3月11日(土)
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のりピザトースト
映画
『ユー・ピープル〜僕らはこんなに違うけど』(2023)Netflix
ジョナ・ヒル共同脚本、主演のラブコメ。観なくては、という周囲(どこだろう?)の圧力を感じつつ、観る気が起きずにそのままになっていた。差別反対モードが充満した最近の映画・ドラマにちょっと辟易しているので…。差別がいけないことはもちろんなのだが、そればっかり強調されていると正直しんどいです。というか、メッセージが強烈及び明確すぎる物語に、全面降伏して感情移入はできん。自然に、巧みに誘導してもらわないと。
というわけで腰が引けていたが、そもそもジョナ・ヒルが好きなので観た。おもしろかった。まあ、予想通りというか意外なことはほぼなにもなかったが。ヒップホップを愛していてブラックカルチャーにどっぷり浸かってるけど自分も家もばりばりのユダヤ人で…という主人公と周囲の人々とのカルチャーギャップを描き、それを克服して黒人のガールフレンドとなんとか結ばれる、という話である。
アメリカ西海岸に住んでどっぷりとヒップホップカルチャーに浸かっている人のための、身内にだけわかるギャグ満載の映画であった。ドレイクの全アルバムを聴き込んでないと、ロスコーズはソウルフードを提供するレストランだと知ってないと、ジェイ・Zのヒット曲のタイトルが瞬時に出てこないと笑えない。LAの伝説のギャンググループ、クリップスのテーマカラーが青でライバルのブラッズは赤、が常識でないと、公民権運動やユダヤカルチャーについての基礎知識もないと、笑えない。
エディ・マーフィがごりごりのブラック主義(っていうのか?)の頑固オヤジを演じていて、これが最高だった。黒人がシリアスな黒人をおもしろおかしく、ほぼ揶揄するように演じて、それが成立するのがアメリカである。問題は問題としてちゃんと扱いつつ、自分たちを斜めに見て笑う余裕がある。メタ認知が発達してるというか、アメリカのドラマを観てると「あ、ちゃんとわかってるんだなあ」と思うことがよくある。テロとの闘いを描きつつ、どれだけアメリカという国が憎まれているのか、を冷静に把握してる描写があったり。最近は単に「国民の人数が多いからでは?」などと思ったりする。多人種で、大人数だから、あっちで熱く自分たちの正義に燃える人たちがいても、別のところで「いやー、でもなあ?」と疑義を呈する人もいる、みたいな。
主人公が妙にお金持ってて、ラグジュアリーな暮らしをしてるのは、ユダヤ人のステレオタイプを描くためなのだろうか。金融マンでハイクラスな生活をしつつ、副業でブラックカルチャーを語るポッドキャストをやっている。が、”夢を追うために”退職してポッドキャストに専念する…こういう「高い」人たちが熱心にヒップホップを聴くのが今なのか、と、なんか妙に納得というか感心というか…。すごく高いパーカーやスニーカーを、すごーく高そうなブティックで買ってたりするのだ。
特にオチはないです。エディ・マーフィの出のとこだけでも観る価値あり。