独楽ログ〜こまログ〜

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これぞ令和の家庭料理、長谷川あかりさん!

料理ってなんだっけ? と考えさせられる革命的レシピ

 料理家の長谷川あかりさんから目が離せない。そういう日々が続いている。レシピが、なんかこう、新しいのだ。「え、そんな組み合わせ?」「え、そんな手順?」といつもびっくりする。ずっと料理し続けていると、なんとなく「基本の方程式」がわかってきて、あとは誰のレシピでも(自分の含め)、まあそこに則ってやってる、という感じがしていた。有元葉子さんも「一度料理の方程式が体に染み込めば、あとはいくらでもアレンジできる」的なことを言っていて、そうそう、そうだよね、と思っていた。例えば、たれは塩味と酸味、あとは油が基本構成、だとか、素材は余分な水分は抜いたほうが味がしみるとか、肉と野菜を炒めるときは肉の部分に調味するべし、とか…。

なので、レシピを考えることが苦ではないのだが、最近、飽きも来ていた。「もうこれ以上新しいことはできないのか」と……。そこへ、Xで長谷川さんのレシピを目にして、へえー…こういうの、考えたことなかった、と。それが「しそのおにぎり」。

↑どうやってもXの投稿がこうしか貼り付けられない……すみません。↓スクショ貼っときます。(以下同)

ぱりぱり大葉のしそおにぎり

 大葉をごま油で焼く! 考えたことなかった…。と、早速実行したのだが、実はいまいちな出来であった。なぜかというと斬新すぎて、これまでの方程式で、レシピを熟読しないで作るとちょっと違うものができてしまうから。だと思う。だからいつも、作ってみて?ということも多い。実は。このおにぎりの場合は、おにぎり1個につき大葉10枚、というところを完全に見逃していた。1個につき10枚ってだいぶ多い。初回は3,4枚しか使ってなかったと思う。それでいまいち大葉の味がしなかった。ごま油で焼いたあと油を切る、というのもあんまり丁寧にしてなかったような……。でもきちんとレシピ通りに作ると、新しい味に出会えるのである。

 

斬新な作り方かつ、むちゃくちゃシンプルな調味料

 これが彼女のレシピのすごいところである。例えば、唐揚げ。彼女は塩胡椒”だけ”唐揚げや”醤油だけ”唐揚げを推奨している。にんにくも生姜も卵も片栗粉もごま油も入れないのだ。そして「これでもいい」のではなく「こっちのほうがおいしい」ぐらいのスタンスですらある。

これはアレンジして塩麹だけ唐揚げ。そしてひじきと玉ねぎのサラダも彼女のやつ

https://x.com/akari_hasegawa/status/1558051499154231296

 実は最近同じく夢中のイナダシュンスケさんも同じ提案をしている。「醤油だけ唐揚げ」。今までの定番レシピをどんどん削ぎ落として、「これでいい」ではなく「こっちのほうがいい」としている、という点で同じなのだ。イナダさんはそばつゆなんかも、ミキサーにしょうゆやかつおぶしを入れてガーとするだけで完成させたりする。そばつゆがほぼ一瞬でできてしまう! いつも昆布だしをゆっくりひいて、そのあとかつおぶしを入れて煮出して冷まして醤油、みりんをたし…という作業が一瞬のガーに置き換わる。そしてそれはたしかに煮てないぶん、フレッシュなかつおの風味がするのである。革命だと思う。手抜きではなく、美味しさを追求して工程が減る。

 

もっとも衝撃だったのが小松菜塩おひたし

https://x.com/lee_shueisha/status/1932197011102552523


 

加熱野菜は水分を抜くべし、と信じていたので…

 なんかすごい。塩湯に菜っ葉をつけて「お浸し」と名乗るところとかすごすぎる。茹でた菜っ葉は全力で絞って水分抜かないといけない、と言われていたし、自分でもそう思ってそんな投稿したし。「小松菜は茹でるのではなくレンチンして、さらに水分絞ると苦みが出て味が濃くなっておいしい」的なこと書いた。それで小松菜嫌いを克服したので今もやってるけど、この水浸しな小松菜もおいしいので驚いてしまった。そして、彼女の他のレシピ同様、調味料がほぼないので、ここにオリーブオイルかけるだのかつおぶしふるだの、いかようにもアレンジできるのもすごい。「水分抜かないと味がぼける」という思い込みが消えた。

