独楽ログ〜こまログ〜

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ポタージュ、本日の正解

玉ねぎは基本で、コンソメは入れたくないけど云々。

ポタージュに作り方についていつも悩んできた。

玉ねぎをみじん切りにして蒸らし炒めして甘みを出し、メイン食材を加えてさっと炒め、ひたひたより少なめの水でとろとろになるまで煮て、ミキサーにかけてペースト状にして、牛乳を加えて温め、調味。

 これがいちばんシンプルな作り方で、でも、やっぱりもっとパンチが欲しいなあ、と思うと顆粒コンソメを加えたりする。加えると、パンチが出るけど、やっぱりちょっと俗っぽい味になって、うーん、やっぱりこうゆうものに頼ったらあかんのか…と後悔したり。

 にんじんやかぼちゃの甘い素材がメインのときは、玉ねぎじゃなくて長ネギにしたり、というアレンジはありつつも、基本はこれだと思っていた。

 …ンがっ!(鉄腕DASH風…)

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 昨日、クリスマスだからとはりきって本を見て料理をしたら、そこに正解が載っていた。谷昇さんの「ビストロ仕立てのスープと煮込み」という本。たくさんのポタージュレシピが載っているのだが、この日はかぶにした。そしたらここでは、水とバターを薄切りにしたかぶをしっかり煮込んで、ペーストにして、(できれば濾して)、あとは牛乳とヨーグルトを加えて、調味するだけ。ただただ、かぶだけ!のレシピであった。

皮もむかず、煮る前のソテーすらしていない。鍋に水とバターとかぶを入れて煮込むだけ! 簡単すぎる。いいのか?

 

 この日はメインのブイヤベース作りで疲れはて、かぶペーストに牛乳とヨーグルトを加える元気がなく、今日はこのままでいいや、と食してみたら、あれ?おいしい。物足りなさなんて皆無。ややえぐみがなくはないけど、でもいつもの半分以下の手間で、同じくらい美味しい! なあんだ。

 …と思って翌日、レシピ通り牛乳とヨーグルトを加えた。ヨーグルトねえ…と思いながら。谷さんは「牛乳とヨーグルトでかぶのくせをやわらげます」と言っている。

 で、食べた。

 !!

 うっまい! 

 本当に、昨日のかぶだけのスープから癖やえぐみがぬけて、見事に垢抜けたおいしさに昇華されている!

 感動。これはすごい。長年、コンソメは入れるべきか否か、玉ねぎなのか長ネギなのか、やはりポロネギなのか?などと悩んでいたのは、完全に無駄だったのだ。

なにもしなくてこんなにおいしいなんて。そして、おいしいオリーブオイルと胡椒をふると、美味しさが倍増する。昔のやりかたで作っていたときは、オイルなんて見た目だけのものだよね?となんのありがたみも感じていなかったのだけど、このかぶスープにたらすと、しみじみとおいしくて、その必要性がくっきりと。もちろん胡椒も、大事な引きたて役だ。どれもちゃんと意味がある。

 

その後、本を熟読してみると、「野菜の繊細なおいしさを水とバターで煮出して、ピュレにして、そのままポタージュに仕立て」るのが、谷さんが作るポタージュの定番なのだとか。「生クリームや牛乳、ブイヨンの風味は抑え気味にして、野菜それぞれのおいしさをストレートに発揮させるようにしてい」と書いてある。

 だから、かぼちゃも+牛乳のみ。カリフラワーは+牛乳+臭みとりのためにコリアンダーを2粒! ブロッコリーにいたっては牛乳すら加えず。逆にコーンには玉ねぎを加え、きのこは+ブイヨン+牛乳…。と、素材によって臨機応変に材料を変えている。なるほど……。なによりも簡単だけど、同時に、なによりも繊細に考えらえたレシピなんである。

 

 谷さんといえば、ご自身のレストランの屋根裏で寝起きしていたシェフだ、たしか。家もあるし家族もいるけれど、仕事に集中するために店のすぐ上で寝ているんだったかと思う。お弟子さんもたくさんいるけど、毎日店のトイレを自らぴかぴかにしていた。便器を抱えるようにして、はいつくばって磨いていた姿、料理チャンネルの「フーディーズTV」のドキュメンタリー番組で拝見したのが忘れられない。そして、油で汚れたダスターかなにかを、ハイターにつけていたお弟子さんを怒鳴りつけていた。「油汚れは塩素じゃ落ちないんだよ!」。何年も前に観た番組だけど、これ、よく覚えている。あー、そうかも、なるほど…と思ったのと、あと、とにかくすごく怖かったので。

きょうの料理」に登場すると、とってもダンディで、にこにこしていて、でもすっごく繊細に、きちんと指導する。教えられることは全部教えますよ、でも必ずこの通りに作ってくださいね、なぜならば、そうしなければいけない理由があるからです。ルールを守ればとびきりの味になりますから。…と、そんな感じ。優しさと厳しさを見事に両立されていて、とにかく独特の存在感。

 この本も、そんなお人柄がそのまま現れていると思う。どんな作業がどんな効果を及ぼして、どんな味になるのか。谷さんは、どういうものをおいしいと感じているのか。そして、どうしたら素人でも極上の味にたどりつけるのか。それらが静かな情熱でひとつひとつ語られる。だから全ての皿が特別に思えて、ようし、ひとつひとつじっくり作ってってやろう、とやる気がわいてくる。きっと一皿作るたびに、今日みたいな発見に出会えるはず。

 

 たかがポタージュなんだが、なんだかすごい発見をした気分だ。大げさなのか? これも年のせい?

 まあいいや。うれしいことは多いほうがいい。発見だって、年とったらそうそうできるものではない。ここはひとつあえて、おおげさに喜んでさわいでみよう。