ちょっとした山歩きのつもりが…
今年の初めに仕事で三重県の観光についていろいろ調べることがあり、それで思いっきり旅行熱が高まったので、「あったかくなったら馬越峠へ行く!」と宣言していた。5月か10月! と叫んでいたのだが、なんだかんだと5月は過ぎ去ったので10月になった。最近はホテルも高いのでかなり早い時期から予約して、ガイド役の友人の予定も抑え、仕事の打ち合わせまで詰め込んで準備万端。直前まで曇りのち雨の天気予報でへこんでいたけれど、急に晴れることになった(だが気温27℃!)。やったやった!と盛り上がっていたけれど、前日までの雨で山道の石畳はつるつる状態。なかなか危険なハイキングになりました。
私が登った馬越峠は、三重県の紀北町と尾鷲市の境界にあるやつ。まずは紀州自動車道・尾鷲インターまで車で行き、ゴール地点に車を停める。そこへガイドの地元の友人が颯爽と車でお迎えに来てくれて、スタート地点まで連れていってくれた。すごい。
馬越峠の自慢は石畳である。江戸時代、紀州将軍・吉宗が来るぞー! と町民総出(?)でそれは立派な石畳を敷いたのだけど、結局お殿様は来なかったという…。と、聞いた。しかしおかげで”熊野古道伊勢路随一”と謳われる路ができた。
「全然大丈夫」では全然なかった
すでに50回くらい登ってるという、頼もしすぎる友人によると「そんなきつくないよ。前、伊勢の朝熊山に登ってたよね。あれより楽、楽」と言われたのでろくな装備もせずに夫とともに出かけた。スタート前にお茶を買ったのだけど、夫は重たいのが嫌、という理由で200mlの小サイズを購入、これがあとで強烈に効いた。水は命。
山登りほぼ未経験の夫は、開始10分あたりで「そのうち腿が上がらなくなりそう」と早くも弱音。スタート地点まで送ってくれた友人の友人は「ストッケ、いらない? 貸すよ?」と我々夫婦に貸してくれた(友人は不要)。うわー、ありがたい。
歩いてるときは汗だくで息がきれてそれどころではなかったのだが、帰って来て写真を眺めていたらつくづく美しい道だなあ。さらに、今回の達成感がなかなかだったので、来月行くマレーシア・ペナン島でもトレッキングするか! と調べてみたのだが、Youtubeなどで見るそれは、おもしろそうなもののかなりのゴミが散乱しており、馬越峠の美しさを再確認。日本だからなのか。さらに夫によると「あの人、ゴミ拾ってたよ」と友人を指して言う。なんと…。日頃から紀州を愛しすぎている人だとは思っていたけど、さすがである。なぜ私と友人なのだろうか。見習わないと…。
ともかく、道は続く。途中、水休憩をするたびにそれぞれのミニサイズ黒豆茶がどんどん減っていき、不安に襲われる私たち夫婦。気温は27℃(山中はもすこし低いだろうが)、汗だくなのである。このひいひいはあはあ言いながら土を踏みしめるっていう行為がしたくてここまで来たわけで、念願叶ったわけだけれど、いやでもつらい。友人の保証「全然大丈夫」は思い切り嘘だったと、夫婦で小さい声で囁きあう。いや、彼女にとっては「全然大丈夫」なのだろう。汗はかいてたけどひとつも息があがってなかったし、水もたいして飲んでない。「騙された…」。私達へたれ中年夫婦は、へばりながら愚痴を言う。そして水は足りない。ああどうしよう。喉がかわいたよー! ここへ濡れた石畳みがすべりまくり、大変さが加速。
「昔の人は雨の日は通らなかったの?」
「草鞋だったから。草鞋はすべらへん」
…とのこと。なにやら棕櫚縄とかいう、紐?を靴に巻けばいいそうで、それを持ってこなかったことを友人は悔いていた。彼女のようにトレイル&ラン用シューズなら、こんなにすべらなかっただろう。私たちはフツーのスニーカーだった。帰ってからさっそくトレランシューズを物色した。
石畳、木々だけでなく、シダ、苔、小川…どれも美しいのだ。
なぜか天狗倉山まで登ることに!
