独楽ログ〜こまログ〜

45歳、女性、日本人、がひとりで毎日楽しくすごす方法を検証。

スペイン旅行記 その22 サラゴサ、スペイン地方都市の底力を知る

やはりここでもシャッターが…

 

 ムデハル様式のアルハフェリア宮殿と聖母ピラール教会が名物の古都…というふれこみのサラゴサだけれど、近代的な駅に、その周囲はがらーん、となにもなく、バルに向かってタクシーに乗ってみると、スーパーや団地など、ごく普通の郊外都市という印象しかわかなかった。まあ、とにかく極寒&そぼふる雨という悪条件なので、景色も自然としけって見えてしまうのだけれど。

 それでもだんだん店や人が増えてくるエリアに入ってくると、なにやら楽しげな雰囲気に。「ここだよ」的な合図をされて降りて、ぐるりと見渡してみたら、目当ての店はシャッターが降りている………。

 ショック。大ショック。この寒さでこんなところで降ろされて(ていうか降ろして、と言ったのは私らだけど)、店がやってないなんてー。9時開店のはずなのにー(現在9時半)。簡単には諦めきれず、ドアの隣の小さな窓に顔をくっつけてのぞきこむ。すると、中ではおじさんやおばさんが働いている…。もう少ししたら開くということなのだろうか。

 ふたりで顔をガラスにくっつけていると、おじさんが気がついて何か言っている。私は「駄目?」の意味でバツ印を指で作って尋ねる。おじさんはバツとも丸とも言わず、他のスペイン人同様、とにかく叫び続けている。そのやりとりを続けたら、シャッターを開けてくれた。時計を指さしたり、バツ印や丸印を作ってコミュニケーションをはかると、どうやら店は11時オープンのよう、とわかる。オフシーズンだからなのかな? でも、おじさんはカウンターを指して座れ的なことを言う。

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⇧これはシャッター開いたあと。

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 私たちはぺこぺこしつつ、席に座る。メニューも水も出てこないけど、目の前のガラスケースなどにずらりとおいしそうなものが並んでいて、きっとこれを頼んでもいいのだろう、と判断。

 私たちのちょうど目の前にいたおばさんは、露骨に嫌そうな顔で、むっつりとしてひたすら作業しているが、オーナーらしいおじさんがいいと言ってるからいい、と心を強くして何を頼もうか考える。

 

 ちなみにこの店は「celvino」という店なのだけど、いくつかの記事で「間違いない」と書いてあり、しかも朝9時からやっている&このあと行くアルハフェリア宮殿に近いということで選んだ。記事にはこんな紹介文が。

 

場所は中心街から離れてはいますが、訪れるだけの価値はあるお店です。このバルはサラゴサのタパスのコンクールで賞を取ったこともあるお店なので、種類の豊富さだけでなくタパスのレベルも間違いありません!

オーナーはスペイン語がわからなくても、親切に対応してくれます。アルハフェリア宮殿を訪れるなら是非こちらのお店に立ち寄ることをオススメします。

 

ムイビエン、あるのみ

 とにかくおいしそうなものを指さして、次々頼む。

 

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 ツナのステーキ。こちらの人は魚介にすぐ芋を合わせる。そしてにんにくと唐辛子(たぶん)のソースを合わせる。それが最高だ。びっくりするほどおいしくて、どうしていいかわからなくなる。おじさんが、どうだ?というので、ムイビエン、ムイビエン、と繰り返して大きくうなずく。たぶん、気持ちは伝わっている。

 

 その後、なんだかわからない甘い味付けが絶妙のエビの串刺しとか…もうこの写真だけでも、うまさがしたたっているのだが…。

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 きのこマリネとか

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 結局最後までなんだかわからなかった、なにかをペースト状にして型抜きして焼いて、きのこクリームソースをかけたものとか、

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 あと、頼んでないけど、「これも食え」と出された、パンコントマテ(トマトを塗りたくったパン)に豚肉のソテー、さらにおそらくフォアグラ、うずらの目玉焼きとか、

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 もう、すごい。

 何を食べても悶絶するうまさ。こんなごく普通に愛されて、ごく普通に営業しているだろう小さな店で、こんなレベルのものが食べれるなんて。なんということだろう。オーナーなんてもう、エプロンすらしてないし、一見ごく普通の、ごく気のいいおじさんにしか見えないのに。我々はただ、うまい、すごい、ムイビエンとだけ唱えて、ひたすらに食べる。

 

お客さんからも目が離せない

 そのうち、常連さんたちがやってきて、立ち飲みし始めた。オーナーもワインがぶがぶ飲みながら、会話に加わる。まるでアフター5の光景だけど、実際はまだ午前中なのよね…。彼らのうちのひとりは、スペインで見たふたりめの背広姿の人ではあるのだが。みんな仕事は…??