レタスの昆布水マリネ

昆布水のお浸し…って思いつきそうで思いつかない

 これも新しいお浸し。レタスを塩味の昆布水に漬けるだけ……。でもほんのり優しい味がついて箸休めに最高だった。

https://x.com/akari_hasegawa/status/1677909844269907968

 

フライパンで味噌汁を作るという発想

 フライパンで味噌汁を作るという…しかも目玉焼き入りで…ハムとキャベツも入ってて…。「味噌汁ってなんだっけ?」と定義を振り返ってしまうメニューだ。なんでフライパンなのかというと、目玉焼きの白身の端がかりっと焼けていないといやだから…と言っていたのをどこかで読んだ。

 

 

https://x.com/akari_hasegawa/status/1838195031368507795

味噌汁・目玉焼き・フライパン、というそれぞれ遠くいたはずのものたちがひとつに!

なんでも酒蒸しにする

バターとお酒と塩を振って蒸すだけ。それで滋味深いものができる

 味付けがほとんど基本の調味料だけ、いやそれすらも使わない、みたいなレシピが多いところも素晴らしい。世間で重宝されているめんつゆ、だし醤油、豆板醤、チューブにんにく&生姜がほぼ出てこない。だから必然的に強い味、きつい味のメニューがほとんどないのだが、これを世に出すのってすごく勇気がいると思うのだよね…。私にはできない。同居していた姪っ子のためについついわかりやすい味付けをしてしまったように、「これじゃ物足りないかな?」と怯えてしまうのだ…。そこを乗り越え、忖度せずに斬新で、かつ引き算のレシピを「おいしいです!」と出す。なかなか気合がいるよね。

 で、彼女がいつも使うの調味料は塩、酒。次に多いのがしょうゆ、ナンプラー、梅干し、バター。あと「ミニ(あれ、普通のも?)トマトは調味料です!」ともよく叫んでいる。そうなんだよ、そうなのよー、と膝をうつ自分。

 あ、クリームチーズもよく使う…これだけは個人的にちょっと苦手なのだが…。

 仕事と家事でへとへとになっている人たちにいつも優しいレシピを作るのも特徴的で、「疲れた自分をいたわる」文言が多い。そして「おいしいものを作って食べて、自己肯定感をあげる」ともよく言う。優しいのだ。だから工程も、なるべく洗い物が出ない、省けるものはとことん省く、ただ火にかけとくだけ、なども意識している。餃子とか、フライパンをボウル代わりにしてタネを混ぜ、その後ペーパーでふいて焼く、とかいうことをしている。それでいて、手をかけるところはかける。しょうがやにんにくを多用するけど、みじん切りにすることは決して省略しない、とか。「ここだけがんばってください」とよく言ってる。

 

鶏むね肉の生姜コンフィ

 あんまりきれいな写真じゃなくてすみません。しかし重宝している。自家製ジンジャーエールを作って大量に出る生姜煮を消費するのにめちゃくちゃ便利なのだ。元の霊視日からだいぶアレンジしてしまって、生姜煮、塩麹、ごま油、しょうゆほんの少し、紹興酒、みりん(入れないときもある)と肉を袋に入れて、湯煎で20分。

師匠の言う通り、できあがるタレもめちゃおいしくて野菜や豆腐にかけてもいい

https://x.com/akari_hasegawa/status/1791400978106957967

 自分の場合は、生姜みじん切りでなく、生姜の甘煮をペーストにしたものを入れている。その甘さとバランスをとるため、しょうゆをたらす。ご本家より結構濃い味になってるのかな。

ジップロックではなくアイラップで蒸す

 最初の10分弱は袋の口をすこしあけて、紹興酒とみりんのアルコール分を飛ばす。その後、蓋。肉の重さにもよるけど、だいたい20分で出来上がり。直火でなく湯煎蒸しで、しかも塩麹効果でむね肉なのにめちゃしっとり仕上がって驚く。

 

 とにかくいつも使い切れなくて困っていた生姜ペースト、カレーなどに入れてはいたが、いつも入れすぎて台無しにしていた。しかしこの蒸し鶏には、かなり大胆に入れてもおいしくなる。「どんどんペーストが使いたくなる」初めてのメニューかも。

camecon.hatenablog.com

 

