独楽ログ〜こまログ〜

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スペイン旅行記 その30 マドリード3日めも食べて終わる

マドリード最終日 

  さて、ついに旅行も最後の日になりました。出発は明日の早朝なので、楽しめるのは本日が最後。けれど、とにかく念願のプラド行きは果たしたので、あとはなんでもいいかあ、なにも決めずに今度こそのんびり過ごそう、と決意。

マドリードは見るところがない」といわれたもするそうで、みんな時間があるとここから1時間くらいで行ける古都トレドに行ったりするらしいのだが、私たちはそれやると疲れ果てそうなので、やめ。王宮見学でもしますか、ということになった。

 

 宿からひたすら西へ。サンタ・アナ広場~マヨール広場~サンミゲル市場を通過して、約20~30分。散歩をかねてちょうどよい距離だ。実はこの道、昨日の祭りからの帰り道通った、と途中ようやく気づく。このとき、マヨール広場でなにか作っていた。

 

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 なんだろう…と思いつつ、追求せずに通過してしまったのだが、今わかった。

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↑アルゼンチンのお祭りで、アルゼンチン式に肉や野菜を焼くための装置だったのだ。

上に肉を、周囲に野菜を並べ、気長に気長に待つというものらしい。食い意地の張った夫は、「いつ食べさせてくれるんだろう。ぜひ食べたい」と言って、その場から動かない。

 

その間にお兄さんたちがパンケーキ(らしきもの)をひっくり返したり、かぼちゃの位置を替えたりして、お世話しているのが楽しいのだが、それにしても食べさせてくれる気配はまるでないので、とにかく先に王宮へ行くことにする。

 

 途中、有名なサンミゲル市場も通る。「観光客相手で、値段は高いしモノは適当云々」とあまりいいことを聞かないのだが、通りがかりにあるならぜひ見よう、ということでここも帰りに来ることに。

 

 例によって朝ごはんは調達できなかったので、王宮が開くまでの時間、目の前にあった素敵なベーカリーに入る。

 

なかにはまるで靴屋のようなソファがあって、不思議。キッシュを書い、そこに座って食べる。これまた「!」といううまさ。

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⇧ショーケース、真ん中がキッシュ。

こんなにあれもこれも「おいしいおいしい」と書くと、まるで味のわからない単細胞のような気がしてつらいのだけれど、しかしおいしかったのは事実。生地もうまかったけど、アパレイユが抜群においしいキッシュであった。卵と生クリーム(もしくは牛乳)で作るキッシュのアパレイユ、ひとくちめはおいしいのだがすぐにくどく感じてきて、生地もバターまみれだし、食べ終わると「もういいや」と思ってしまうものなのだが、なぜかここのキッシュはソフトな味わいで、おかわりしたくなるほどおいしかった。なにか違うものを使ってると思うのだが、なんだろう? 他に牛乳がおいしいとか、そんな理由なのか? 「なぜこう、いちいちおいしいのだろう。東京は味のレベルが低いのか?」とあれこれぶつぶつ言いながら王宮へ。

 

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 この王宮は、私の興味のあるフェリペ2世は住んでなくて、そのあとのフェリペ5世が建築を命じて1738年に建築開始、完成は1755年とのことで、食いつきがやや弱い私。しかし美しいこと、でかいことには変わりなく、たどりつくと「おおおおー」と声をあげてしまう。

 

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⇧このアーチを通して、マドリードの郊外が臨める。とても美しい。

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 館内は撮影禁止。内部も豪華絢爛だったけれど、すごかったのは王立武具博物館。ここも写真撮影禁止なのがかえすがえすもくやしい…。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/a4/ArmeriaPalacioRealMadrid.JPG

 写真はwikipediaよりお借りしました。要するに鎧、剣、甲冑など様々な武具がずらりと展示してあるのだけど、こんなものを間近でまじまじと見たことがなかったので、ものすごくおもしろかった。こんなにすさまじく重く閉塞感のあるものを見につけて戦争に行ったのか…と思うと、人って、やろうと思えばなんでもできるんだなあ、としみじみ。もちろん閉所恐怖の私にはこんなもの、着ることすらできない。

