東京国立博物館 『古代メキシコーマヤ、アステカ、テオティワカン』
(※2023年8月31日追記あり)
古代メキシコの3つの文明にスポットを当てた展覧会。実は遺跡とか古代文明って、そんなに個人的に惹かれるお題ではなかったのだが、来年メキシコ旅行を計画しているのと、なにしろこのポスターが魅力的で行ってみることにした。
…なのだが、もう最近は大事な展覧会はこの本館ではなくて奥の平成館でやるのだよね。平成館はなんの変哲もない建物なのでやや寂しい。
展示空間が素晴らしかった
本来は、3つの文明を網羅するとか、メキシコ・アメリカ以外で初公開となるマヤ文明の「赤の女王」が見れるとか、それぞれの文明の重要マスクや石偶があるなどが本来の見どころである。
が、私はわりと「インテリア素敵」「土偶かわいい」「古代文字美しい」とか、なんというか完全にデザイン目線で楽しんでしまった。展覧会のインテリアとかそんなに考えたことなかったのだが、今回は圧倒された。簡単にいうとすっごく素敵。キーカラーの赤や緑が壁一面を埋めて、まあこれがポスター同様美しいのである。
プラス(いやこっちが本当)、現地のピラミッドや遺跡も迫力のサイズで写真だけど再現して、本来なら相当想像力を使わないと浸れない古代メキシコ文明にあっという間に飛べるような演出がされている。なんで遺跡とかが苦手かというと、個人の物語があんまり浮かんでこないので、感情移入しづらいのだ。ひとり・または複数の作家・歴史上の人物にスポットをあてて掘り下げて…というのがないので、どうしても「ふーん」で終わってしまいがち…。人の話を聞くのが好きなので…。
が、今回のこの空間はそんな鈍い私のような人間も、ちゃんと飛べるように演出されていた。ここにいた人たちは…生活は…とふわっと浮かぶように工夫がされている。
色だけでなく空間の間取り? も絶妙なのだ。これはトーハクの広さだから実現できたのだろう。美術館の大きさってけっこう大事。大きければ大きいほど没入できる。とはいえ、NYのメトロポリタン美術館くらい大きくなるとかえって閉所(広場?)恐怖症が出てしまうのだけど…。あまりにも広すぎて自分がどこにいるのかわからなくなり、出口を見失うのである。
いやあ、でも文字、文様、すべて美しいのだよなあ。
※2023年8月31日追記
この「かわいい」って、大事なことだった。「兵士までかわいいと、戦意高揚とかにならないのでは…?」「民衆を怖がらせる必要がないってこと?」とちらりと思っていたのだが、そのまま放置していた。が、先日坂口恭平が宮台真司とスペースで対談していて(約3時間!!)、古代メキシコ好きの宮台さんによると、「マヤ文明は恐怖で人を支配してないんです。”わーすごい”っていう驚きや喜びで、人々の尊敬を得ていた。だから彫像などがいちいちかわいいんですよ。可愛くて素朴で、決して洗練させない」(大意)ということだそうで、がーん、なるほど。ショック。
ラスト近くでどーん、と登場するのがこのマヤ文明のパレンケ都市の「赤の女王」。94年にパカル王の墓である「碑文の神殿」の隣の神殿から発掘された。なんで「赤」なのかというと、遺体が赤の辰砂(水銀朱)に覆われていたから。(出土したときの写真が本当に真っ赤で驚く。下の公式サイトの「展示構成」→「マヤ 都市国家の攻防」から見れます)。この人はパカル王妃だと推測されている。
なので、グッズも楽しかった