潔い三色丼

 

赤、黄、緑。食欲をそそる色合い!

https://x.com/akari_hasegawa/status/1893988531057700869

 潔い料理、と自ら宣言する丼。湯むきしたミニトマト、ゆで卵、茹でた青菜をご飯の上に盛って、ナンプラーをかけるだけ。これ、投稿当初に物議を醸してて、要は「潔い」を「超簡単料理」と思い込んだ人たちが、「ミニトマトは湯むきしなきゃいけないし、ゆで卵茹でて青菜も茹でて絞って…簡単じゃないよ!」と不満に思ったらしいのである。で、師匠は「あ、これは簡単らくちん料理ということではなく、こんなにシンプルな、たださっと茹でたものを載せるだけでも料理と名乗っていいのだ、という意味なんです」みたいなことを言って、改めて「潔い料理」と宣言した次第。このへん、難しいのかも。
きのう何食べた?』にでも似たようなエピソードがあって、むちゃくちゃ忙しいお母さんがご飯をちゃんと作れないことに罪悪感を感じていて、それを、どういう料理だったか忘れたけど、味噌汁に肉と野菜入れたら(ココ想像)もう料理だよ! これ一品で栄養も網羅! これでいいんだよ! と意識改革するっていう…。「え、こんなんでもいいの?」とお母さんは困惑しつつ喜んでいた。それで、お母さんたちのなかには「こんなものは料理とはいえない」という罪悪感があるのか、と初めて知った。自分はいつもほぼ自分(と夫)が食べたいから、という理由だけで作るので、「ちゃんとした料理なのかどうか」ということを考えたことがなかった。

 そういうやむかーし、お母さんになりたての仕事相手の人が、「作る時間もないしなにを作ってよいのやら」と悩んでいて、「ピーマンを魚焼きグリルで焼いて、かつおぶしと醤油かけただけで、もう一品になるよ」と言ったことがあったけど、これも同じだ。「えー……でも…」と、アドバイスしたのが私なのでいまいち信用されずいぶかしがられたのだけど…。彼女は元気だろうか。子どもももう大人だよな…。

 ともかく、どんな工程でも、皿に載っておいしければ料理なのである。

実は戦略家だった

 で、そのよしながさんと長谷川師匠が対談していた!

gendai.media

 シロさんも長谷川さんの料理を作っていた…。これはもう決まりだな、と思った。なにが? 

 まあそれはさておき、以下のインタビューを読んだら、彼女の数々の斬新な戦略はかなり意識的に作られたものだと知った。「どこにもない、長谷川あかりの料理」を確立し、「令和の家庭料理=長谷川あかりと言われるまでになりたい(!)という。したたかだった! かっこいい! こんな料理家インタビュー読んだことない。だいたい「その場その場をがんばっていたらいつのまにか求められていまの地位に」というものが多いから。

lee.hpplus.jp

 いやー、なんかすごい。タフでしたたかで、でも優しい人柄と人生観がそのまま料理にでている。最近読んだインタビュー(どうしても見つけられなかった…)では、「料理本は買っても必ずしも作らなくていい」などとも言っていた。当初、私は「またまた…」と少々鼻白んだ。よく料理本レビューにある「一品も作ってないけど見てるだけで満足です」「写真集として購入」とかいうやつかと思ったのだ。が、発言の意図はそうではなかった。「料理本をただ見て、”自分がなにが食べたいか”を探るのも大事」と言っていたのだ。なるほど……。なるほどすぎる。たしかに「もう何食べたいかわからないよ」というやさぐれたときって、あるから。長谷川さんはどうやって自分をアゲて、大事にして、そして大事なものを見つけるか、ということを日々考えて、実践して、そしてそれを人に伝えている。

 

 そんなわけで、この人の料理と発言は見逃し厳禁である。

 

 次作りたいのはこの「鰹のたたきパスタ」。

https://x.com/akari_hasegawa/status/1937800463740731825

 ちょっとありえない組み合わせである。鰹…バター…梅…おろしにんにく………。レシピを見て容易に味の想像がつかないのが、彼女の料理の特徴である。作った人たちは「ワインに合う!」と言っている。