 なかには子供用の甲冑まであって、どういう理由でこんな子供が戦に? 王子などがパフォーマンスで? そうであればいいけどそうでないならつらいなあ…とか、馬用の甲冑などを見ると、こんなものつけられて人も乗せて…と馬ってすごい、だとか、この剣は何人の血を吸ったのだろうとか、そもそもこれだけ防備していても、槍をさせば突き刺さるものなのか? とか、こんなに剣や甲冑を装飾して、つまり戦は祭りなのか?……等々、頭がぐるぐるして楽しかった。

 

予想外のサンミゲル市場

 昼近くになり、帰り道をサンミゲル市場へいそぐ。決して期待してはいけないと肝に命じつつ、とにかくおなかすいて…。

f:id:camecon:20170505161158j:plain だが予想に反して、改装したばかりらしく、ぴかぴかでデパ地下みたいで楽しそう。

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ものすごくおいしかったヨーグルトメーカーのショップもある。いろんなトッピングをしてくれるらしい。しかしここのヨーグルト、普通に食べるほうがおいしいんだよな、と昨日プレーンタイプを食べて思っていたので、トッピングには興味わかず。

 

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 さっそくいろいろ食べてみる。なにせほんの少しから買えるから、失敗しても痛手が少ない。目についたものをちょっとずつ食べる。

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  やはり期待(?)に反してどれもこれもおいしいではないか……どういうことだ。かなりおいしいのだ。

 

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サラゴサのバルで観て、謎だった(聞いたけど、スペイン語でまくしたてられてなんだかわからなかった)食べ物にも再び出会い、これが魚のすり身だったのだと知る。SURIMI。世界共通語になりつつあるらしい。おいしかった。

 

「肉、焼けたかな!」

 と夫が言うのは、行きがけのアルゼンチン祭りのことだ。彼はまだ食べさせてもらう気でいるらしい。サンミゲル市場でだいぶおなかふくらませつつも、またマヨール広場へ。

 

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 焼けている!ずいぶん焼けている! 煙の量と、下の野菜を見ると、どれだけ時間がたったかわかる。

「もう焼けてるよな。もう食べれるよな」とわくわくする夫。ふたりでじーっと「その時」が来るのを待ってみる。

…が、いつまでたっても肉を切り出す気配はなかった…。かなーり待ったのだが、事態が変化せず、ついに断念…。その後夫は、写真を観るたびに「あーあ。どんな味だったんだよ…」と残念がっていた。

 

美食は終わらず

 

 サンミゲル市場でいろいろ食べたのだが、朝食なんだかおやつなんだかわからない中途半端な量で、アルゼンチン肉が食べれなかったこともあり、「やっぱり昼を食べるべし」ということになった。宿の周辺には気になる店がたくさんあり、せめてあと1、2軒は試してみたかったし。

 

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 そのなかでこの店を選んだのは、外観がとびきりかわいくて、通りかかるたびにいつも大賑わいだったから。入ってみると、いつにもましていっそう混んでいた。日曜の昼すぎ。バルはこんなに混むものなのだろうか? バルとかレストランとかカフェというよりむしろクラブ、もしくは満員電車のような店内をなんとかかいくぐってわずか1席空いていた席へ。おなかはすごく減っているわけではないからハムとイワシという、おつまみのようなものを頼む。こんなに客が入り乱れていて、いち東洋人の注文なんか通るのだろうか…と不安になりながら待つ。それぐらい混んでいたのだ。

 

 

 しかし、ほどなくオーダーは来た。

 

 すごい迫力で。写真でどれくらい伝わるかわからないのだけれど、これが目の前の小さなテーブルにどん、と置かれたときのショックはなかなかだった。もりもりのイワシ。そしてハム。たしかソーセージと聞いた気がしたのだが、ハム。

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「うわ、酸っぱい!」

 酸っぱいものは得意ではない夫が、口に入れたとたん、叫ぶ。酸っぱいもの好きの私は、じゃあ私しか食べれないのか?と心配になったがすぐに

「でもすっごくうまい!」とさらに叫んだ。

 私も食べてみる。ほんとにしっかりと、がっつりと酸っぱい。そしてものすごくおいしい! うわー、と言うほど強烈な酸味なのに、きつさが全くない。ワインビネガーの差なのか?

