独楽ログ〜こまログ〜

50代、女性、日本人、がひとりで毎日楽しくすごす方法を検証、実践、そして記録。

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発酵セラピー

パン作りは心によいらしい

 その昔、エッセイストの岸本葉子さんががんになったとき、その闘病過程のなかで、パン作りを始めたことを書いていた。闘病中だったか、病後だったのかは忘れてしまったが、とにかく気持ちが不安定でしかたなかったとき、夜中に粉をこねると不思議と落ち着いて、パンばかり作っていた…とかいう内容だった。

 なるほどねえ、と深く思って、いまでも覚えている。粉と水を合わせて、べちゃべちゃとまぜて、次第にかたまりになっていき、もちもちっという感触を味わいながら、リズミカルにひたすら台に叩きつける。

 今はすっかり手抜きになってこね作業はホームベーカリーにおまかせだが、あの手ごねパンの一連の作業というのは、確かにランニングやヨガと同じような精神安定効果があると思う。

 まずセロトニンを出すリズミカル運動が入っている。パン生地の感触は泥遊び的な心地よさがあるし、発酵して生地がふくらんだ姿を見ると、はっとするほどうれしいし。そして焼いているときの香りはまちがいなくセラピー。そう、パン作りは心を癒す。

 

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⇧知人に頼まれて作り倒したパンたち。思い通りにできて、いい香りをかぎながらラッピングしているときは、なんともいえない達成感。

 

起きる気=生きる気

 夜中、低温でゆっくり生地を発酵させるオーバーナイトという作り方がある。寝る前にこねて少々発酵させた生地を冷蔵庫に入れて、朝起きたら大きくなっている、というもの。低温だとふくらみ方がゆっくりなので、1,2時間なら、取り出すのが遅れても問題ない。

 これをやると、朝、起きることが楽しみになる。あー眠い…もっかい寝ちゃおかな…と布団にUターンしかけたとき、あ、いや、そうだ、パン発酵させてた!と思うと、目が覚める。急いで冷蔵庫をあけて、うまい具合にふくれていてくれると、おお、いますぐ取り出してベンチタイムにはいらなければ、と、がぜん起きる気になる。朝の空腹と同じ、「布団からさっと出るこつ」である。 

 

 起きる気=生きる気。

 毎日充実して生きている人にはあまりぴんとこないかもしれないけれど、しけた人生を送ってる人間にとっては、起きるのって、とてもしんどい。だから朝、なにか“お楽しみ”を用意しておくのが、大事なのだ。こうしちゃいられない、と布団から飛び出すようなもの。パン作りは、そんなお楽しみのひとつになる。

 発酵してるかな♪というお楽しみと、さらに、そこからベンチ→成型→二次発酵を経て焼成!というお楽しみもある。生地を仕込む前の晩から、明日の朝はロールパンを焼いてソーセージをはさむのだ、つけあわせはピクルス? 野菜もソテーしようかな。ソーセージは1本? いや2本いっちゃうか? ゆで卵も欲しいし。…などとわくわくしていたら、起きるのが待ち遠しくなる!

 はやく明日にならないかな♪

 そういえば子どものときはよく思ったけど、大人になるとなかなか思わないものですよね。