半分くらいまで来ると、天狗倉山の入り口となるジャンクションが現れる。このまま峠を降りてもいいし、さらなるハードな登山、天狗倉山を目指してもいい。最初はそんな予定は全くなかったのだが、夫が「俺、Youtubeで天狗倉山登山、見てきたよ。登ろうぜ」と、息があがってるくせに言い出す。友人も「えっ、登る? 行っちゃう?」とエキサイトしだした。うっそ…。それはちょっと…と思いつつも、この状況で「やだ」というのも悔しいだろう…。
そして水が尽きた。私のも、夫のも。青くなっていると友人が「あたし、まだもう1本あるから、と私のかすかに残った黒豆茶に水をたしてくれた。黒豆茶が残っていたおかげで、ふたたび200mlの黒豆茶ができた!
それにしても彼女がいなかったらどうなっていたのか。ふたりきりだったらおそらく引き返していたと思う。「こんなの無理じゃね?」とこちらが思うところを、平気な顔でずんずん前を行く友人がいたからこそ、「大丈夫らしい」と思い直すことができたのである。先達あらまほしき。
というわけで天狗倉山へ。片道30分。さらなる急傾斜。ほとんどよじ登らんばかりにして登る。
天狗倉山のてっぺんには巨石
この岩の裏側にまわるとハシゴがついている。ここらへんはもうストックがあるとかえってあぶないので、預けたりそこいらに置いて登る。
そして岩の上からは…
す、素晴らしい…。まさかこんな眺めが待ってたとは。尾鷲が一望。中央の四角い敷地は、火力発電所跡。町のシンボル的存在だったけど、老朽化のため、ついこのあいだ撤去されたのである。この広大な敷地にはなにかできるのだろうか。
高所恐怖症なので無視して帰ろうとしたのだが、なぜか2人が登っているのでくやしいので登る。チェーンを握ると揺れてなお怖いので、はしご本体を握るのがこつだった。岩の上からの眺めは最初の岩と同じ感じの絶景。
下山も大変だった
負荷としては登りより下りのほうが実は大きい、とはよく言うけれど、たしかにすべりやすい急斜面を降りるのは大変だった。…が、とはいえなにしろ「もう峠は超えた」という精神的安堵が大きく、やっぱり下りのほうが絶対的に楽です。
そしてゴール!
ここが最初に車を停めたゴール地点。お疲れ様でした! ちなみに尾鷲ICからこの馬越公園まで来るのもとんでもない悪路でした。住宅がぎっしりつまった狭い路地+垂直か? っていう急斜面をかなり走ったあとに着きます。友人は暴力的ともいえるスピードで飛ばし、まるでアトラクションのようなスリルと興奮であった。彼女のドライブテクだからすんなり来たけど、ここにすら自分たちではたどりつけなかった気がする…。
山村牛乳のソフト(ソフトではない)
寿司を食べ(なぜか未撮影)、帰りに国道42号線沿いの魚市場「おとと」へ。魚や野菜や加工品を物色。
三重県が誇る山村牛乳のアイスを買う。コーヒーアイス。激うまだったのは登山のあとだから? しかしコーンは予想どおりしなっしなで、あちゃーと思ったけど、食べ進むうちに「こういうものだと思えばいいのかも」と思ったら、このふにゃふにゃ具合が愛おしくなってきた。
おまけ
ちなみに、この日の服装は直前にユニクロで調達した(中のボーダーは違うが)。天気予報では27℃で、めっちゃ暑い、しかし長袖長ズボン、というのがなかったのだ。薄くて軽ければなんでもいい、と投げやりに買ったのだが、なんだか色もかわいいし履きやすいし、シルエットも悪くない…というかすごくいいので突然お気に入りに格上げになってしまった。いつまでも暑い、でももう麻はねえ…というこの時期に妙に使えるのである。ブルゾンはポケッタブル。
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