「この酸っぱさは日本にはないなー、ありえないなー、でもうまいなあ」

 と言いながら、夫は夢中で食べる。私も負けずに食べる。あっという間に完食。おつまみのような皿だが、パンと一緒に食べたらおなかはかなりふくれる。もちろん、ハムも文句なしにうまかった。

 ともかく、この店も、大当たりだったのだ。いったいどうして? こんなに毎回行く店行く店すべておいしい、なんてこと、あるのだろうか。しかし、半年たった今でもあのイワシの味はくっきりと思い出せる。それほど強烈だった。あの混み具合も、あの味なら当然だろう。

 客の一部分はママ風の女性の集団。午前中に子供の学校かなにかの集まりがあって、その帰りに昼食兼飲み、という感じだろうか。みんなめちゃくちゃよくしゃべる。立ったまま、グラス片手に、ときどきつまみを口に入れて、しゃべる、笑う、食べる、飲む。この人たちが飲んでさわぐのは夜だけではないのだ…。

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⇧こんな感じ。

 結局、最も楽しいことは誰かとこうやって盛り上がることなのだろうか。そんなことをもう何年もしていない自分は、うらやましくなり、そして不安にもなる。

 

「いいなあ~楽しそう」とママたちを横目で見ながら外に出ると、外は外で盛り上がっていた。喫煙組がいたのである。

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 人付きあいの大切さを改めてつきつけられつつ、夫はまたどこぞで仕事するというので、私は再び、ひとりぼっちでプラド美術館へ。

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 昨日観た名画をもういっかい観て、昨日流して観た絵たちもじっくり見直す。二回観るって大事かも、としみじみ思いつつ観る。一回目はどうしても「嵐のように過ぎ去っていく」という感じで観てしまうのだが、二回目はだいぶ冷静になれる。日曜の午後だが、オフシーズンだからか館内はどこもほどほどの混み具合で、やっぱりここは居心地のいい美術館だなと再確認。

 昨日は「遠いから嫌だ」と夫に拒否られたカフェにも行ってみる。美術館のカフェは当たりが多いのだが、ここもいい場所だった。

 

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 驚いたのは、オレンジジュースが衝撃のおいしさだったこと。バルセロナのカフェの搾りたてジュースは、普通の、よく知ってる搾りたての味がしたが、このカフェのそれは、知らない味だった。きっとオレンジの種類が違うのだろう。

 ちなみにオレンジジュースはスペイン語で「スモ デ ナランハ」という。スモがジュースで、ナランハがオレンジ。英語と似たような単語が多い…つまりラテン語源流ということだけど…スペイン語だが、こんなふうにときどき、まるきり英語とかけはなれた言葉になることがある。これは長い間スペインを支配していたモーロ人(つまりイスラム)たちの言葉が影響しているのだそうな。紅山雪夫著「添乗員ヒミツの参考書 魅惑のスペイン」に書いてあった。

「資料を探そう」には載せ忘れたのだけど、これはおもに旅行後に読んだから。時間がなくて…。スペインのなりたちがかなり昔のことからがっつり書かれてあって勉強になります。これを読んで、マドリードで考古学博物館に行かなかったことをかなり悔いました。アルタミラ洞窟の壁画(複製ですが)があり、すごく見応えがあるのだそうな。「添乗員~」は私の資料のなかではかなり教科書的な本なのだけど、著者のスペイン愛がひしひしと伝わってきて、良書です。

 

 そして、実は隠れテーマにしていた目的を、ここプラド美術館で叶えることができた。「ミュージアムショップで素敵なマグカップは手に入るのか?」である。そう、ここにあったのだ。

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 形といい、シンプルさといい、なのに見えないような奥ゆかしさでMUSEO DEL PRADOと浮き彫りが。これはミュージアムショップで手に入るマグとしては最上の部類に位置するものではないだろうか。なにしろ、形が美しい。ありきたりのまっすぐな、どてっとしたマグカップとは一線を隠す流線型。

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 外側は潔く白の無地、でも内側はカラフル。しかもその色が水色、抹茶色(私が買った色)、焦げ茶色と、誰にもこびない渋い選択。いつもなら全色、少なくとも2色は買うのだが、「そんなにガツガツものを買うべきではない。1個で充分じゃ」とどこかから老成した自分の声が聞こえてきたので、思い切って1個にしてみた。このマグの美しさは2個3個と並べたときこそ、発揮されるとわかってはいたのだが…(単体だと色が渋すぎて地味…)。3色並べた姿を公開したい、とググってみたが、なんと見つけられなかった。うーん。やっぱり買うべきだったのかなあ。

