている次第。前回の記事も読み直して、もっとマリアのいい人ぶりが伝わるよう、書き直さなければ。……そのうち…。
記憶からあふれたソフィア王妃芸術センター
とりあえずは、マドリード2日め、洗濯事件の続きの夜から。
ソフィア王妃芸術センターは平日19時~21時は無料入場できるので(日曜は13時~)、夜でかけることにした。ここも宿からは10分かそこら。おもしろかったのですが、昼の衝撃が強すぎたせいか、マリア洗濯事件で動揺してたのか、あまり記憶にありません…。もちろん、行くべき場所ではありますが。たしか、面白い絵もたくさん見たのですが、プラド(とくにゴヤ)→腰痛でマドリードをさまよう→洗濯してあった…のたくさんの事件が短時間に起きて、私の容量はもういっぱいだったのかもしれない。とにかくあんまり覚えていない。
帰り道、夜のマドリードをふらふらしながら、まだまだがらすきの、開店したてのレストランをのぞき、なにか食べようかと相談するが、おいしそうな店がありすぎて、決めきれない。しかし、夜にがっつり食べる習慣がないため私はなんなら食べなくてもいい。というか、夜9時におなかふくらませたくない。そこで、「俺は食べたいんだ」という夫の好きに決めさせることに。
バルにするかフレンチにするか…などと悩んでいたはずなのに、なぜか連れて行かれたのはハンバーガー=アメリカン料理店。え? スペインでハンバーガー? なぜ?
「なんか肉が食いたい。評価も悪くないし」
ふうん……いいのかなあ…と半信半疑で入店。店内はがらすき。土曜の夜9時すぎなのに、すいている。大丈夫なのだろうか。あの店もこの店も混んでたけど。
しかも、なんとも不思議な店だ。椅子やテーブルはウッディなアメリカンカントリー風なのに、店内のいたるところに古代ローマ風円柱がある。しかしその合間の壁には、メニューをラフに書いた黒板。いわば東京のカジュアルダイニング的な…。メニューを見ると値段は結構する。カトラリー類は重厚でグラス類もいろいろおいてあって、ファミレスとは一線を画してる風でもある。なんだろう…よくわからない…。なにを目指してこの店になったのだろうか…。戸惑いながら夫は当初の目的のハンバーガーを、私は野菜のグリルを注文。
そしたら、またも美食の女神が現れたのであった。マドリードのアメリカン料理店にまで。
まず、お通し的な、必ずついてくる小さなソーセージ類をひとくち適当に口に入れたら、「あら!おいし!」と驚く。「やっぱり肉の国だからかなあ?こんなおまけのような肉がやたらおいしいなあ」と、何も食べないつもりだったのに、1本2本と口に入れてしまう。続いてきた野菜のグリルも、大ぶりに切った野菜たちが炭火で焼かれて、どーん、と大皿に載っていて、実においしそう。
実際、しっかり火が通っていて、香ばしくておいしい。夫のハンバーガーも予想外に立派なのが来て、テンションがあがる。食べたら食べたで、「うわ、これうまい」と声を荒げる。「肉が……肉が…」と言いながら、むしゃむしゃ食べる夫。
ひとくちもらってみると、たしかに肉がうまい。今挽いた、というような塊肉の残り香(?)をたっぷりふくんだ、ジューシーなパテで、あー、これは確かに、と、ひとくちのはずがふたくちみくち、ととまらない。しかも挟んであるのはレタスではなくルッコラ、とかいうのも気が利いてる。パンはチャバタだし、なんだろう、ここはマドリードにある、イタリア風アメリカンレストラン、なのか?
こんなへんてこりんな、しかも週末の夜にがらすきの店なのに…つくづくおいしい店の判断は難しい。
しかし本当に何を食べてもおいしい。なにか不思議なものに守られてる感すら出てきたなあ、などと言い合いながら帰りました。
夜のマドリード。
…で、このあとは風呂に入って寝るだけ、なのだが、このあともかるーく事件が起きるのであった…。つづく…。