7月4日(月)
雨
29℃
かぼちゃポタージュとチーズトースト
映画
『シェフ〜三ツ星フードトラックはじめました〜』(2014)
4回目くらい? いや、何度観ても素晴らしい。豪華俳優陣。爆音でかかりまくるラテン&ソウルミュージック。飢餓感を煽るおいそうな料理たち。マイアミ〜ニューオーリンズ〜ロスの明るい景色。SNSに乗り切れていない中年親父の戸惑いを入れ込んで2014年らしさを加えたハッピーな筋立て。すべて完璧だ。ジョン・ファヴローは『アイアンマン』の続編監督の依頼を蹴ってこっちを作ったのだとか。
本筋に関係ないちょい役にスカーレット・ヨハンソン、なぜ? と思うが、シェフの作るパスタをすする顔がたまらない。変人金持ちのロバート・ダウニー・ジュニア、それこそ本筋からそれまくる設定とセリフ、これもすごい。靴カバー→受付嬢の妊娠→靴カバーとカーペット→俺はパイプカットしている→前の奥さんとの関係と、はちゃめちゃな構成で繰り出される彼との会話の素っ頓狂さとくだらなさは、歴史に残るのではないだろうか。ロバート・ダウニーのアドリブのような気がするのだが違うのだろうか。こんなに無意味な会話をシナリオとして書けるものかね?
パートナー役のジョン・レグイザモもいいんだよなあ。出てくるとうれしくなる俳優のひとりで、今回はあちこちにスペイン語をがなりちらすところがなおよい。元奥さん役のソフィア・ベルガラはドラマ『モダン・ファミリー』にも出てた。顔も身体も通りで見かけたらさぞ驚くだろうという規格外の美しさだが、性格の素朴さがにじみ出ていてお得な人である。なのでジョン・ファヴローと結婚してた、という設定が自然にはまる。そうだ、レグイザモ同様気がついたら出世してたボビー・カナヴェイルもちょっとしか出ないけど軽薄でいい味出してるんだよな。あっ、さらに! ダスティン・ホフマンまで! これまた別に彼がやる必要はないであろうちょい役を! しかし例によって達人の上手さで! 嫌味なレストランオーナーを演じている。さらにいえば敵役のフードブロガー役のオリヴァー・プラットも良いしなあ…。キャスティングが本当に絶妙なのだ。そして、この絶妙な人たちがみな、なんだかうれしそうに演じてる、それがまずこの映画の人徳ならぬ映画徳? を表している。
フードトラックを運転しながら男3人でマーヴィン・ゲイの「セクシャル・ヒーリング」を絶唱するところがとくに最高だ。
で、英語の勉強
それで、ちょうどこれを観た翌朝、Quoraで「英語のリスニング力をあげるには? 私は同じ映画をセリフを覚えてしまうくらい、回数にして50回くらい観たら自然と耳ができていました」という回答を観て、この映画でやってみることにした。今って、脚本もググればすぐに出てくるんだよね。本当に便利な世の中だ。シェフはAmazonPrimeで無料で観れるし(いつ有料になるかわからないが)、脚本と画面を画面に出して、一文一文、耳にこびりつくまで、聞いた瞬間意味がすっと出てくるまで繰り返している。
一文一文突き合わせてみると、いかに細かいところを聞き逃していたかがわかる。耳で聞いて、日本語字幕で意味をとっていたときは、英語の7割くらい聞けているつもりでいた。でも実際は半分しか聞けていなかった。日本語字幕のガイドがあるから英語もわかるが、いきなり英語だけ流されると途端に意味がとれなくなるという従来からの問題のほかに、まったく聞き取れない残りの半分は、これは今後一生聞き取れないのでは? というハードルの高さなのである。「こんなこと言ってたのか…」と愕然とする。
例えば、
「おい、グラスが曲がってるぞ!」とシェフがスタッフを叱るところ。
ワイングラスをstemwareと言うのも初めて知ったし、その後の
Don't make me get the f***ing
ruler out. Thank you.
の部分。字幕がなかったのだけど、たぶん、「俺に定規持ってこさせるな(=俺に定規持ってきてまっすぐかどうか確かめろってことかよ?)」という意味なのだろうと思うが、こんなこといきなり言われても無理である。たとえ言葉自体は聞き取れても、意味は永久にわからない気が…。
まあでも、そんなわけでいちいち「こんなこと言ってたのか!」と驚くのは楽しいので、あまり成果は早急に期待せず続けようと思う。成果をあせるとなにをしても愉しくなくなる。「知らなかったフレーズを知る」喜びにだけ集中してみよう。