 値段も忘れてしまったのだが、「あれ?意外と安い!」と思った記憶はある。12ユーロくらいだろうか。

 

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⇧夫はひとりでプラド美術館隣の公園にでかけたそうな。この公園のなかには、マリアのお兄さんがデザインしたエリアもあるという。

そして最後の美食

 そんな充実した午後を過ごして、夕方帰宅。「最後だから夕飯も食べよう」と夫とともに外に出る。「もう一回「Bistoronomika」でもいいよね、という案も出たのだが、日曜は休みだった…。で、またぐるぐると回る。日曜なので休みも多く、なかなか店が決まらないなか、夫が「ここはどう?」と聞いてきた。まあごく普通にかわいらしい、カジュアルなバル…というかカフェ?な佇まいだったのだが、店の前にでっかい垂れ幕が下がっていて、「トルティーヤ」だの「パエリア」だの印刷されている。「こんな店は嫌だ」と直観が走る。なんだか…自由が丘あたりの、若者を狙う軽薄なカフェレストランのようではないか(すみません。自由が丘に罪はないのですが)。なのでいったん通りすぎたのだが、なんとなくどこも決め手に欠けて(まあつまり、例によって時間が早いからどこもがらすきで、入るのがためらわれるのだ)、夫が妙に「ここ、いいみたいだよ? 評価も悪くないし」と押してくるので、まあいいか、と折れて入店。7時くらいだったので、客は1組のみ。おそらく、観光客の家族連れだ。

 なにも期待せずに、とにかく全然野菜が食べれていないので(スペインは野菜不足になる、と書いてあったけど本当だった)、サラダと、夫が食べたいというトルティーヤを。

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↑サラダがきた。

 

これをしげしげとながめてすこし不思議な気持ちに。なんだろう…。おいしそうなんだけど、このサラダ…。トマトはちゃんと皮がむいてあるし、ツナはマグロを今コンフィしたかのようなチャンク感、ごろんとしてておいしそう。

 実際、食べたらおいしいし! ドレッシングも普通で、でもばしっと味が決まってるし、量も適量。なんだろうこの店、すごくちゃんと料理してるんだ!とまたダメ押しの驚き。またここでも当たりに出会ってしまったのか。こうなると当たるのがまずいかのような…。

 

 で、トルティーヤ

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これまた…ナイフを入れると、中からとろんと卵と、ほくっとじゃがいもが出てくる。うわー、おいしそう! で、おいしい! トルティーヤとは揚げた芋を卵でくるむのが大切なのだ、とどこかに書いてあったけど、揚げた芋の油の風味と卵の味が一体となって………うーん、これはおいしい! なんてことない料理なんだろうけど、おいしい。バルセロナのcal pepのトルティーヤとはちょっと違うなあ。あれも食べたときは、「まあ、おいしい…かな」と思ったけど、うーん、ここのほうが全然おいしい。

 

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↑なので、続けてオーダーする。これはエビと貝のオイル煮…アヒージョなのかな、つまり? こんなものがおいしくないわけがない。だしが出まくりですごくおいしい。

 

 結局、「軽く食べる」はずが、がっつり食べてしまった。店内は最後までがらすきだったけれど…。

 お湯の出し方も覚えたし

 ふたりともすっかり満足して、帰宅。気合を入れて風呂を入れてみたら、なんとかお湯が出た………よかった……ほんとに……。どうもお湯を出しすぎるといけないらしい、と学ぶ。つまりカランを全開にせず、半分くらいにしておくと、給湯器もがんばれるようだ。…と学んだけれど、もうここのお風呂に入ることもない。さみしい。

 マリアは朝起きないというので、お別れも今、する。空港まではバスで行くといいわよ、全然安いし、タクシーよりほんの少し時間がかかるだけ、と教えてくれて、バス停の位置を詳しく教わる。マリアが最近お気に入りの中国人アーティストの絵を見せてもらったり、家族の話を聞いたりして、つたない英語で一生懸命ラストトーク。日本に来るなら連絡してね、とも言う。しかしうちには泊まれる場所はないの…とは言えなかったけど…。

 

 マリアが部屋にひっこんでからは、溜まった湯で風呂に入り、明日は早いので荷造も今晩中にしておかなければ、とがたごとやりながら夜がふけた。