 

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  さらにひとりで入ってきたおじいさん。食べてる姿がかわいらしくて、目が釘付け。なんだろう、仕事の途中なのよね…。なにかを配達してるのかしら…。なんの根拠もないけどなにかの配達人のような気がしてならない。

 クリームソース的なものがかかった芋に、パンをつけて食べている。 このとき糖質オフが私の気になっているタームだったため、「なんというハイカーボな食事なのだ」と心配だ。 ワインも飲むのがスペイン流。

 注文の仕方からして明らかに常連なのだが、オーナーとも、他の常連ともきやすく口をきいたりはしない。無口。心なしかさみしげに見えるのが、たまらない。

 

スペイン人のスケジュール

 

「スペイン人は9時に出社するとまず、みんなで朝食に行く。それから11時に軽食をとって休憩して、14時からランチ。たっぷり2時間くらい休むから、彼らにとって「午後イチ」は16時半をさす。仕事は6~7時くらいまでで、夕食は8時でもはやくて、10時からが普通。彼らは、“これ以上は働かない。だって働くために生まれてきたわけではないから”と言う」

 …というようなことを、スペイン在住の高城剛さんが書いていたなと思い出しつつ、彼らをしみじみと眺める。

 

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 おじさんをつまみに満腹になるまで食べて、「もういい」とオーナーに手のひらを広げて示して、終了。おじさんは、一皿ごとに「どうだ?」と聞きにきて、そのたびに私たちは、大きくうなずき「ムイビエン!」と言う。そうすると、オーナーはうれしそうに笑って、また向こうへ行く。これが楽しかった。

 

 会計を終えていよいよ帰ろうとすると、握手を求められた。私だけ…。なんだろう。なにかが認められたみたいだ。「俺たち、お互い言葉もわからないのにやったな!」みたいな感じだろうか。思い切り握って、感謝を伝えて店を出た。味からなにから、こんなにいい思いをする食事って、なかなかないものだ。外は相変わらず冷たい雨だけれど、もう全然気にもならない。

 

お茶を飲んで、今食べた素晴らしいものたちの反芻。かわいいカフェだった。

 

遺跡もちゃんとまわった

 おいしいものを食べて興奮状態になった私たちは、雨も寒さもものともせず、歩いてアルハフェリア宮殿へ向かう。ごく普通の郊外都市っぽいこの街にそんなものが?と不思議だったのだが、地図の通り壮麗な宮殿が見えてきた。圧巻の美しさ。

 

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レコンキスタ終了後の15世紀以降にも、スペインに残ったイスラム系の人々によって作れたものをムデハル様式というようです。

 美しくて、同時になんというか、牢獄のような息詰まる恐ろしさもあり、それは流れた血の量を想像するからだろうか? お城ってそういうものなのだろうか…、いや、そもそも古いものって、そういうもの?…などと思いながらなかを見物。

 

聖母ピラール教会へも

 宮殿を見終わっても、まだ昼すぎ。マドリードへ行く列車は3時すぎ発。夫は足の痛みと寒さでギブアップ、駅の待合室(さすがにここは暖かい)で待っているというので、私ひとりでタクシーに乗って聖母ピラール教会へ。タクシーに乗るたびに「謝謝」と言われるので、「ノー。ハポネス」といちいち訂正する。しかしみんな、こちらが言葉わからないとわかってるはずなのに、一生懸命しゃべってくれて、親切なのか、単なるおしゃべりなのか。楽しいからよいですが。

 

 聖母ピラール教会は撮影禁止。古くて暗くてもちろん美しい教会でありました。子供の頃から近所にこんなものがあって、そこに自動的に通わされて、説教を聞かされていたら、それはもう自動的に信じるしかないよなあ、と素直に思わせる、宗教のあらがえないパワーをしみじみと感じさせる教会だった。サグラダ・ファミリアとはまた全然違う…なんだろう、凄み?みたいなものが静かに充満していた。

 

  門前町(?)もぶらぶらして、駅に戻ると、電車の時間。

 さあ、ついにマドリードです!